「3つの原理」 | Jiro's memorandum

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泉治郎の備忘録 読書の感想や備忘録 ※ネタバレ注意
【経歴】 日本株アナリスト、投資銀行、ネットメディア経営企画、教育事業経営、人材アドバイザー、新聞社経営管理、トライアスリート


★★★★★

人類史はカースト(社会階層)、性、年齢の3つの原理によって美しく片付いてしまうという。

信じがたい大胆な予測や仮説が、どんどん読みたくなるストーリー性と妙に納得してしまう論理性によって流れるように進んでいく。信じる信じないは別として、未来予測本というのはこれくらい大胆なほうが読み物として面白いし、発想の幅が広がる一冊になることは間違いないでしょう。


大まかに要約すると、カーストモデルでは「戦士の時代」はローマとスペインが、「商人の時代」はアメリカが、「労働者の時代」は儒教ブロック(日本、韓国、中国)が覇権を握った。現在は「労働者の時代」の頂点にあるが、次の「精神・宗教の時代」が始まりつつあり、この時代の覇権勢力となるのはインドから北アフリカまでの宗教ベルトになる。性モデルでは、陰の時代(女性)、陽の時代(男性)、を経てバランスの取れた両性の時代へ。年齢モデルでは人類は現在19歳くらいでそろそろ年齢的に成熟期を迎える(北欧は既に25歳くらい)。


時代の変遷に伴って、重視されるのは、軍事力→お金→専門知識・技術→精神・宗教へ移る。精神・宗教の時代には「自発的質素」「適正技術」「経済的平等」「仕事の削減」の4つの動きが見られ、人々は地味な消費をし、過度に発達した技術を必要とせず、誰もが"共同経営者"的な立場で、仕事は1週間4時間で問題なし(しかも、遊びと余暇の境界が薄れる)。こうした経済を精神化する4つの動きによって、資本主義は進化し無政府主義に近づく。ユートピアの到来だ。

こんな素晴らしい世界は想像しにくいだろうが、戦士の時代にも資本主義の世界を想像できなかった、と本書は指摘する。

環境保護とか動物愛護とか菜食主義とか、精神・宗教の時代のあらわれだとも。

最終的に人類の歴史は終わり超人類の時代に進むという。超人類を説明するのは「私たちの進化の過程で最も近いとされるチンパンジーが仲間のチンパンジーに人間の生活を説明するようなもの」だと。いずれにしても、かなり遠い未来のことではある。


■カーストモデル

精神・宗教の時代 ・・紀元前4000/2000年まで
戦士の時代 ・・紀元前4000/2000年~17世紀初頭
商人の時代 ・・1650年頃~1975年頃
労働者の時代 ・・1917年頃~2030年頃
精神・宗教の時代2 ・・1979年頃~超人類


■性モデル

陰の時代 ・・紀元前4000/2000年まで
(家父長革命)
陽の時代 ・・紀元前4000/2000年~1966/2030年
(フェミニスト革命)
両性(陰陽)時代 ・・1966/2030年~2150年
(2150年以降超人類)


■年齢モデル

誕生・幼児期・幼年期 ・・紀元前2000年頃まで
10代前半 ・・紀元前2500年~16、17世紀
10代中後期 ・・1650年頃~2010年
成人期 ・・未来
老年期 ・・超人類段階


■感想

確かに"欲"という概念がなくなれば資本主義は崩壊する。ソーシャルメディアでの情報発信やリナックスのようなフリーソフトウェア開発など金銭的対価を求めない活動も精神・宗教の時代(もしくは超人類)の兆しなのかも。インターネットは基本無政府状態だし。 宗教ベルトのインドとかイスラエルとか侮れない。




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