「マイクロソフト ビル・ゲイツ不在の次の10年」 | Jiro's memorandum

Jiro's memorandum

泉治郎の備忘録 読書の感想や備忘録 ※ネタバレ注意
【経歴】 日本株アナリスト、投資銀行、ネットメディア経営企画、教育事業経営、人材アドバイザー、新聞社経営管理、トライアスリート

★★★☆☆

著者は25年間マイクロソフトを追いかけているジャーナリストだけに、結構マニアックな内容。まじめに読むとかなり疲れるのでなめるように読んだ。なお、”グーグル、アップル恐るるに足りず”というコピーは本書の内容にそぐわない。そういう視点では書かれていない。


さて、今後のマイクロソフトであるが、まず収益源のウィンドウズ、オフィスは当分の間安定した利益を稼ぐであろう。特にビジネスドメインは強い。データ管理に慎重な企業のクラウドコンピューティングはすんなり進まないため、現状のビジネスモデルは大きく変わらないのではないか。

ただし、さらなる成長を追求するには、コンシューマ分野、オンラインビジネス、広告事業、などの収益拡大が不可欠。しかしながら、これまで満足な結果を残してきたとは言えず、まだまだ課題が多いことは周知の通り。

ナードのビル・ゲイツとセールスマンのスティーブ・バルマーの2人体制から、ゲイツが抜けてバルマー体制になることは、KFSが技術からマーケティングにシフトしつつあることを考えれば、良い方向ではあるだろう。バルマーはゲイツに気兼ねする必要はなくなった。

バルマーは数年内に会社全体の4分の1が広告収益になると言っている。アクアンティブを60億ドルで買収し、ヤフーも執拗に追いかけた。また、検索広告を超えるべく、広告効果測定システム”エンゲージメント・マッピング”をテスト中(どこで見た広告、どの位置に張り付いていた広告の効果が良かったのかを測定する)。

ネット広告分野の優先順位は高く、今後も目が離せない。しかし、MBAやセールスのプロのような人材だけではネットビジネスを勝ち抜けない。ヤフーのような文化・技術・人材がやはり必要であろう。



この世界はすでにナードのビジネスではなくなっている。ゲイツはパーソナル・コンピュータ革命とインターネット革命の中心にいたが、今の大きなイノベーションは彼の苦手分野ばかりだ。iポッドは美の革命、マイスペースは社交の革命、ユーチューブはエンターテインメントの革命だった。これは、ゲイツのすることではない。テクノロジーはもう彼を必要としていないのだ。(タイム 2007.6.7)

技術によって突き動かされ、移り変わりの速いウェブ中心の世界で、MBAの比重がどんどん上がっているような企業が成功し続けることが保証されているだろうか。一言で答えれば、ノーである。P.347




マイクロソフト ビル・ゲイツ不在の次の10年/メアリー・ジョー フォリー

¥1,764
Amazon.co.jp