「最底辺の10億人」 | Jiro's memorandum

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泉治郎の備忘録 読書の感想や備忘録 ※ネタバレ注意
【経歴】 日本株アナリスト、投資銀行、ネットメディア経営企画、教育事業経営、人材アドバイザー、新聞社経営管理、トライアスリート

★★★★☆

世界は先進国10億人、開発途上国40億人、最底辺の10億人から成っている。世界から7人集まれば、1人はお金持ち、4人は徐々に裕福になっていて、あと1人はどうしようもない貧困生活を送っている。
40年前は先進国10億人と貧困層50億人、つまり中国やインドも数十年前は貧困層に入っていた。最近の格差問題は世界的にも拡大しているわけだ。

底辺の10億人の国が陥っている罠として、紛争の罠、内陸国の罠、天然資源の罠、劣悪なガバナンスの罠、の4つを挙げている。投資の誘致も難しく、負のスパイラルからの脱却には絶望感さえある。

解決の手段として、援助、軍事介入、憲章の公布、貿易政策、などが挙げられていた。しかし、どれも決定力に欠け、手詰まり感を覚えずにはいられない。

諸悪の根源は劣悪なガバナンス(政治の腐敗)であろう。底辺の10億人の国でも官僚は裕福であり、権益にまみれ、効果的にお金が使われず、変化を嫌うため改革者が排除される。そして解決策の本質は優秀な人材を育てる教育ではないかと思う。ずいぶん時間はかかるであろうが。

また、(失敗もありを前提とした)ベンチャーキャピタル的な援助の構想が提示されていた。各国が個別に援助をするより、裕福な国からお金を集めてファンドを組成し、運用機関が投資先の厳選と資金利用のモニタリングをして、運用益を分配するという仕組みができれば、みんなハッピーになれるのだが。これもなかなか難しそうだ。

先進国に生まれてよかったと実感すると同時に、全く改善しない(むしろ悪化している)貧困状態に苦しんでいる人が大勢いると思うと、非常にもどかしい。




最底辺の10億人 最も貧しい国々のために本当になすべきことは何か?/ポール・コリアー

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