「過剰と破壊の経済学」 | Jiro's memorandum

Jiro's memorandum

泉治郎の備忘録 読書の感想や備忘録 ※ネタバレ注意
【経歴】 日本株アナリスト、投資銀行、ネットメディア経営企画、教育事業経営、人材アドバイザー、新聞社経営管理、トライアスリート

★★★★☆


今回の池田信夫さんの本も、明快でわかりやすく勉強になった。

ブログの内容とかぶる部分はあるが。



以下、備忘録


情報の豊かさは、それが消費するものの希少性を意味する。情報が消費するものは、かなり明白である。それは情報を受け取る人の関心を消費するのである。したがって情報の豊かさは関心の希少性を作り出し、それを消費する膨大な情報源に対して関心を効率的に配分する必要性が生じる。(ハーバート・サイモン) P.49


情報が過剰になり、大量の情報を処理するコンピュータが普及すると、このように中央集権的に情報を処理する必要はなくなり、利用者が自分で情報を処理すればよい。(中略)個人の関心を効率的に配分するメカニズムがもっとも重要になったのである。だからユーザーが情報を検索する時間を節約するグーグルが、その中心に位置することは偶然ではない。P.71


グーグルの年間売上高は1兆円を超えた。テレビや新聞と競合するビジネスではなく、むしろこれまで対面で行われてきた営業を効率化するものと考えれば、市場は全世界では100兆円あると推定される。P.73


ウェブ上の情報が自由財になれば、価格がつくのはコンテンツよりも登録された個人情報かもしれない。P.73


           新規性×娯楽性

情報の価値 = ---------------

            自分との距離


身近な人の話題(分子が小さい)なら何時間でもおしゃべりできるし、どんな些細なことでも話題になる。逆に、毎日1万人のアフリカ人がエイズで死んでいるというニュースは、いくら重要でも自分との距離が大きいので、話題にならない。他方、距離が大きくても、9・11のようなテロは新規性が高く、有名な芸能人の話題は娯楽性が高いので、情報として商品価値がある。P.77-78


アマゾンで買い物をしたり、グーグルで検索するたびに、個人情報を彼らに提供し、彼らはそれを利用して検索結果や表示する商品を最適化、(中略)顧客が自発的に情報を提供する仕組みになっているわけだ。P.81


(WSJ無料化について)ニュースを読む読者から金を取るよりも、その個人情報を企業のマーケティングの材料として提供して金を取ったほうが効率がいいのだ。P.83


企業買収は「約束を破るメカニズム」P.135


「IT業界のマーティの法則」による成功する条件
1
.要素技術はありふれたもので、サービスもすでにあるが、うまくいっていない
2.独立系の企業がオーナーの思い込みで開発し、いきなり商用化する
3.一企業の事業なので、政府は関心を持たない
4.最初はほとんど話題にならないので市場を独占し、事実上の標準となる
P.160


イノベーションは一種の芸術なので、平均値には意味がない。1000人の凡庸な作曲家より、1人のモーツァルトのほうがはるかに価値がある。(中略)モーツァルトが出てくるためには、1000人の作曲家が試行錯誤し、失敗する自由が必要。
P.161


インターネットは、近代社会の生み出した主権国家を溶解し、資本主義をグローバルに分散させ、人はサイバースペースで結ばれるようになる。その先にある絶対的な孤独に、私たちは耐えられるのだろうか。あるいは新しいコミュニティは建設可能なのだろうか。P.204




過剰と破壊の経済学 「ムーアの法則」で何が変わるのか? (アスキー新書 42) (アスキー新書 42)/池田 信夫
¥760
Amazon.co.jp