22日、五年ぶりにアメリカから帰ってきた Sくんと、 | すずめがチュン

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アケノさんを取りまく風景をおとどけしてます。











2014/7/10 撮影

会った。


 わざわざ、迎えにきてくれたH美さんのクルマに


病院から帰ったその足で乗りこむ。



 助手席に座ったS君の背中は、去年心臓の手術を


  受けた人のようにも見えない。


「よかったね、元気で」


  「うん、よかったよ!」と言いながら、その後は


 食事の間も、帰りのクルマの中でもSくん一人が喋った。



もう十年ばかり、構想を温めていた念願の本が やっと出版されたと


 手にずっしりと重い本を手渡して、


本の話し、手術のこと、そして同級生のことと


 話は尽きない。



魚料理がメインのお皿を、次々と平らげ、目を輝かせ


  時々、話が佳境にはいると、


 坐り直し、正座したSくんの身体は高く、大きくなり


  それを、私たちは見上げる形になる。



20代で単身アメリカに渡り、今はアメリカ人となって


 今なお、好きな事に邁進し続けている彼の


  エネルギーは、半端じゃない。



ふたり、圧倒されてると


 正座し、広げた両手をテーブルに置いたS君が


  先生みたいな口調で、


「ところで、アケノの絵本どうなったの?」と聞く。


  「絵本?」と言いながら・・・・


  そうだった、絵本画きたいんだ!と言ったのを思い出した。


   5年前だ・・・・


「なんだ・・・・やってないのか、」


  ますます、先生口調だ。


 そんな、もっと面白い事やってるんで、忘れちゃいましたよ、と


 ・・・・・これは、心の中で呟いて、


  黙って、ニヤニヤしてると・・・・・すぐに


   また、S君の話に戻っていった。



帰り際、 紙袋を差し出される、


 お土産と、五年前に出版したS君の 第一作!


  その改訂版が入っていた。



 そして、もう一度ハグしようと彼が言う、


  ちょっと待って、と言い 持ってた手荷物を下に置き


 大げさな身振りで、私が手を広げると


  クルマの中から、H美さんが クスクス笑っていた。



すずめがチュン


  表紙絵は、私が画いたもの、五年前に


当時、画きながら、不思議な感覚がしていていたことを、


 またありありと 思いだした。



特徴的な強い眼差しとは、対照的な


 形のいい、品のいい鼻筋や、優しげな小さな口元を


 なぞっていくうちに、


  小さい頃の、繊細そうなかわいらしい、ケネディ少年が


現れてきたことを、



画き終えて、ふと目を上げると


 そこには、いつものケネディ大統領がいて・・・・


    彼が振り向いた、はるか向こうから、足長の青年が


 ひとり、 サクサクと近づいて来る、


 ロバートだった!


 大統領は、立ち上がるとこちらを見て


じゃ!と軽く手を上げ・・・同時にロバートも同じ仕草をして


  二人並んで、歩きはじめ・・・・帰って行った。


ずっと話しながら、遠ざかっていく二人の姿は


  ほんとに仲の良い、兄弟そのものだったことを・・・・



また思いだしていると、


 あの頃 気づかなかった答えに、今は辿りついてる事が


   わかり、嬉しかった。



あの時の不思議な 想像は、


  じつは、私が勝手に創り上げた、妄想でもなんでもなく


「交流」だったのだと。



 自分たちは、目の前に居ない人や存在とも、


心に思い浮かべ、話しかけることで


 その瞬間、


    確実に交流しているんだということ、


 それが今は、分かっている。


 


 



  


        つづく