なんか用?と、
言うつもりで、下をのぞくと、
「 ふくは内、おには外、」と、
ひとりで、豆まきをやっていた、
寒いので、
玄関の戸は、はんぶんだけ開けて、
身体はさんで、
落花生を、ポイ、ポイと庭に放っている、
ずいぶん 無精な・・・・・
あれじゃ、猫も逃げないな、
バタン! ドアが閉まった、
あれ、もう終わり?
オニ、いなかったようだ、
「 やらなくていいの?、自分は」
と、ダレかの声がする、
「 いいよ、どうして?」
「 いや 去年までは、あんなに拘ってたからさ、」
「 やってたね、型通りに」
「 それ以上だよ、今年やらなかったけど、
・・・・・気にならない?」
「 全然!」
「 どうして?」
「 鬼、いないから、」
「 いないの・・・」
「 うんいなくなった、」
「良かったね! 消えてしまったんだ、…消したの?」
「 消したのかな・・・・」
「 そういうコトじゃない、ナニやったの?」
「 と言われても・・・あんまり長い間、色々やってきて」
「 どんなこと、例えば」
「 鬼だから、逃げるでしょ、それから隠れる、」
「 それから」
「 忘れる、一生懸命」
「で、 鬼がいなくなった、」
「まさか・・・ますます、自分の力ではどうしようもない
というのが、わかっただけ」
「 そんなにスゴい鬼、」
「そう・・・・万事休す、逃げられない というのもわかった」
「 絶対に?」
「絶体に」
「でもいなくなった、一体 どうやったの、」
「ふと考えた、
鬼ではない と思えたら、解決するのになって・・・」
「 ・・・・でも、鬼だよ、思えないでしょ」
「そう、だから、最初はむつかしくてね」
「 鬼だもんね、」
「 それでも、ではないと、」
「思ったんだ・・・」
「そう、そして ある日・・・
思い切って、戸を開けてみたら 」
「 ・・・・・・」
「 そこにいたのは、鬼ではなかったの!」
「 ほぉ~」
「 さぁ、ではなかったのかも、最初から」
「 え、勝手に思い込んでた、というわけ?」
「 そうかも、」
「 うん十年も・・・・」
「 そうだったね」
「 毎日苦しんでたよ、あれなんだったんだろ」
「 ご苦労様!」
「 でも、終わった、よかったよ」
「 あとは、福はうち・・・だね」
「 いえ、いえ」
福は、今あるもので、じゅうぶんですよ!
つづく