「 ね、そう思うでしょ!」
「 ・・・・・うん、腹がへるのが、早いな」
早くも、脱線してる モアイさんの返事、
「 腹がへるって・・・?」
「 朝、おきた時、ペコペコなんだよ」
「 ふぅ~ん、」
「 昔は・・・こんなことなかったなぁ・・とにかく
腹へって、目が覚めるって感じだ、」
「 それはね、」
早く 寝すぎるからですよ、
9時に寝て、7時に起きる、なか10時間、
これじゃ、お腹すきます、
ダレだって、
「 夜中、トイレにおきてるじゃない、そん時
なんか、食べればいいでしょ、」
「 だろ、だから、モチつこうか!」
「 ・・・・・モチ!」
「 うん、モチ・・明日、」
「あしたって、明日?」
なんで モチで、なんで明日なのよ、と
聞かないうちに、
どこかに行ってしまった、モアイさんは、
すぐに、
もち米、10キロ袋をかかえて戻ってきた、
「 それ、いつ買ってきたの?」
「 きょう買ってきた、
クルマの中に置いてた、」
ああ、そうですか、
・・・という事はですよ、
私が 何の話 しても、
・・・・モチつこう、と言うつもりでいたわけだ、
道理でね、
いつもは、話しかけても、
聞いてるのか、聞いてないのか、
珍しく、返事したと思ったら
とまぁ、こういう事で
ま~た、モチを搗くことに、
「 手伝いなさいよ!、ちゃんと・・・・暮れに搗いた時は
大変だったんだから、一人で! 」
「はいはい、」
“ 二回返事は、信用するな ” てね、
念のため
カレンダーをチェック、
ゴルフの予定は?・・・入ってないな、
どうやら
ほんとに手伝う気でいるようだ、
そんなに食べたいのか、モチ!
ひょっこり遊びに来た、
ケイさんの手も借りて、
翌日、一日かかって搗きあげた、
餡子いりの、芋モチ、30個、
桜えびとの入った、のしモチ2本、
ふつうの、のしモチ12本、
時間はかかるけど、昔ほど大変でないのは確か、
餅つき機をしまいながら、
これひとつに、杵や臼やセイロまで収まってることに
すごいよね!と
改めて感動、
こんな機械、昔の人に見せたら、なんて言うだろうね、
と、思わず つぶやくと
「 昔の人って?」と、ダレかが 答えた、
「 私が小さい頃、ほら、杵や臼つかって 餅つきしてた頃の
人たち、」
「 50年くらい前の?」
「 そう、」
「 そりゃ~、びっくりするだろうね」
「 50年で・・・・、すごいよね!、
考えてみたら、今 普通に使ってるものは、
そのころ、なかったものばかり!」
「 そう!」
「 もう、当たり前すぎて、ありがたいなんて思いも
しないけど・・・・」
「 しないの?」
「 いや、こんな風に改めて考えると、
有難いなぁ~、って思うけど、」
「 いつもは、忘れてるわけだ、」
「 そう、だって、あまりにもそんなモノばかりで・・・
マヒしてるのかな・・」
「 というより、すぐ慣れるんだね、人って」
「 ありがたい!って、感覚に?」
「 そう!、便利さにも、不自由にも 」
「不自由にも?」
「 うん、」
「 不自由なのは・・、どうかな?・・・・気もちまで
不幸になりそうな気がするけど 」
「 不幸ね、」
「 だって、今ふつうに使ってるものが、使えなくなる、
と考えたら・・・」
「 50年前に、戻るわけだ、」
「 そう・・・ほら、思っただけでも憂鬱になってくる、」
「 で、不幸になるんだ、」
「 うん、多分ね」
「 じゃ、50年前のみんなも、不幸だった、てこと?、」
「 ・・・・・・」
「 自分は、どうだった?」
「いや、そんな事はなかった、ふつうに・・・」
「 楽しい事も、嬉しいこともあった、とか?」
「まぁね、 そこそこに、・・・・」
「他の人達は、どう?」
「 大体、おんなじような ものだと思う、」
でもねぇ、今の方が絶対幸せだと思ってるよ、みんな、」
「 どれくらい?」
「 どれくらいって・・・、比べようがないくらい、
便利だから、今は、」
「 便利ね・・・・」
「 そう、」
「どれくらいだと思う、その便利さ、
あの頃と比べたら、
・・・・10倍、100倍?」
「 もっとかもしれない!」
「 じゃ、一番ひかえめに、十倍として、
・・・・今、十倍、幸せになってる?
あの頃と、比べてさ、」
「 ・・・・・・・」
「100倍だったらどお?、100倍幸せになった?」
「 それほどには・・・・」
「 ね、あんまり・・・・」
「 変わってない・・・・」
「 そうでしょ!・・・何故だと思う?」
「…慣れ?」
「 それもあるけど、もっと大事なもの」
「 なんだろ?」
「物指、これを持ってるんだよ、みんな」
「モノサシって、あの物指?」
「 そう、これが優れもんでね、正確無比かつ、
ブレがない、
但し、ひとりひとり、目盛がちがうから、
他人は測れないし、
他人の、物差しも使えないけど、」
「 自分だけのモノ、ってわけ、」
「そうそう、でね、この物指のいちば~ん、スゴイとこは、」
「 なんですか?」
「 本質を、計ってくれるということ、」
「 というと?」
「 余計なモノや、ことに煩わされることなく、本質を計れる」
「余計なモノって 、例えば?」
「 ほら、さっきまで話してた、便利さとか、豊かさとか、
欲とかに、ゴマかされないで、ということ」
「 少し、わかってきたような気がする、」
「どんなことが、」
「 その物指を、使ってるってこと、無意識にみんな、」
「 そのとおり、」
「不自由だった昔の人も、便利なはずの今の人も」
「無意識に使ってる」
「 おお、すごいじゃない!、人間て」
「 うん、すごいんだよ、人間て」
「・・・・時々、物差しのこと忘れるけどね、」
「 忘れないように、すればいいよ、」
「 どうやって?」
「 比べなきゃ、いいんだよ、」
「 ひとと?」
「 それも、全部、なにもかも、」
そうか、比べない・・・・ね、
一日置いて、
翌日の夕方、
近くにいる父と母にも持って行った、
いつも見上げる 明星さんのすぐ横に、
月がある、細い 下弦の月、
あんまり近くにあるので、
ウィンクしてるように見えた、
そう言えば、ダレかのブログで読んだけど、
明星さんとお月さんは、やがて
結婚するらしい、
なんてね。
つづく