なんかある?」
今日も、唐突に はじまる、妹の電話、
「え・・、ないけ・・・」ど、と言い終わらぬ内に、
「 夜さ、霧島に行かない?、面白~いひとたちが、
集まるんだって、でね、シャンソンも聴けるらしいよ、
ぁ、食事つき、3000円、五時に迎えに行くけど、
そっちに・・・、どお?」
毎度、話にムダがない、
聞きたいことは、全部言ってくれてる、
まぁ、良しとしよう・・・・
あと、足りないのは、
始めの、あいさつだけだ、
「 いいよ!、行っても」
面白~い人たち?って、・・・・あんな風な、
そう、そんな人たち!
妹の言い方には、
そんな匂いがするのだが・・・・、
こんな時の石橋は、たたかない、
すぐ渡る、鼻歌で、
日曜日の 朝、
ひどい頭痛で、目が覚めた、
カーテン越しに 見える空は、
明るくない・・・・曇ってる、
どおりで、
寒いはずだと、エアコンの温度をあげ、
コチコチの、首や肩をほぐしながら、
しばらく飲まずにいた、頭痛薬を、今日は、
飲むことに決める、
夕方からのお楽しみに備えて、
今晩のオカズを、焼き魚にしたのは正解だった、
昨夜の内に、タレに漬けておいた 切り身のブリは、
でかける30分前に、焼くだけだし、
あとは、味噌汁、これもしじみ汁だから、簡単、
それで足りなかったら、
冷蔵庫から、お節の残りの、煮豆や、きんぴらごぼうでも
なんでも出して、食べてちょ~だ~い、
わるいわね~、今晩、ア・タ・シ・おでかけだからさ~、
と、ひとり言に 節つけて、
唄いながら、
五時前には、ちゃちゃっと全部すませて、
家を出た、
約束した場所に向かっていると、
ちょうど、こちらに向かってくる、
妹のクルマが見えた、
どちらも、待つのも、待たせるのもイヤ、
という性分で、
こんな時は都合がいい、
イライラしないで済む、
「 ちょっと、早く着いちゃうかもね」
「 うん、その時は待ってればいいよ」
いつもは、薄着の妹も、着こんでいる、
「 霧島は、さむいと思ってさ、」
「私も、ほら、オーバー引っ張り出して着てきた」
ポケットには、カイロまで入れて、、
更にバッグには、予備をもう一個、と
これは念のため、玄関を出てから、また引き返して
持ってきた、
出発して、30分後、
予想通り、予定より、
20分も早く着いてしまった、
「 時間まだだから、待つ?、電話してもいいけど、
忙しかったら、ワルいしね、」
「 うん、そうしよう」
20分が、長くても、短かくても、
どっちにしても、久しぶりだもの、
さっきの話の、続きをすればいい、
まだ終わってないんだから
カイロのお蔭で、身体もぬくぬくだしね、
話し込んでる内に、20分はあっという間に過ぎて、
S君が、窓をコンコンと叩くまで気づかなかった、
目的の別荘は、そこからほんの 二三分、
何度か 枝分かれした道を、
「 たしか、右に、右に、二回入ったよね、お姉ちゃん覚えといて」
「 わかった!」
帰るときのために、忘れないようにする、
辿りついた別荘には、
五六台のクルマが、もう横付けされていて、
玄関には、クツが溢れていた、思ってたより多い?
Sくんのあとからついてゆく、
寒々とした、玄関とはうって変って、
暖かい空気と、美味しそうな匂いが充満してる
部屋に入った、
薪ストーブと、大型の石油ストーブ二台、
それぞれ、上には、大なべがのっかっていて、
20人ほどの人達が、
それを取り囲んでいる、どう見ても、
アットホームな感じの、ホームパーティだ、
もしかして、違った!
あら!・・・妹もそんな顔で、あたりを見回すと、
固まってしまった、
来ちゃったもんは、仕方ないよ、
そんな風に、妹の背中をおして、勧められた席につく、
ひょっとしたら、オモシロ~イの面白いは、
楽し~い、の意味だったのかも・・・・しれない、
いかにも、料理好きという感じの夫婦が、厨房に居て、
そこから、次々と出される料理は、
どれも、予想以上に 美味しかった!
突然、マイクの音が響いて 振り向くと、
気づかない間に、
窓際に、キーボードが セットされていて、
その前を、少しだけ開けて、
皆、おもいおもいの場所に、移動し始めると、
厨房にこもりっきりだったご夫婦も、
グラスを持って、出てきて、
やがて、ミニコンサートは、始まりました、
とても、76歳だとは思えない軽やかな演奏、
自分もハミングしながら弾かれる、6曲は、
よく知られた映画音楽、
シャルウイダンス、第三の男、ロミオとジュリエット、ひまわり、
など、いいねぇ~!・・・
続いて、この吉村先生の、お弟子さんだという、
宮己さんの唄って下さったシャンソンは、6曲、
なぜ、私に愛を語らせない、小雨ふる道、黒いワシなど、
題名が、すでに、シャンソン!
他に、あと二曲、
恋心と、ピアフの愛の賛歌を、
その、愛の賛歌の歌詞が、知ってるものと違って、
あまりにも、ステキだったので、
お尋ねしたところ、
原曲に沿って訳された、なかにし礼さんの歌詞、
正に、ピアフですね、
空が落ちてきても 大地が破れても
私にとっては どうでもいいの
朝がめぐるたびに あなたの愛があり
震える私がいれば それでいいの
あなたの為なら この黒髪も 金に染めます
あなたの為なら 夜空の月も 盗んでみせる
あなたの為なら 友を裏切り 祖国も捨てる
人が私を笑おうと平気 なんでもできる
別れの日が来たり あなたが死んだ時
私は迷わず 命を絶つわ
青い空に抱かれ 神の意志のままに
永遠にふたりは 愛し合って生きる
いいですよねぇ~・・・
いつも唄ってる、もうひとつの方が・・・・・
おままごとの愛に、思えてくるくらいの迫力ですね、
大拍手の内に、コンサートは終わりました、
で、その晩はそれで終わり、
何もなかったの?というと、
・・・・・ありましたよ、
つづく