Intro, A1(0:00-0:44)

日本には「狐や狸に化かされた」という表現がある。これは深い霧や森などの中で、目標を見失ったまま進むことで、円形に彷徨い歩く(Ring-Wandering)ことだそうだ。この曲のモチーフといえるハープシコードのフレーズも、G♯m7→F♯→Eadd9→F♯と、出口を探すように彷徨い歩いている。こういう時には、視界が晴れるまで待つのが良いそうだが、エコーの深くかかったパーカッションが、鬼火のように浮かんでは消えて、森の奥へと僕を誘う。

 

B1(0:45-1:23)

サビのメロディが早くも姿をあらわす。というよりもMy Dearの構成はいたってシンプルで、AメロとBメロしかない。諦めの言葉を吐露する、hydeとしては珍しいくらい低い声でささやくAメロ。それでも捨てきれない想いを、伸びやかにうたうBメロ。この対照的な2つのパートだけで、とてもドラマティックに展開していく。

バンドサウンドはなりを潜め、ストリングスをバックにhydeの声だけが響く。モノクロの回想シーンはここで終わり、さまざまな葛藤がうず巻く現在へと、カットバック。

 

※「クロスカッティング」と「カットバック」の違い

場面Aと場面Bを並列的に繋ぐ→クロスカッティング

場面Aと場面Bを時間の連続性を持って繋ぐ→カットバック

My Dear の場合は、歌詞の時制から、ABメロが後者の技法で繋がれているように感じる。蛇足だがkenの曲からはクロスカッティングの印象を受けることが多い。

 

A2(1:24-2:16)

ドラムとベースが加わる。ズン・タン・ズズタンと8ビートのドラム。だが裏拍にゴーストノートが多用されていて「こんなに急ぎ足で歩いていたっけ?」と気づく。♪=112という絶妙なテンポが、シーンによって、まるで異なる速度に感じられるようにアレンジされている(それを味わうのが個人的にオススメな聞き方)。

 

B2(2:17-2:55)

さらにストリングスと、16分のピコピコしたシンセサイザー、ピアノが加わる。ベースも8分から16分の混じったフレーズへと変わった。その結果、B1では「今はまだ意味がわからなくても、覚えていてね」と子どもに語りかけるように聞こえた歌詞が、実はとても切羽詰まって託されたような言葉だったと、まるで違って聞こえるB2だ。

 

C(2:56-3:27)

ブリッジ。L'Arc-en-Ciel はこういうところの盛り上げ方が素晴らしい!虹の「少年は人の影に〜」からとか。finaleの「途切れそうな夢紡ぎの糸を切った・・・」のとこなんて危うく失禁しかけた。My Dearでもここで涙腺が決壊したのは言うまでもない。

閑話休題、ここを境に曲は後半へと移っていく。明らかに前半と変わるのは

・コーラスが加わる

・4つ打ちのバスドラムが加わる

 

B3(3:28-4:42)

さらに16分で動き回るシンセベースまで参戦してきた。さきほどのバスドラムと相まって、夜道でなにか得体の知れないものに追われているような気分になる。何かをさがしているうちに、それが自分の意志で求めていたものなのか、自分以外のものに突き動かされていただけなのか、わからなくなってしまった。冒頭の「さぁ愛を探して見てごらん」という意地悪な問いかけは、このRing-Wanderingを予見していたようだ。

 

Outro(4:43-)

 

 

yukihiro先生に「このアルバムのキモ」と言わしめた名曲だが、kenちゃんはどこにいってしまったのか、ギターの存在が感じられない。でも安心してください、L'7ではずっと息を止めて演奏してるんじゃないかと思うほど、緊張感ありまくりでキーボードを弾いていた。CD音源にはないギターパートに移った瞬間、水を得た魚のようになったkenちゃんを僕は忘れない。コーラスもセクシーで最高だ。このライブを経て、My Dearは完成したと思っている。