2025/04/16 北日本新聞朝刊 

 戦後80年の今年、戦中戦後を富山の人々がどう生き、何を感じていたのかを後世に伝えようと、市民グループ「富山を原点に戦争を考える会」(向井嘉之代表)が20日、新刊「敗戦八〇年 富山の記憶―地方から戦争を問いつづける」(能登印刷出版部)を出版する。15日に富山市内で出版発表会が開かれ、向井代表(81)=同市豊島町=は「日本がなぜ敗戦に追い込まれたのかを紹介したい」と話した。 (青山郁子)
 第2次世界大戦で、県内では約2万8千人が戦死し、1945年8月の富山大空襲では2700人以上が犠牲になった。向井さんは、民間放送記者時代に小矢部市出身の中国残留孤児を長期取材した経験があり、今も交流が続いている。「今は戦争を知っている人、語れる人がいるぎりぎりの時。この時を逃してはいけない」と実感し、14歳で「少年農兵隊」として満州に渡り、今年2月に95歳で亡くなった南砺市井波の島田直正さんを昨年取材した。同書ではソ連軍侵攻後、使役作業をしながらパンの耳をかじって生き延びたという島田さんの体験などから、日本の軍部の非道を追及した。

 他に、郷土史家や研究者ら5人に声をかけ、執筆してもらった。郷土史家の須山盛彰さん(富山市)が戦時下の庶民の日常について書いたほか、ジャーナリズム研究家、大島俊夫さん(黒部市)は「富山における戦争とメディア」、歌人の碓田のぼるさん(千葉県我孫子市)は富山の反戦歌人、渡辺順三(1894~1972年)を紹介した。

 富山大空襲で母親が犠牲となった編集者、奥田史郎さん(東京都府中市)は、大空襲の詳細と当時の体験を記し、元射水市中央図書館長、萩野恭一さん(射水市)は旧満州(現中国東北部)から引き揚げた亡母の壮絶な体験を、残された日記などから追想した。

 会見で向井さんは「終戦や戦後ではなく、『敗戦』という言葉を残すためにこの本を書いた。ウクライナやガザで戦火が続く中、戦争とは何かを共に考えてほしい」と呼びかけるとともに、戦争の風化防止を訴えた。

 同書はA5判、250ページ。1980円。購入希望者は同会の金澤敏子さん方へ電話かファクス0765(72)2565で。