2024/09/26 信濃毎日新聞朝刊 
 「戦争しないよう努力することが必要」

 飯田下伊那地域の中国帰国者でつくる飯伊中国帰国者連絡会と飯田日中友好協会は共同で、中国帰国者のために飯田市川路の飯田霊地公園に建立した共同墓地の清掃作業を彼岸に合わせて毎年続けている。今年は21日に帰国者やその家族ら12人が参加して行った。清掃後は「和平」と刻まれた墓石に手を合わせ、平和への思いを新たにした。

 協会によると、家も土地も手放して旧満州(中国東北部)に渡った元開拓団員は帰国しても墓がなく、経済的な理由で墓を作るのが難しい人も多かった。協会と連絡会が寄付を募り、1998年に共同墓地を建立。帰国者の高齢化を受け、両団体が共同で清掃を始めて6年目になる。

 松川町在住で8月に94歳で亡くなった帰国者の夫、岩本年雄さんが新たに墓地に入り、現在は計6人が眠る。息子の妻、岩本淑子さん(58)=松川町=によると、年雄さんは中国残留孤児だった妻らと60代で来日。当初は日本の生活に慣れず苦労も多かったが、晩年には「日本に来て良かった」と話していたという。一家で墓を建てるまでの一時的な納骨だが、「ここがあって良かった」と話した。

 自身も残留孤児となり中国人養父母に育てられ、76年に帰国した飯田市上郷黒田の多田清司さん(85)は、連絡会の会長を務め、今も市立病院で医療通訳を務めるなど長年、帰国者の生活を支えている。清掃を終えて墓に線香を手向けると「戦争をしないよう、平和のために努力することが必要だ」と語った。