2024/06/04 信濃毎日新聞朝刊

 阿智村の満蒙(まんもう)開拓平和記念館は、2013年の開館から10年間の歩みを記念誌にまとめた。開拓団時代を経験した語り部による講演会や企画展、旧満州(中国東北部)への調査旅行などの取り組みを記録。今後の記念館の姿として、人や資料、情報が行き交うプラットフォームでありたい―と展望している。

 施設と同名の一般社団法人が運営し、13年4月に開館。23年3月末までに県内外から21万8千人余が訪れた。語り部43人による定期講演や団体向け講話は516回開き、延べ1万3千人超が聞いた。来館者の中には満州で肉親を失った経験を思い出して涙を浮かべる人もいるといい、記念誌は「いろいろな人が過去と向き合い、抱えてきた荷を下ろしていかれた」とした。

 記念誌は、記念館を支えるボランティアグループ「ピースLabo.(ラボ)」の協力で作った。開館まで足かけ8年の準備期間についてもまとめた。同館事務局長の三沢亜紀さん(57)は「最晩年を迎えた(開拓団時代の)体験者と歩んだとても貴重な10年だった。これが礎となり、歴史を伝えていく力になる」と振り返った。A4判、97ページ。同館で閲覧できる。