2024/05/30 毎日新聞/東京

 新宿区の平和祈念展示資料館で、大正末期から戦時中にかけて発行された写真帳「満蒙印画輯(しゅう)」の掲載作品を紹介する企画展が開かれている。7月15日まで。

 写真は、中国東北部の旧満州、その他中国各地やモンゴルの景観、名所、街並み、人々の日常生活など。「働く人々」「習俗」「移動の手段」「街並・名所旧跡」のテーマ別に100点を展示している。いずれもガラス乾板で撮られ、モノクロながら鮮明だ。それぞれに当時の解説文も添えられている。

 写真帳は、中国・大連に拠点を置いた亜東印画協会が1924年から44年まで定期的に発行し、毎月約7000人の会員に配布された。これを原版に絵はがきやブロマイドが製作され、新聞や雑誌に無断で掲載されるなど全国に出回った。

 写真や説明はありのままの現地の様子を紹介する内容だが、広く旧満州への関心を高める役割を果たしたとみられている。萩谷茂之学芸員は「海外の状況を知ることが難しかった時代だった。日本人にとって、これで初めて旧満州の姿がすり込まれたのではないか」と指摘する。

 発行されたのは、国内から旧満州に多くの人が渡った時期と重なる。当時の国策だった「満蒙開拓」で全国から約27万人が入植し、長野県から最多の約3万3000人、次いで山形県から約1万7000人が送り出された。

 萩谷学芸員は「人々の表情まで鮮明に見える。会場で細部まで見て、当時の日本人がこれらを初めて見た時の気持ちを想像してみてほしい」と話した。【原奈摘】
■写真説明 旧満州などの風景や生活ぶりを伝える写真=新宿区西新宿2で