2023/04/18 信濃毎日新聞朝刊 

 豊丘村出身で東京理科大大学院修士課程1年の大橋遼太郎さん(23)=東京=が、小学校時代に3年間、中国・北京で過ごした体験を本「七歳の僕の留学体験記」にまとめた。文化や風習の違い、歴史問題に直面しながらも、深い友情を育んだ日々を回想。国籍や文化を超えた交流について考えるきっかけになることを願っている。

 大橋さんの祖父は戦時中に満蒙開拓団として旧満州(中国東北部)へ渡り、1978(昭和53)年に帰国。母は8歳まで中国で育ち、「生まれ育った中国をもう一度知ろう」と2007年、当時7歳だった息子の大橋さんを連れて北京の大学院へ留学した。本は現地の生活を追体験するように執筆。日常のちょっとした驚きや日中の違いなどのエピソードも交えて記した。

 現地の学校の授業では、戦時中に旧日本軍から村人を守った少年をたたえる物語「小英雄」を読んだ。日本人である自分の存在がいたたまれず、チャイムが鳴った後も動けなかった大橋さんに、友人たちはいつも通り「遊ぼう」と声をかけた。大橋さんは「僕は、僕が生まれる前にあった戦争が憎い。でも、憎い戦争をなかったことにすることもできない。じゃあ、どうすればいい? 僕は何をすべきなんだろう?」と本に記述。この問いは今も続いている。

 執筆の契機となったのは、新型コロナウイルスの感染拡大。大学の授業がオンラインになり、友達と会うのもままならない憂鬱(ゆううつ)な生活を支えたのが、中国での生き生きとした日々の記憶だった。

 中国では少数民族の友人も多く「一人一人が異なることが当たり前」。勉強熱心な友人たちに囲まれた中国生活を通じて「チャレンジすることに積極的になれた」といい、大学では留学生が困らないようにと自ら話しかけている。

 大橋さんは「見知らぬ土地で異国の言葉や人々に囲まれて暮らす子どもたちにとって、この本が指針になったらいい」と話す。四六判160ページ。税別1600円。日本僑報社(東京)の出版で、インターネットで購入できる。