2018/05/19 京都新聞朝刊
守山市勝部1丁目の中国語講師で翻訳家劉穎(りゅうえい)さん(46)が、同市の児童文学作家今関信子さんの児童書「小犬の裁判はじめます」(童心社)の中国語訳を中国の出版社から発刊した。3年前に翻訳原稿を手に北京で出版社を探し、交渉を続けて念願をかなえた。「日本人の心のぬくもりが書かれている。中国でも伝えたい」と話す。
野洲市出身の日本人祖母を持つ劉さんは1986年、14歳のときに日本政府の残留孤児呼び寄せで、一家で来日。現在、日中の文化交流活動に取り組んでいる。佛教大大学院に在籍し翻訳力を磨くとともに魯迅の研究に力を入れている。
2人は10年前、守山市広報の市民リポーターを務めていた劉さんが、今関さんを取材したことで出会った。事前の下調べで「小犬の裁判はじめます」を読んで感動し、今関さんに翻訳を申し出た。
「小犬の裁判はじめます」は87年出版の今関さんの代表作。大津市の児童養護施設「湘南学園」で実際にあったエピソードが基になっている。子どもたちが施設で飼っている犬を大人らとどう取り扱うかについて話し合っていく物語。子どもや大人の思いやりの心などが描き出される。経済大国になった中国を思い、劉さんは「中国にも心が寂しい子どもがいっぱいいる。本当に大切なことは何かを伝えたい」と翻訳の動機を語った。
翻訳作業に協力した今関さんは初めて外国語に翻訳された自分の作品に「大人と子どもが熱くぶつかって問題解決する物語が再び日の目を見られてうれしい」と喜ぶ。
翻訳本は県内22の図書館に寄贈し、収益の一部は中国の恵まれない子どもたちに寄付する。(糸井則次)
【写真説明】
「小犬の裁判はじめます」の翻訳本を手にする劉さん(左)と作者の今関さん=守山市金森町