2010/10/23 大阪読売新聞

 ドキュメンタリー映画「嗚呼(ああ) 満蒙開拓団」(2008年、製作・自由工房)の上映会が22日、益田市の県芸術文化センター「グラントワ」で開かれた。同市の「大頂子(だいてんず)東仙道開拓団の証(あかし)を守る会」が主催。戦争や戦後の苦難を知る世代の人らが、客席を埋め、映像とともに語られる証言に聴き入った。
 満蒙開拓団は終戦前後の混乱や寒さと飢えで8万人以上が犠牲となり、残留孤児の悲劇も生んだ。大頂子東仙道開拓団は計138人が入植、うち65人が帰国することなく亡くなった。
 映画では、逃避行の中、足手まといとなる我が子を、泣く泣く殺さざるを得なかった親たちの証言などに、観客らは食い入るように画面を見つめた。
 会場前では、同会が集めた当時の様子、旧入植地の現在の風景を写真パネルで紹介。大頂子東仙道開拓団の最年少団員だった佐々木義三さん(80)(益田市美都町)は「畑の畝が1キロも続いていた。思い出を語れる相手はほとんどいない。その景色を懐かしくも思う」。同会代表の松永正さん(82)は「我々生存者が犠牲者に報いられることは、恒久平和を願い、実現することだ」と話した。

 写真=満蒙開拓団の歴史を伝える写真パネルに見入る来場者(県芸術文化センター「グラントワ」で)