2010/05/17 西日本新聞

 「月のしらべと陽のひびき」 伝来の箏を題材に/裕・遊・悠 芸能トピックス
 スタッフすべて地元在住・出身者
 音だけで番組を作り上げるラジオと、総合芸術で見せる舞台劇。福岡市のFMラジオ局、エフエム福岡が異例の組み合わせに挑む。過去に好評を博したラジオドラマを舞台化して今月上演するのだ。作・演出、出演者、音楽、演奏などすべて福岡在住・出身者で固め、「福岡のエンターテインメントの質の高さをアピールしたい」と意気込んでいる。
 舞台化するのは、箏(こと)(琴)を主題にした「月のしらべと陽(ひ)のひびき」。古代中国を舞台に、楽士の男と舞踊家の娘との悲恋を描く。中国から日本へ箏が伝来した後、福岡の僧が近代箏曲を創始したという歴史も背景に、過去と現在、日本と中国のつながりを軸にしている。地元ピアニストの岩崎大輔が音楽を手掛け、オリジナル曲がふんだんに使われている。ラジオドラマは2007年に放送後、日本民間放送連盟主催の日本放送文化大賞ラジオ部門で準グランプリを受賞した。
 「単なる舞台化ではなく、ラジオではできないことも取り入れて、広い世界観を体感してほしい」と作・演出を担当する阿久根知昭さんは話す。主人公は人気DJのBUTCH(永渕幸利)が演じる。相手役を務める舞踊家の渡辺美穂は内モンゴル出身。中国人の父と中国残留孤児の母の間に生まれ、「両親も喜んでいる。スケールの大きな舞台で舞踊を見せられるのがうれしい」とほほ笑む。
 昨年は別の作品でギャラクシー賞ラジオ部門大賞を受賞するなど、ラジオドラマ制作には定評のある同局。新たな挑戦は地元演劇界にも刺激を与えそうだ。
 「月のしらべと陽のひびき」は29日午後6時、30日午後1時と同5時、31日午後6時半の計4公演。福岡市早良区百道のももちパレスで。入場料3500円(当日4000円)。ピクニック=092(715)0374。