2009/05/30 毎日新聞/長野
◇「平和の尊さ感じて」--満蒙開拓を語りつぐ会
昭和初期の恐慌による経済の行き詰まりから国策で行われた満蒙開拓。飯田・下伊那の住民らでつくる「満蒙開拓を語りつぐ会」(伊坪俊雄代表)は02年から聞き取り調査を行い、結果を「下伊那のなかの満州 聞き書き報告集」(1~6集)として出版してきた。「地域の人間が聞き取り、地域の歴史を明らかにして地域の言葉で残す」ことを掲げた活動の記録だ。
約30万人が旧満州(現中国東北部)に開拓民として移り住んだ満蒙開拓。県内から3万4000人が送り出され、戦闘や飢えなどで1万4000人が死亡したとされ、多くの残留孤児の悲劇が生み出された。飯田・下伊那地域からは約8400人の開拓民が参加した。
恐慌で貧困に苦しんで開拓へと進んだ背景や、夢や希望を抱いて故郷を後にして始めた旧満州での生活。敗戦直後の逃避行の中ですべてを失い、家族の死や離散も経験するなど、それぞれの半生が記録されている。
中には、開拓団が集団自決し、生存者として1人だけ帰郷した人の証言もあり、計41人の貴重な記録だ。「ライフヒストリーを語ってもらう中に、当時の生の生活を象徴する『光る言葉』がちりばめられている」と伊坪代表は話す。
7年前に会社員、主婦、元教師、開拓団員の家族らも加わって語りつぐ会を結成した。25人の会員が2人1組で元開拓団員を訪ね、録音、テープ起こし、編集に携わった。体験者を人づてに探し、1人あたり1回数時間にも及ぶ聞き取りを数回繰り返す手法で調査を重ねた。
記録集は1年に1冊ペースで刊行。1冊につき5~7人を取り上げている。伊坪代表は「若い世代の人にこそ、おじいちゃん、おばあちゃんたちの世代がどのような体験をしてきたか知って、平和の尊さを感じてほしい」と思いを語った。
問い合わせは飯田市歴史研究所0265・53・4670(書店では扱っていない)。1~6集は各500円。【仲村隆】
写真説明 第6集まで出版された「下伊那のなかの満州 聞き書き報告集」
写真説明 記録集「下伊那のなかの満州」を手にする「満蒙開拓を語りつぐ会」の伊坪代表(右)