三年生の皆さん、卒業おめでとう。そして、最後まで本当によく頑張りました。グラウンドに響く快音と、泥にまみれて白球を追う君たちの姿。監督として、また教頭として、私はこの光景を当たり前の日常として眺めてきました。しかし、先日訪れた鹿児島県の知覧(ちらん)という地で、その日常がいかに脆く、尊いものであるかを思い知り、溢れる涙を止めることができませんでした。

 かつて知覧には、当時の国の誤った主義方針によって、爆弾を積んだ飛行機で敵の船に体当たりを強いた「特攻隊」の基地がありました。祈念館に並ぶ遺影は、今の君たちと変わらぬ十七、十八歳の若者ばかりです。彼らは国の犠牲となり、未来を奪われた悲しい被害者でした。家族への遺書には「お母さん、ありがとうございました」「先に逝く不幸をお許しください」と、震えるような文字で、精いっぱいの愛と別れが綴られていました。

一通の遺書の前で、私は立ち尽くしました。そこには明日、死を強制された若者が、最後まで野球を愛していた面影が滲んでいました。君たちと同じようにバットを握るはずだった手が、爆弾を積んだ操縦桿を握らざるを得なかった無念。甲子園を夢見たであろう少年たちが、国の過ちによって二度と帰らぬ空へ消えていったのです。知覧の空を見上げるたびに嗚咽を堪えられなかったあの涙は、尊い命を使い捨てた歴史への憤りと、奪われた彼らの青春への深い悲しみでした。

 現在、世界ではロシアや中東で戦火が止まず、東アジアでも緊張が続いています。国の主義で個人の命が犠牲になる悲劇は、決して過去のことではありません。だからこそ、いかなる理由があろうとも、命が手段として扱われてはならない。君たちが今、全力でバットを振れる自由は、先人たちが心から欲し、願っても手にできなかったものです。

 これから新たな門出を迎える君たちへ、わが野球部のスローガンを贈ります。

壁にぶつかった時は、知覧の若者たちが奪われた「明日」を、今自分は生きているのだと思い出してください。

「今に生きる」

今がチャンスだ 今が最幸 今の中に過去の全てが入っている

今の中に未来の全てが入っている 今を変えれば過去の全てが変わる

今を変えれば未来の全てが変わる 今を変えれば周りの全てが変わる

今に生きれば生命が活動する 今に生きれば魂が輝く

今こそチャンスだ 自己を変えるチャンスは 今しかない
今 今 今の中にすべてがある

今、決意せよ 今、行動せよ 今、変われ

ありがとう ありがとう 今に感謝

三年間、ありがとう。君たちの未来が輝かしいものあることを心から願っています。