野球をしていると、「やる気が出ない」「気持ちが乗らない」と感じることがあります。人はよく、「やる気が出たらやろう」と考えがちですが、実はそれは逆です。やる気というものは、待っていて生まれるものではありません。行動を始めて初めて生まれてくるものなのです。

 脳の働きに関する有名な実験があります。ラットの脳のある部分を刺激すると、気持ちよさを感じることが分かりました。その刺激を得るためにラットはレバーを何度も押し続けます。中には餌を食べることよりも、そのレバーを押すことを優先するほどでした。この実験から分かることは、脳は「快い」と感じる行動を繰り返そうとするということです。人間の脳でも同じことが起きます。何かを始めて少しでも達成感や充実感を感じると、脳の中ではドーパミンという物質が分泌されます。この働きによって、「もう一度やろう」「もっと続けよう」という気持ちが生まれてきます。つまり、やる気は最初からあるものではなく、行動することによって生まれてくるのです。

 野球の練習でも同じです。最初から完璧なやる気を持って練習に入れる人はほとんどいません。しかし、まずグラウンドに立つ。一本バットを振る。ボールを一球捕る。その小さな行動を積み重ねていくうちに、気持ちはだんだん前向きになっていきます。

 大切なのは、大きなことをいきなりやろうとするのではなく、小さな行動を始めることです。ランニングを一本多く走る。もう一球ノックを受ける。もう一度バットを振る。その小さな一歩が、やる気を生み出します。高校野球は苦しいことの連続です。暑い日も寒い日も、同じ練習を繰り返します。しかし、その一つ一つの行動が自分の脳を変え、やる気を生み、成長につながっていきます。

 だからこそ、「やる気が出ないからやらない」のではなく、「まずやる」。その一歩を踏み出すことができる人こそが、最後に大きく成長するのです。