アメリカ合衆国大統領選挙の予備選挙 | この世は舞台、人生は登場

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予備選挙

 2016年の夏は、オリンピックで世界中が盛り上がっていることでしょう。とくに日本のようなメダル獲得数の少ない国や、メダル獲得数が国威発揚に役立つと信じ込んでいる国の盛り上がりは並大抵ではないでしょう。しかしアメリカ合衆国のように腐るほどメダルを取る国には、他国ほど盛り上がりに欠けるようです。私を含めて多くの日本人は、自国の有力選手が出場する競技が真夜中に放送されても徹夜してテレビ観戦します。アメリカではオリンピックが真夜中に放送されることがないそうで、昼間に録画が流される程度だということです。そのオリンピック熱の無さを、アメリカにはアメリカン・フットボールやバスケットボールや大リーグベースボールなど他に人気のあるスポーツは多いからだ、と説明する人もいます。私は、オリンピックイヤーとちょうど重なる重大行事があるからだと考えています。それはアメリカ大統領選挙です。リオ・オリンピックの行われる来年(2016年)の8月といえば、アメリカでは共和党全国大会も民主党全国大会も終わって、両陣営の新しい大統領候補が決定しています。まさしく、選挙戦に突入いたばかりの最も盛り上がっている時期なのです。アメリカ人の多くは、オリンピックどころの騒ぎではなくなっていることでしょう。
 次期大統領が決まる総選挙が、来年の11月8日に行われ、普通であれば当日か翌日には誰かが勝利宣言を出します。その翌年(2017年)の1月20日の大統領就任式に臨むことになります。今日から就任式までの約1年間の大統領選出のプロセスを見てみましょう。


身内同士の戦い

 予備選挙とは、民主党と共和党がそれぞれの党の大統領候補を一人に絞り込む作業のことです。次回の予備選挙の場合は、民主党がヒラリー・クリントンとバーニー・サンダースを有力候補として5、6名が名乗りを上げています。共和党はドナルド・トランプ、ベン・カーソン、カーリー・フィオリーナ、ジェフ・ブッシュなど10名ほどが立候補しています。そして両党とも、年明け早々から、それぞれの党の方式に従って、各州ごとに6月まで順次、党員によって選挙が行われます。そして、両党とも全国大会で候補者を正式に指名することになります。その後、大統領候補者が副大統領候補を指名するという順序になります。

2016年の全国大会の開催日程

民主党は7月25日から4日間

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民主党全国大会の模様

共和党は7月18日から4日間

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共和党全国大会の模様

 両党とも7月の下旬に全国大会を行いますが、実際のところ、決着はもっと早く着いているでしょう。来年(2016年)の3月1日には予備選挙を行う州が集中するようです。すなわち「スーパー・チューズデー」と呼ばれる火曜日です。普通は、「スーパー・チューズデー」の選挙で劣勢を悟った候補者は、その日のうちに選挙戦から撤退を公式表明します。過去の撤退表明で印象深いものは、2004年の予備選挙の時です。その選挙は、二期目のため予備選なしに候補者になった共和党ブッシュ(George W. Bush)の挑戦者選びのための民主党予備選でした。あの時の民主党予備選は、10人ほどの立候補者で、1月13日のワシントンDCでの投票を皮切りに開始されました。選挙戦が始まったばかりの1月15日には元上院議員キャロル・ブラウンが、1月20日には下院議員リチャード・ゲッパートが早々に撤退表明をしました。そして、劣勢になって選挙戦を戦うことを諦めた候補者が、次から次へと撤退していきました。
 最後には、ケリー(John Forbes Kerry、現国務長官)とエドワーズ(John Edwards)との一騎打ちになり、3月2日のスーパー・チューズデーをむかえました。その日の選挙で、ケリーが優位を確かなものにしました。すると早々に、その翌日の3月3日にエドワーズが撤退表明をしました。


ケリーの不可思議な人選

ジョン・マケイン

 勝利したケリーは、副大統領候補の選任作業に入りましたが、ブッシュと戦うための人選が進みませんでした。何を血迷ったのか、敵対する共和党のマケイン(John McCain)上院議員に要請しました。それはあり得ない選択でした。当然、マケインは拒絶しました。ライバル政党からの誘いを受けるなど前例がありません。しかし本心は、次の2008年大統領選挙での共和党候補になることを目指していたからだと言われていました。実際に、オバマ現大統領が初当選を果たした時の共和党候補になっています。


ブッシュとケリー

 マケインに拒絶されたケリーは、予備選を戦ったライバルを副大統領候補にはしないとう慣例を破り、エドワーズを指名して本選に臨みました。2004年の大統領選挙は、イラク戦争への反戦運動が、全世界的に盛り上がっていました。それが、ブッシュに対して不利に働いて、ケリーが優位であろうと、日本でも盛り上がっていました。しかし、(日本の)下馬評を覆して、結果はブッシュの圧勝でした。

 党の全国大会の指名を待たずに、実際には候補者は決定されています。事実上の決定から党大会での正式指名まで4ヶ月以上も経過することがあります。当然、その間も、決定された候補者は、本選に向けて選挙活動を開始しています。


民主党と共和党の一騎打ちの戦い

 党大会で指名された正・副大統領候補者は11月8日の大統領選挙日まで、選挙活動を繰り広げます。アメリカは、いわゆる「二大政党制」ですから、民主党と共和党の一騎打ちになります。当然、多数の小政党もこの大統領選に参加します。しかし、勝利を得るなどという気持は微塵もありません。アメリカの選挙には国庫補助が出まして、その条件は、前回の大統領選の一般投票で、全体の25%以上の得票を獲得した政党だけに約2千万ドル(約24億円)が補助されます。小政党でも前回の大統領選の一般投票で5%以上の得票を獲得すれば、規定に照らした補助金を受けることができます。しかし現実的には、5%などという数字は夢のまた夢です。前回(2012年)の選挙では、当選したオバマが51.1%(約6591万票)、落選したロムニーが47.2%(6093万票)の得票率でしたので、二大政党だけで98.3%を独占しました。残り1.7%、およそ223万票ほどを他の党が奪い合うという形になりました。それゆえに5%の得票率に当たる645万票を取るなどということは不可能なので、選挙戦に小政党の入り込む余地などはありません。

1992年選挙

 近年では、父ブッシュにクリントンが勝利した1992年の大統領選挙で、二大政党制を終わらせる人物として期待されたヘンリー・ロス・ペローが立候補しました。それでも18.9%(1974万票)の得票率に留まりました。おそらく小政党および無所属の候補が獲得した歴代の最高得票率だと思われます。
 二大政党が圧倒的に有利な選挙体制にもかかわらず、アメリカの大統領選挙には多くの小政党が立候補者を擁立します。同時進行のオリンピックよりも盛り上がる大統領選挙の精神は「参加することに意義がある」ということでしょうか。恐らく今回(2016年)の選挙にも、候補者を擁立することが確実視される政党を紹介しておきましょう。
 大統領選挙は州単位で行われますので、立候補資格は各州によって異なります。多くの州は、立候補には州の有権者の所定数の推薦署名を必要としています。そのために、合衆国全州で立候補者を擁立する能力を持っている政党は、通常は民主党と共和党の二大政党しかありません。2012年の選挙においては、二大政党以外で、計算上、大統領を選出する可能性があった政党は次の四党でした。


リバタリアン党(Libertarian Party)
リバタリアンロゴ

 前回(2012年)の選挙では、1,275,971票(0.99%)を獲得して、小政党の中で最も多い得票数でした。


アメリカ緑の党(Green Party)
グリーン党ロゴ

 名称が表しているように環境問題を主眼にした党です。世界の多くの国に設立されています。前回の選挙の得票数は、小政党では二番目の得票数の469,628票(0.36%)でした。


立憲党(Constitution Party
憲法党ロゴ

 名称の通り、合衆国憲法を始め、独立宣言や聖書も遵守する右派の党です。不法移民、安楽死、人工中絶、同性婚などには反対していますが、国による死刑執行は認めています。前回選挙の得票数は、122,388票(0.09%)でした。


公正党(Justice Party)
公正党ロゴ

 「全国民のための経済、環境および社会正義」を掲げて、大統領選挙の前年2011年11月に設立された新しい政党です。前回の得票数は43,018票(0.03%)でした。


その他の極小政党

プロヒビション党(Prohibition Party

衰退を辿っている政党ですが、合衆国の現存政党では、「民主党」設立の1828年、「共和党」設立の1854年に次いで、三番目に古い1869年に設立された政党です。「プロヒビション(禁止)」とは、元々「酒類」を禁止することで、この党は「禁酒法」を制定することをスローガンにした政党でした。現在では、酒類に加え、薬物の禁止、ギャンブル禁止、同性婚禁止、ポルノ禁止など幅広く「禁止」をうたっています。ここ数回の大統領選挙では極めて低調で、前回の選挙でも519票しか得票することができませんでしたが、伝統ある政党の誇りなのか、今回もJames Hedgesを大統領候補として参戦する予定です。

アメリカ第三ポジション党(The American Third Position Party)
現在は、「アメリカ自由党(The American Freedom Party)」に党名変更

客観主義党(Objectivist Party

社会自由党(Party of Socialism and Liberation)

社会主義労働者党(Socialist Workers Party)

社会主義平等党(Socialist Equality Party))



その他に、マスコミにも取り上げられないような無名の政党の候補者や無所属の候補者や、立候補に推薦署名を必要としない州から立候補して、選挙活動をしない候補者もいます。その数を全部合わせると100名を越えるかも知れません。夏季オリンピックでアメリカが獲得する金・銀・銅メダルの合計数ほどの候補者が出て盛り上がる行事が、アメリカ合衆国大統領選挙戦なのです。
 
 私たち日本人には、民主党と共和党の情報しか入っていません。それでも、国会の中の代議員だけで決まる我が国の総理大臣選挙とは違って、国を挙げて行うアメリカの大統領選挙は国民行事ですから面白いものです。先ず、年明け早々に開始される二大政党の予備選挙に注目してみましょう。アメリカ大統領選挙をテーマにした私のブログを読んでくだされば、専門家の目で大統領選挙を楽しむことができるはずです。

 いよいよ次回は本選挙に入ります。これもまた一筋縄ではいきません。どの選挙のことを本選挙と呼んで良いのか分からないことになります。