白鞘修理(その2)の続きです。

 

 

鞘を割ってみると、色々なことが解ってきます。

例えば、「あ~前の持ち主はだいぶ雑に扱っていたな」とか、「製作時期は幕末だな」とか、絶対にわからない様なことまで分かってしまうものです。

いずれにしろ白鞘だからといってぞんざいに扱うことは、どういうかたちにしろ結果的に持ち主に返ってきますのでお気をつけください!

 

というわけで、分解した白鞘の中をさらって、破損の激しいところは入念に補修を施します。

写真のように、外部からの唯一の入り口である鯉口周辺は、どの白鞘もかなり酷い状態です。

 

あとは、ソクイで元通りに復元し、砥草で表面を磨いて終了です!

若干時代のあがる白鞘の修復です。

 

古い白鞘は経年劣化していることから、修復時の破損に気をつけなければなりません。

そのため、通常よりも長時間、水につけて分解します。

 

 

やっと剥がれてくれました!中側にポツポツと見えるのが錆びです。

刀身から出た錆びが、鞘の内部に落ちて木材に染み込んでいます。

この白鞘を使い続けると、鞘から刀身に錆が移ることがあるので、早めの除去が必要です。

着工から数年かけて製作した蝋鞘が完成しました!



本当に長い時間がかかりましたが、何とか形になりました。
得意の工作分野であれば、同じ時間で柄前1ダースは作れたと思います(笑)

仕様は、差表裏にそれぞれ笄・小柄の櫃を設けて、返り角を配し、黒蝋色に仕上げました。
この様式の鞘は、最も格式の高い打刀拵として知られています。



この手の工作は、通常の鞘(櫃なし、返り角なし)製作の数倍時間がかかるばかりか、技術的にも大変難しいことから、各職方(鞘師、塗師)が分業で一つの拵えに作り上げます。
鞘の工作は、私にとって専門外(本来の専門は、拵えの部分修復と柄前製作、刀身研磨)なため、鞘師さんや塗師さんに相談したいところでしたが外注代だけでご予算を遥かに超えてしまうため、終始一人でおこなわざるをえませんでした。とはいえ、長くお付き合い頂いているお客様に訪れた幸いへのお祝いの気持ちを込めて製作できたので、「気持ちが届くといいなあ~」と願いながら工作させて頂くことができた分、得した気持ちでいっぱいです(笑)

0から一人で作り上げた両櫃物の返り角を供えた鞘は、体力的に二度と着手出来ないと思いますので、自分の中でも大きな達成感を感じています!
寂れ往くニッチな伝統工芸に従事する職人たちの悩みは、何と言っても「材料の枯渇」と「道具の確保」です。

材料が揃わなければ仕事もままならず、良い木材や皮革は需要と供給のバランスで年々高騰し、悪循環に陥っています。刀剣外装の工作では、様々な専門道具が必要ですが、追い討ちをかけるように後継者不足で作り手が激減しているため、特殊工具を手に入れることすら難しいというのが現状です。

そのため、工具は基本的に自作するのが常識です。
鋼材を鍛造して、刃物類は火造りしなければなりません。



この仕事では、「道具が必要だなあ~」と思いたったらトンテンカンと鍛冶仕事をやらなければならないわけですが、初めの頃は試行錯誤の繰り返しで、余計に鍛造をするものだから炭素が抜けてナマクラ工具になったり、焼入れで刃切れが生じたり、研ぐたびに刃先がポロポロと駆け出したりしました。
一から冶金学を勉強し直し、友人の刀匠らに教えてもらったりしながら、何とかそれらしい刃物(専門家からは笑われるような完成度ですが・・・)が自作できるようになりました。



お天道様が高いうちから、火をおこしてコツコツと鉄を加工しますが、この時期は唯でさえ暑い最中です。
火傷防止の厚着など、夢中に作業を続けるうちに一枚また一枚と脱いでいき、最後にはTシャツ一枚になって工作にのめり込んでいることも多々あります。

形が出来上がる頃には、全身真っ黒け。火傷が絶えません(笑)。

写真の指に小さな穴がありますが、これは経験者なら誰もが持っている火造りによる火傷です。
真っ赤に熱した鋼材をハンマーで叩くと、不純物や酸化皮膜などのスラッグが四方に飛び散ります。このスラッグを専門用語でスケールというそうですが、数百度という高温の状態で襲い掛かってきます。
あまりにも熱い物体が身体に接触すると、もはや熱いとは感じずむしろ冷たいと感じるそうですが、夢中になっているためか、工作中は火傷の事など気付きもしません。
しかし、高温のスケールが身体に取り付くと、上皮組織に取り付いて剥がれず、その間も肉を焼き続けるので、結果クレーターのようなポッコリとした穴が開いてしまうのです。

ちかいうちに、ナイフの鍛造+外装製作+研ぎの一連の体験工作が出来ればなあ~と思っていますが、一番の悩みの種は火傷や怪我の責任問題だと思います。
日本刀の鞘塗りの工程です。



炭研ぎといって、塗装した表面を粒子の粗い炭で慣らしていきます(胴摺り)。

最終工程では、表面の傷がなくなって鏡面になるまで、油磨きをおこないます。
本職の塗師さんは、私のような雑な仕事はしません!紹介した以外にも、数多くの工程を経て本来の蝋色鞘が完成していますので、あしからず。

当工房にて漆塗りを実施するのは、お客さまのご予算の都合がある場合に限ります。
そのため、外国製の漆を用いて、工程上テレピン油を加えています(臭いが国産漆と圧倒的に違うため邪道と思いますが伝統工芸においてしぼれるところは、材料費しかありません。一般の方には、硬化後は見分けがつかないと思います)。

外装一式製作のため、数年お預りしているお刀ですが何とか仕上がりが見えてきました。
あと一頑張りです!
娘が欲しがっていた、人形用の杵と臼を作りました!

ちょっとした玩具を買ってやれない懐事情の不甲斐無さを、埋め合わせるつもりで拵えてみました。



杵は破損した目釘から、臼は拵え下地に用いた廃材から、それぞれ風合の良いものを選びました。

結果的に、プラスチック製の玩具よりも味わいのある杵と臼になった気がします。
ちなみに、杵は修復時に取り替えた重要刀剣指定の古備前に用いられていた目釘、臼は十年以上乾燥させた北国のホウの木ですので、贅沢といえば贅沢かもしれません(笑)。
日本刀というと、無加工の木材で作られた外装をイメージする方が多いと思います。
それは、白鞘とか休め鞘などと呼ばれ、刀身を保管するための道具です。
けっして拵えではありませんので、武器としての性能はありません!

拵え下地同様にホウノ木を用いて作られていますが、中でも柔らかい木材を選んで製作します。
理由は、刀身に塗った防錆用の丁子油が染み込んで白鞘に浸透し、外側から蒸発するためと言われています。油は、長時間経過すると酸化してしまい、逆に刀身を錆びさせてしまう原因になることから、絶えず古い油を取り除く必要があるので、このような刀身を保管するための道具が考案されました。



古い白鞘は、大概つなぎ目の接着が剥がれて写真のようにはずれている事が多いです。
接着面には、ソクイというご飯粒を練って作ったノリに、虫除け用にタバコの灰を練り込んだ接着剤が用いられます。ちなみに、ソクイは朝一番に炊き上がったご飯を用いること!と言われていますが、その理由は定かではありません。
一般の方が想像する以上に、澱粉糊の類いには強力な接着力があるばかりか何度でも剥がしたり付け直すことができることも特徴の一つです。

この白鞘は一度分解し、内部を確認してから再度組み上げる予定です。
今日は、朝から鎌倉へ。



試験的なツアーのガイドをお願いされたため、鶴岡八幡宮へ行ってきました!



照りつける日差しの中、週末ということもあってか?わりと多くの方が八幡さまに足を運んでいます。



告知が必要最低限であったため、今回は撮影メインのプレツアーとなりました。

事前に鎌倉ガイドのエキスパートの方から、アドバイスや助言を頂いていたので大変心強く、スムーズなガイドができました。
ご要望があれば、今後もご案内したいと思います。
本日は、近隣大学の学生さんと、都内で刀剣が展示されている博物館巡りに行きました。



まずはこちら!代々木にある刀剣博物館で現在開催中の特別展。



ここへ来ると、まず手を合わせてしまうのが無名刀匠之碑。
無名刀職之碑だと、なお良いのですが・・・。



決まって不運な赤羽刀に思いを馳せます。



そして、いざ館内へ!

今回は、石黒派の刀装具を中心に、名品の数々を鑑賞できました。
刀装具が最も開花した、化政文化華やかなりし頃から幕末にかけての刀剣も展示されていました。
よく練られた特別展示だなあ~とつくづく感心しました。



次は、大塚駅からこんな可愛らしい路面電車に乗って早稲田へ。



ここから歩いて、永青文庫へ。

アニメ?ゲーム?のポスターに衝撃を受け、すっかり写真を取れませんでした。
事前に友人から感想を聞いていたとおり、之定周辺に人だかりが・・・・。
全く見る人がいない国宝行平の美しさに衝撃をうけました。



都内を歩き回り、すっかり抜け殻のようになって家路につきましたとさ。
明日は、鶴岡八幡宮にてゲリラ的ツアーガイドを頼まれたので、行ってきます!
ご興味のある方は、どうぞご参加ください。
昨晩は暑気払いにて、予てより交流のある武道家兼刀剣愛好家の皆さんと川崎駅周辺の居酒屋に集まりました。(刀剣の鑑定も使用法もバランス良く学ばれている方というのは、少数派ですので大変貴重な存在です。)

急なご案内にも関わらず皆さんにお集まり頂き、近況やら・武道のこと・刀剣のこと・鉄の歴史などなど、毎回飽きることなく繰り返される話題ながらも尽きることのない話題で大いに盛り上がりました!

今回は、鉄のフォーラム(当方不参加なれど、ご参加された方より資料を拝見)にて発表された、江川英龍と大慶直胤の書状の中に見られる直胤の作刀方法の解説を皆さんで読み解いたり、先月北鎌倉で開催した「紫陽花と鉄のツアー」にて、新たに知ったことや感じたことを紹介させて頂きました。

また、幸せ真っ只中の友人の幸せお裾分けトークや、武道の各流派の考え方など、何度聞いても面白い内容満載で、時間がたつのも忘れて楽しい一日を過ごしました。

こういう機会を頂く度に、「同じ趣味を持つ友人というのは、本当にいいものだなあ~」とつくづく思います。



帰りの川崎駅プラットホームからの一枚