寂れ往くニッチな伝統工芸に従事する職人たちの悩みは、何と言っても「材料の枯渇」と「道具の確保」です。
材料が揃わなければ仕事もままならず、良い木材や皮革は需要と供給のバランスで年々高騰し、悪循環に陥っています。刀剣外装の工作では、様々な専門道具が必要ですが、追い討ちをかけるように後継者不足で作り手が激減しているため、特殊工具を手に入れることすら難しいというのが現状です。
そのため、工具は基本的に自作するのが常識です。
鋼材を鍛造して、刃物類は火造りしなければなりません。
この仕事では、「道具が必要だなあ~」と思いたったらトンテンカンと鍛冶仕事をやらなければならないわけですが、初めの頃は試行錯誤の繰り返しで、余計に鍛造をするものだから炭素が抜けてナマクラ工具になったり、焼入れで刃切れが生じたり、研ぐたびに刃先がポロポロと駆け出したりしました。
一から冶金学を勉強し直し、友人の刀匠らに教えてもらったりしながら、何とかそれらしい刃物(専門家からは笑われるような完成度ですが・・・)が自作できるようになりました。
お天道様が高いうちから、火をおこしてコツコツと鉄を加工しますが、この時期は唯でさえ暑い最中です。
火傷防止の厚着など、夢中に作業を続けるうちに一枚また一枚と脱いでいき、最後にはTシャツ一枚になって工作にのめり込んでいることも多々あります。
形が出来上がる頃には、全身真っ黒け。火傷が絶えません(笑)。
写真の指に小さな穴がありますが、これは経験者なら誰もが持っている火造りによる火傷です。
真っ赤に熱した鋼材をハンマーで叩くと、不純物や酸化皮膜などのスラッグが四方に飛び散ります。このスラッグを専門用語でスケールというそうですが、数百度という高温の状態で襲い掛かってきます。
あまりにも熱い物体が身体に接触すると、もはや熱いとは感じずむしろ冷たいと感じるそうですが、夢中になっているためか、工作中は火傷の事など気付きもしません。
しかし、高温のスケールが身体に取り付くと、上皮組織に取り付いて剥がれず、その間も肉を焼き続けるので、結果クレーターのようなポッコリとした穴が開いてしまうのです。
ちかいうちに、ナイフの鍛造+外装製作+研ぎの一連の体験工作が出来ればなあ~と思っていますが、一番の悩みの種は火傷や怪我の責任問題だと思います。