刀剣外装の製作では、色々なところに柿渋を使います。

 

 

柿渋にはタンニンが多く含まれていて、防腐作用があることから最も触れる機会の多い柄前に多用します。

また、重ね塗りを繰り返して乾燥させると、強度が増すことも古くから知られていて、和紙に染み込ませることで和紙が硬くて頑丈になるばかりか防水機能も加味されます。昔は、和傘や団扇にも使われていました。

 

刀剣研摩で用いる地艶・刃艶の裏張りには、下処理として柿渋を塗った吉野紙を漆で貼り付けます。手間をかけて下処理をする理由は、上記の通り補強が目的です。

 

ちなみに柿渋を塗り重ねると、深みのある桧皮色に染め上がります。平安時代の人々も、この柿渋染めの色合いに美意識を感じたようで、とても多く用いられていました。

 

柄下地が完成した後、鮫皮を着せる前に、砥石に貼るのと同じ柿渋を塗った吉野紙を刻み煙草の灰を混ぜた続飯で貼り付けることによって、鮫皮の色を調整します。

時々、真っ白の鮫皮を用いている拵を拝見しますが、色合いの深みが感じられないばかりか、拵え全体のトータルバランスも崩しかねないかっこ悪さがあるので、避けたい手抜き工作です。

 

さてこの柿渋、昨今の研究で高い抗菌作用や解毒作用があることが立証されてきました。ある地方では、古来より伝承医学で薬用として用いられてきましたが、今になって効果・効能が証明されたことになります。

臭いさえ慣れてしまえば、万能な柿渋!臭いさえ慣れてしまえば、臭いさえ慣れてしまえば・・・(笑)。

自転車で、鎌倉へ行きました。

花粉症が本格化する前に、古都の空気を堪能したい!と思い立っての突発的な行動です。

 

鎌倉と言えば大仏。相変わらず、観光客でごった返しています。

大仏まで来れば、当然海岸を散策したくなります。実はこちらがメインで鎌倉へやって来たのです。

 

鎌倉の海岸は、知る人ぞ知る面白いものを拾う事ができます。

 

それは、各時代の陶器片です。30分ほどで、たっぷり見つけることが出来ます。

写真は、今回の収穫です。研究資料としても大変貴重ですが、誰でも簡単に発掘調査気分が味わえます。

 

ほとんどが、江戸期以降の物です。中には、時代の上がる中国青磁や古瀬戸なども散見され、毎回驚きと喜びを提供してくれます。

 

子供の頃は、材木座周辺で多く取れましたが、最近は由比ガ浜周辺の方が多く見つけることができる気がします。歴史マニア&骨董マニアにはたまらない一時です(笑)。

毎度ご来訪頂き、ありがとうございます。やっと、春の訪れが身近に感じられる心地よい季節が巡ってまいりました。この時期になると、花粉に過敏な身体が繊細な研摩作業を拒絶するので、しばらく外装製作中心の日々を送ります・・・というわけで、鞘の製作中です。

刀剣を、武道の稽古などに用いる方は、最も消耗する刀剣付属品として「鞘」を挙げると思います。特に鯉口部へのダメージには、神経を使います。
鞘の鯉口を強固に作ろうと思うと、金具でしっかり補強してしまう!という手がありますが、こと居合など抜き差しを多用する稽古の場合、刀身と鯉口金具が擦れたりぶつかったりと苦労が絶えません。

通常鯉口には、水牛の角を用いるのが一般的です(余程自信のなる武道家であれば、鞘を削ることもないでしょうから無加工の鯉口というのも可能です)。ようは異色の素材を用いれば用いるほど、何かしらの傷やら破損を導きかねないので、刀身のことを考えるなら日ごろから白鞘(休め鞘)に入れて保管するといった努力が必要になってきます。



鯉口の加工をしている時に、いつも気になることがあります。それは、水牛の角が想像以上に弱い素材であるということです。たしかにホウノ木よりは柔軟性?があるとは思いますが、機能面を考慮して用いるのではなく形だけで用いている場合は、むしろ何も入れなくてもいいのでは?とすら思えてしまいます。

もちろん、写し拵えの工作などでは、掟を踏襲して鯉口の加工を施しますが、鯉口に角材を用いることでかえって強度が落ちることもあるので、鯉口周辺の工作というのは実に厄介な作業だなあ~とつくづく思います。
皆様は、「縄文海進」をご存知でしょうか?
「じょうもんかいしん」と読みますが、約6000年前をピークに海水面が今よりも高いところにあったことを指します。縄文海進は日本のみで用いられる用語で、海水が日本近海だけで増えるわけも無く地球規模の環境変化なので、海外ではHolocene glacial retreatといいます。

ネット検索で、縄文海進についてはいくつでも引っ掛かりますが、各サイトや公表論文などの共通認識は、現在の海水面よりも2~3メートルは高かったというものです。海岸を散歩しながら、2~3メートル海抜が高かったと考えるとちょっとビックリします。



この地図は、遺跡や貝塚の位置から推定して作られた湘南地区(神奈川県の相模湾沿岸地方)の海岸線です。これを見ると、栄区や戸塚区にまで入り江が入り込んで海が広がっていたことがわかります。

ここでとても便利なGeology.comのGlobal Sea Level Rise Mapを使って、実際に海水面を3メートル押し上げて見ましょう。

Geology.comのページ:http://geology.com/sea-level-rise/

そうなのです!海水面を3メートル押し上げても、上記の想像地図のリアス式海岸は出現しません。何かの間違えでしょうか?そこで、湘南地区の貝塚の位置を地図上にプロットしてみましたが、やはり想像地図の方が正しい様です。そこで、今度はGlobal Sea Level Rise Mapを想像地図に合わせて海水面を調節していくと、最低でも20メートル押し上げなければ同様の海岸線は出現しませんでした。想像を絶するような広範囲の土地の隆起でもあったのでしょうか?

ちなみに、製鉄の神として知られるアラハバキ神についても調べてみますと、遺跡などから見つかっているアラハバキ神の遺構は、ことごとく貝塚よりも標高の高いところに点在しています。縄文の最高神?アラハバキは縄文海進のピーク時(約6000年前)に既に信仰されていた様です。人類が製鉄技術を編み出したのが、BC18世紀頃のアナトリア半島での事とされていますので、当初のアラハバキ神は製鉄の神ではなかった?ということになります。

ついでに言うと、Geology.comのGlobal Sea Level Rise Mapには大きな間違いがあります、皆様もお気づきになったと思いますが、地球の自転が反映されていないので、実際には一律に海水面が同じレベルだけ盛り上がるということは考えられず、赤道直下では地軸周辺に比べて少なくとも数倍の海水面の高さがあったはずです。

どちらが正しいという結論は出ませんが、海水面が今より20メートル以上高いとなると、我が家の玄関を出たら船で移動することになります(笑)。
鞘下地の内側を刀身に合わせて彫って(掻き入れて)いきます。



日本刀の外装は、「朴の木」というモクレン科の落葉樹が材料です。
朴の木は、日本を中心に極東地域にのみ自生しており、大きな葉っぱが特徴です。油分が少なく、ヤニも出ないばかりか、抗菌作用があることが知られています。
東北地方の物がよいとされていますが、私は数年毎に秩父へ買い付けに行っています(信頼できる目利きの業者さんが後継者不足で廃業されたので、今後入手先に苦労しそうです)。

特に年輪が詰まった北側の部位を厳選して、柄前下地に用います。切り出してから10年ほど乾燥させますが、何年も寝かせておくと材木に反りや曲がり(暴れと表現します)が生じて、歪に変形します。拵えに用いることができるのは、この暴れが落ち着いてからということになりますので、気の長い話です。



どれほど歪になるか?というと、数年寝かした材木を切り開いてさらに数年放置したところ、まだこんなに暴れが生じました。片方はプロペラ状の捻れが、もう片方は極端な反りが発生しています。こうなると、掻き入れ前にカンナをかけてピッタリ接着するように加工しなければなりませんが、基本的には掻き入れ作業時に切り開きます。

この朴の木、加工時に大変よい匂いがします。この匂い成分の中に抗菌物質が含まれている様ですが、私はこの匂いが大好きです。また、刀剣同様に木目を鑑賞することも面白く、特によい木材になると虎斑(とらふ)などの働きも見られ、一日鑑賞していても飽きる事がありません。
お国拵えの本場からご依頼を頂いているお刀の柄前です。



打ち下ろしの豪壮なお刀ですので設計に苦心しましたが、何とか柄巻きが終わりました!
当初より、刀匠・ご依頼者様・私を含め4名でじっくりと各々のお気持ちやお考えを相談して作り込んでいます。



大変貴重な肥後金具を用いた拵えです。

工夫した箇所は、目貫の腰が高めなので若干前方に配置して使用感の向上を図ると共に、鮫皮の色・柄皮の色・刀装具の色のコントラストを調整して、色調が浮かない様にしました。
柄巻きはクスベ革で片摘みに巻きました。革巻きの場合、何枚もの革を縫い合わせて一枚の革紐に仕上げる関係上、強度の補強に注力しました。
また、刀身のバランスとの兼ね合いから、柄成りはなだらかな立鼓に留めて、下地の肉置きを調整しました。

このご依頼は、途中で設計の大幅な変更があったため、鞘は下地から作り直すことにしました。
また、後日頂戴した追加のご依頼が多岐に及んだことと、熊本地震による悪影響も重なったことから、鎌倉でおこなった熊本募金ツアーの収益の一部を追加の工作代に当てさせて頂くことと致しました。ツアーにご参加頂いた方々には、その旨の了解を頂きました。改めまして、ご協力くださいましたツアー参加者の皆様、誠にありがとうございました。

引き続き、鞘の工作を継続します。
伝統的なものづくりでは、材料から工具に至るまで昔ながらの従来工法を用います。
一見非効率な様に感じられるかもしれませんが、長期的な視野に立つと必ずしも非効率とは言い切れず、むしろ良い成果が期待できる場合もあります。特に伝統工芸では、新しい技術を導入するよりも、長年培ってきた技法が結果的に高い成果をもたらします。

接着剤の技術は、日進月歩で素晴らしい製品が次々と登場していますが、続飯(そくいい:お米を練った糊)や膠(にかわ:動物性コラーゲン)、薬練(くすね:樹脂)などが、従来からの接着剤として知られています。私たちは、それらを用途に合わせて調合して使っています。

そこで、今回はこれら従来からある接着剤の内、膠(にかわ)についてご紹介します。



写真は、膠(にかわ)を使える状態に加工したところです。坩堝で温めながら、少しずつ溶かしていきます。

膠(にかわ)は、前出の通り動物由来で皮や骨などが原料になっています。科学的には原料中に含まれるコラーゲンが主成分とされています。伝統工芸では、接着を主とする用途に用いられており、現在は牛の皮を原料としているそうです。使用するためには、お湯に溶かしてゾル状(液体)にして用います。常温ではゲル化(固体)して標的を瞬時に接着してくれることから、数千年前に開発された瞬間接着剤なのです。
ただし、お湯に溶かして写真の状態にすると、恐ろしいほどの悪臭を放つため、慣れていないと気持ちが悪くなる場合があるので、使用には十分にお気をつけください!(笑)

通常柄巻きでは、薬練(くすね)を主成分とした接着剤を調合して用いるのですが、私は最近膠(にかわ)を使っています。膠(にかわ)は、使用のためにゾル状にするために、薬練(くすね)よりも高い熱が必要なので、扱いが面倒です。しかしながら、継承技法(薬練を用いる従来工法)よりも、より強固に柄糸が巻ける特長があります。
そこで、武道用途の柄巻きなどには、膠(にかわ)を調合したほうが良いのではないか?という考えで、研究を続けている次第です。
研究はまだまだ続きます・・・。

かねてよりお誘い頂いていた、楽器奏者の集いに参加させて頂きました!

 

 

大変有名な演奏家の方のご自宅で、素晴らしい音楽とおいしいお食事、そして各々が得意の楽器を奏でていきます。

 

 

どんな高価なスピーカーも、生演奏の臨場感には絶対に叶わないな~と思うほど、感動の時間はあっという間に過ぎていきました。

 

 

まさかの展開で、私も一曲即興で演奏させて頂きましたが、人前で楽器を奏でるのは実に10数年ぶり、緊張でガチガチになり途中間違えながらも大変貴重な体験をさせて頂きました(笑)。

 

 

また、ほとんど刃のない包丁でお料理されていたので、急遽包丁の研ぎ方講座を開催させて頂きました。これは持論ですが、和食の良し悪しは「新鮮な食材」と「切れる包丁」に尽きます!

 

 

床には、こんな見たこともないハイテクロボットが、上機嫌で鼻歌を歌いながら歩き回っていました。

 

愛好の輪に迎えてくださった皆様に、改めてお礼申し上げます。

先週末、日本刀つながりの数奇者で朝から集まって、思い思いに刀剣を楽しむ会を開催しました。ほぼ毎月恒例で集まっているのですが、横浜刀剣会の定例研究会にスケジュールを合わせている関係上、昨年末は中々集まる機会に恵まれませんでした。

毎回懲りもせず、刀剣の事・歴史の事・武道の事・工作の事などなど、語りだしたらキリがありません(ちなみに、参加者全員が武道をたしなんでいるという、刀剣好きの集まりにしては変わったメンバー構成も特徴的です)。

今回の私は・・・というと、来月某団体にて鎌倉と鉄の文化をご紹介する講演依頼を頂いており公演内容のことで頭がいっぱいのため、終始鉄器の歴史などを考えていました。

来月の講演会では、日刀保の大先生とタッグを組んで解説に当たらせて頂く事から、もう少し内容を煮詰めて役割分担を明確にしなければなりません!

 

さてさて今回の定例研究会では、新年最初の鑑定会ということでどんな御刀が登場するのか、ワクワクしながら会場入りしました。

 

鑑定刀は以下の通り。

一号刀 則房(一文字)

二号刀 長義(相伝備前)

三号刀 与三左衛門尉祐定

四号刀 忠吉(二代)

五号刀 行広

 

 

結果は、散々。無鑑査の砥師先生には、「まあまあ、いいんじゃない」と言って頂きましたが、この道で食べさせて頂いている者としては詰めの甘さを痛感する結果です。

反省点は、正月なのでよい刀が来るだろう!といういやらしい想像力が一号刀を同然に導いたに過ぎず、本心では畠田か小反りかと見ていたので、ずるい結果になりました。また、室町の特徴を時期毎にしっかり把握していないため、三号刀の与三左衛門尉を応永に見るなど恥ずかしい失態を犯しました。四号・五号刀の肥前ですが、代別の違いと傍系の特徴をしっかり補習しなければ、今後も同じ間違えを繰り返すであろう欠点が露見したことも、今後の課題となりました。

 

鑑定会終了後は、カフェで日が暮れるまで語り合い、充実した時間を過ごしました。

充電完了!

毎度ご来訪くださいまして、誠にありがとうございます。
本日は、今年初めての合同稽古で取手へ行きました!今季最強の寒波到来を告げる天気予報に怯えながらの移動でしたが、途中トラブルも無く行って帰ってくることができました。

 

私にとって居合の稽古は、創作活動の最大の息抜きです。健康に身体を動かす事ができる幸せに感謝すると共に、武道を通して知り合った皆様と友好を深めることができるありがたさをヒシヒシと感じています。

 

 

居合の全ての技を稽古しました。写真は、剣道形。

 

家に帰ると、昨晩塗装を施した舟(刀剣研磨の作業場)がすっかり乾いていました!シメシメ

 

 

大体、一年に一度補修を施すのですが、年々修復の時期が早まっている様です。

兄弟子に作って頂いた大切な舟ですが、ボチボチ新しい舟を作らなければならないかもしれません。

 

ところで、初稽古、稽古始め、どちらが正しい日本語なのでしょうか?どちらでもよいとは思いますが・・・。