こんにちは。会津素子です。
今日は衆議院議員会館にて、環境保護団体グリーンピース主催の院内学習会
「ミツバチ・食・生態系を守るために〜国内養蜂家の報告と欧州の最新研究事情〜」が行なわれたので、参加させて頂きました。
以下、お二人の報告と自分の感想をざっと書かせて頂きました。
俵博(たわら・ひろし)さん養蜂家、獣医師
・俵養蜂場経営。ミツバチに関する相談が増えた。
· 国内で消費するハチミツの95%は輸入。農業に使われているのは全て西洋ミツバチ。ニホンミツバチは趣味の範囲で養蜂されている。
· 農水省は農薬がミツバチに影響を与える事は認めたものの、ミツバチは不足していないと認識。農家と蜂の需要と供給はバランス取れていると。これは、平成21年以降マルハナバチが増えたこと。また、311により東北の農家が激減したことが要因と考えられる。しかし、今年の春は不足している。天候不良もあり、ミツバチの数が全く足りていない。
· イチゴは100%ミツバチに頼っている。ミツバチがいなければ歪な形のイチゴができてしまう。
· ミツバチを大切にしようと思えば、農薬を使わない。使わなくても果実はできることが分かった。
· 果実をつくる農家と養蜂家は理解し合い、農薬を使わない方向に向かっている。しかし稲作は異なる。水田地帯ではミツバチは飼えない。山奥で飼うか、都会のビルで飼うか。都会では問題なくハチミツが採れる。
· かつての農薬は、ミツバチが被害を受けても2週間で回復のきざしが見えた。現代のネオニコ被害は回復しない。死骸もない。すーっといなくなる。
· 簡単に農薬を販売しないでほしい。農薬規制を。ヘリ防は基準の何倍もの濃度で撒くのが普通になっている。
· 農薬に頼らない有機農業をもっと研究してほしい。
· 米の検査規格のせいで、不必要な農薬が撒かれている。
· 海外ではメチラチオンが2011年に製造中止されている。しかし日本では、全農が販売権を取得して売っている。日本で販売するのを止めてもらいたい。
· 日本の残留基準値が桁外れにゆるい。特にコメ、お茶、みかん。
· 農薬だけがミツバチに悪影響を与えている訳ではない。ミツバチにつくダニを退治するための消毒が二種類あるが、ダニが耐性付けている。密源が減っていることもあり、ハチは減っている。
· 2013年、ミカン花のハチミツから基準値超えのアセタミプリド検出。養蜂家は回収を余儀なくされたが、数年後、基準値が緩和された。
· ミカンは多くのハチを犠牲にして出荷されている。
· 台湾に出荷予定のミカンが廃棄処分された。(日本の基準が甘いから)
· 近年、ニホンミツバチにつくダニとウィルスが大きな問題になっている。まだ九州には出ていない。器官につく小さなダニ。
マイケル・ノートンさん(欧州科学アカデミー諮問委員会 環境プログラムディレクター)
· 農薬に賛成、反対どちらの団体にも所属していない。科学者の立場で話す。
· ネオニコは欧州でも広く使われているが、被害も報告されている。2013年にEUで規制されてからも科学的調査・議論が続いている。
· EASAC・・・EUに加盟する29国の各国立科学アカデミーのメンバーから構成。政府意思決定者にむけて、科学的分析・助言を行なう独立組織。持続可能な農業を行なう上で、特に重要な生態系サービスを生み出してくれる生態系・生物への影響に注目して詳細なレビュー・研究を行なうことを決めた。そして、13人の専門家集団を選出した。マイケルさんはその一人。
· EASACから昨年4月レポートが出された。学術論文300本を解析し、様々なデータソースから研究した。これからその報告を行う。
· 生物多様性は多くの経済的価値があると試算(天然の防虫防除システム地球全体で36兆円、土壌形成3兆円、花粉の送粉2兆円)
· ミツバチの巣の崩壊は1年で10%以上増。
· ミツバチは他のハチに比べて、環境変化に強い。他のハチはもっと弱い。つまり、生態系を考えるにはミツバチの保護だけでは不十分。
· 自然の生態系サービスに関わる昆虫は全て大幅に減少している。
· 農地の生物多様性を回復・維持することが、EU政策の重要な目的である。
· ネオニコは数%が植物に残り、95%は土壌や水に流れ残留する。
· 結論。「致死量に達しないまでも、悪影響が出る」というネオニコの影響は存在する。また、非常に低い濃度でもウィルスの活性化など、深刻な影響をもたらす場合もある。
· 必要以上に「とりあえず」農薬を使う、というのはEUのIPM(総合的病害虫管理)の原則に反している。農薬使用は最後の手段であるはずなのに、最初の手段になっている。
· レポートにより、ニューヨークタイムズ等、世界のメディアが反応した。
· フランスでは2018年頭からネオニコ使用が禁止となる。
·ネオニコの承認を受けたのは15年くらい前。当時、害は低いと言われていた。しかし、ネオニコのほとんどは土壌に流れる。しかも残留性が高いので、土壌への害は年々大きくなる。だから現在の残留濃度は当時に比べてかなり高い、つまり害も増えている。
· ナメクジはネオニコの耐久性が高い。ネオニコを使用した事により、かえってナメクジの被害が増えた例もある。
学習会を受けて
ネオニコチノイド系農薬の恐ろしさについては以前から勉強していたが、現場の養蜂家と科学者の立場から話を聴いて、新しい情報を得る事ができた。科学的根拠によりEU はネオニコ禁止に舵を切った。日本はどうか。世界では非常識の残留農薬基準、生態系や人体に与える影響を考えようともしない。ちょうど今日、アメリカ大統領選挙の投票が行なわれている。TPP協定の下では、現在のゆるい規制ですら撤廃される可能性がある。