アンディ・ウォーホルと並ぶ私のアート界のアイドルであるジャン・コクトーの戯曲に影響されてつくりました。電話での会話を通してカップルの別れを描きます。

 

 

 

エル(彼女)

 

昨日べルソムラを飲んで眠ったの

お薬のおかげでぐっすりと眠れたわ

赤いドレスに黒い帽子

そんなエルがつぶやいた

 

明日プリシラと結婚する

突然彼がつぶやいた

首に電話機のコードを巻き付けているの

首にあなたの声を

 

マルセーユに泊まるなら

あのホテルに泊まらないで

わたしたちの定宿だった

あのホテルに泊まらないで

 

電話機と一緒に寝るなんて

あなたに首ったけの5年間

別れの時がとうとう来るかと思うと

電話を切らないで

 

わたしは大丈夫よ でも声が遠い

でも声が反響して

あなたの声じゃないみたい

電話だと時計の針を戻せない

 

マルセーユに泊まるなら

あのホテルに泊まらないで

わたしたちの重宿だった

あのホテルに泊まらないで

 

人は伴侶という幻想を抱き

ある日突然 地下室や下水道が築かれ

二人の間には 都市ひとつ分の間隔が

 

マルセーユに泊まるなら

あのホテルに泊まらないで

わたしたちの定宿だった

あのホテルに泊まらないで

 

マルセーユに泊まるなら

あのホテルに泊まらないで

わたしたちの定宿だった

あのホテルに泊まらないで