あんちゃんの失踪と探偵さんの話⑦〜心惑わす様々な情報 | たかみんの脳みそ混乱記

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落ち込んだり悩んだりした時間を忘れない。優しさやいたわりをもらって支えられて生きていることを忘れない。
他人に追い越されたり置いていかれても、自分なりに歩いて行こう、そうしよう。

小さいあんちゃん失踪事件の捜索は
探偵さんに委ねられた

だが自分達家族も怠けていた訳ではない

探偵さんから言われた通り
卒業した大学やお世話になった下宿先を訪ね
あんちゃんの写真も渡して
見かけたら連絡をくれるようにお願いした

交通機関や立ち寄りそうな駅、
タクシー会社、漫画喫茶、カプセルホテルやサウナ、コンビニや本屋にも、
頭を下げてお願いして歩いた

後は待つしかない

一日がとても長く、家の電話が鳴るたびに受話器に飛びつく日々だった
ちなみにその頃は携帯電話などは登場しておらず
連絡先に指定するのは自宅か勤め先の電話が一般的だったが
息子の失踪なんて話を他人に知られたくなかった母親は
あんちゃん情報の連絡先は全て自宅にしていた

探偵さんの存在は父親に内緒だったので、
探偵さんには連絡の時には会社の同僚のAさんと名乗ってもらった

寄せられた情報で信用のできる確実なものは
銀行と探偵さんからのものだけだった

銀行からは◯月◯日◯時頃、××支店で◯万円出金と情報を頂いた。

この事件は20年以上前の事なので、
現在はもしかしたら銀行も本人以外へこのような情報を教えてはくれないのかもしれない

ただこの金の流れが重要な情報であったのは言うまでもない

あんちゃんの位置は少しずつ故郷に近づいているようだった

探偵さんからもあんちゃんの目撃情報が報告された
その情報は家族に希望をもたらした
電車に乗って移動し、駅のベンチに長い間座っていたらしいと聞いたときには
あんちゃんの胸の内を思い涙がでた

反対にガッカリさせられたり傷つくような情報もたくさん寄せられた
その大半は親切心から出たものだと理解はできるが、
事実だと確認がとれない
想像による情報は家族を消耗させるだけだった

やれ、霊能者に見てもらったら
女の所に転がり込んでのめり込んでいるから一生帰ってこないだの、
やれ、ギャンブルに手を出し隠し借金があり金貸しに追われているから簡単には出てこれないだの、
一番ひどかったのは、もう死んでいる…
好き勝手な事を見てきた事実のように言われて
母親は憔悴していった

あんちゃんを必ず見つけてあげるから水晶の数珠を買えと言う電話がきた時は
たまたま私が電話にでたので受話器を電話に叩きつけてやった
ふざけんじゃねー‼︎と叫んだ途端に涙が出た

人の不幸や不安を食い物にしやがって…

そのような不確かな情報でも報告する約束になっていたので
母親は探偵さんに全て話した

彼は全てを聞き、情報の一つ一つを冷静に判断し裏をとり、
女性問題も借金もありませんよと
不安を一掃してくれた

あんちゃんの足取りも少しずつだが掴んでくれた

あんちゃんは一人で行動し
やはり少しずつ故郷の方向へ移動している

実家へ帰ってくる可能性は高いだろう