あんちゃんの失踪と探偵さんの話⑥〜心に寄り添う探偵さん | たかみんの脳みそ混乱記

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落ち込んだり悩んだりした時間を忘れない。優しさやいたわりをもらって支えられて生きていることを忘れない。
他人に追い越されたり置いていかれても、自分なりに歩いて行こう、そうしよう。

小さいあんちゃんが消えてから5日程して
母親が一旦引き上げてきた

会社は有給休暇を使ってギリギリまで様子を見てくれることになった

母は探偵さん
正式にあんちゃんの捜索を依頼した
正直な話、探偵を依頼するにはお金がかかる
特に、何処にいるかわからない人間を探し出すには
調査員の数も日数も相当かかると覚悟しなければならない。
母親は父親に内緒で保険や定期貯金を解約し
探偵さんに依頼した

父親にバレたら小さいあんちゃんどころか
家族全員がぶっ殺される

俺の金をそんなもんに使うんじゃねえ‼︎
そんなバカ息子は、勝手に死んじまえ‼︎
想像しただけで怒号が聞こえてくる気がした

そんな父親とは反対に
探偵さんはあんちゃんを探すだけではなく
母親にたくさんのアドバイスをしてくれた

あんちゃんの部屋から
学生時代の数少ない友人からの年賀状や、
カメラ好きのあんちゃんが気に入って写したであろう風景写真を探し出し、
そこへ立ち寄ったり連絡をするかもしれないから
友人達へ協力を依頼しておくこと

大学時代に過ごした街にも網をはるので
大学時代の恩師や下宿先のおばちゃんや駅前の商店街の人たちにも協力してもらうこと

そして家族には
希望を失わず
帰って来た時に暖かく迎えてあげられるように準備をしておくこと

会社は残念だが解雇される事を念頭におき、手続きや引越しの心構えをしておくことも言ってくれた

その探偵さんは
ただの家出人捜索の仕事屋ではなく

私達家族のあり方を正しい方向へ導いてくれる
カウンセラーのような存在だった

最悪の場合も考えなきゃね…
帰って来た母親は
実家で待っていた私に全てを語り終わったあと
ポツリとそう言った

万が一の事も
心の準備として片隅に置いておくのが必要だから
自分も「そうだね」と答えた

ただ
今やらなきゃならないのは
葬式の準備ではなく、
あんちゃんを探し出し
あたたかく迎えてあげる準備をする事だ

その明確な目標を探偵さんが示した事で
母親も
妹である私も
なんとかショックから立ち直り
現実と向き合えるようになったのだ