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 先日長崎へ訪れたKさん(ING生命)から、感動的で懐かしいDVDをもらった。


 1970年(昭和45年)に製作、公開された山田洋二監督の映画・『家族』だ。故郷である長崎県伊王島から、酪農を夢見て北海道の開拓村・中標津町(根室原野)へ移住することにした家族5人が、日本列島縦断(3千km)の道中で様々なトラブルに見舞われながらも、家族の“絆”を拠りどころに力強く生きていこうとする姿をドキュメンタリー的に描いたもので、涙と感動を誘う名作だ。


 その当時は、いわゆる日本の高度成長期の頃だ。東京オリンピックが開催されたのが1964年(昭和39年)、その6年後で、映画のシーンにも出てくるが大阪で万博が開かれていた頃である。新幹線(大阪~東京)はすでに走っていたが、慎ましい家族の列車を乗り継いでの移動となれば、かなりの長旅だ(長崎本線~山陽本線~新幹線~東北本線~青函連絡船、さらに北海道を東上)。


 ドラマは、伊王島を離れ、大波止(うちの事務所があるところ)から長崎駅へと向かうシーンからはじまる。大阪の雑踏と万博、そして新幹線での移動。長旅や雑踏の疲れで、赤ん坊の長女が体調をくずし、東京での治療の遅れもあって命を落とす。バタバタと火葬をすませ、心の整理ができぬまま、列車に乗る。


 やっとの想いでついた開拓村は、殺伐とした原野。精魂ともに尽きた感じだ。追い討ちをかけるように、地元の歓迎会ときに上機嫌で炭坑節を歌っていた親父さんが、その夜の布団の中で息を引き取ってしまう。後悔と悲嘆にくれるが、北国にも春が来ることを信じ、励ましあう。6月、北国にも春が来て、牧草地は緑に覆われ、一家にとってはじめての牛が生まれ、夫婦のあいだにも新しい命が宿っていた。


 ざっと、こんな感じの展開であるが、見送る島民、列車の中や旅先そしてたどり着いた場所においても、人間の暖かさというか、人間関係の濃さを感じさせるシーンが描かれている。と同時に、都会の冷淡さと関係性の希薄さを浮き彫りにしている。


 単身ではなく、家族みんなで一つになって移動する、その“絆”がすばらしい。家族の“絆”が中心にあって、関わる人たちの密度も濃くなる。そんな文化が壊れてしまったのが、今の日本だ。


 スピードや効率性ばかりを追求していると情緒を失う。無駄を省くことばかりに気をとられ人間関係を損なってしまう。自分の算盤しかはじけない人は次元の低い現実しか見えなくなる。そんなことを思い浮かべながら、みていた。


 震災後、日本人としての生きる形を再考しようとする動きがある。その機軸に“絆”をおきたい。“絆”とは、縁、関係性。感謝と思いやりの心が“絆”を強くする。

(H23.8.8)