1月25日(土)は日本城郭史学会主催で神奈川県津久井城見学会がありました。今回の見学会は神奈川県立公園協会の野口文史氏と相模原市立博物館学芸員の中川真人氏の両名が案内講師でした。史学会では二年前に中川氏の津久井城発掘調査の城郭セミナーがありました。今回はセミナーの続編とも言うべき津久井城の見学会です。

 

津久井城遠景

 

 橋本駅に集合してバスで津久井城を目指します。津久井城は整備されているとはいえ険しい山城です。今回の見学会は30人近くの参加者がいました。山城なので雨が降ると見学会に支障が出ますが、この日の天気は大丈夫でした。

 

相模原市立博物館の中川真人氏

 

公園協会の野口文浩氏

 

 見学する前に津久井城の麓にあるパークセンターに入りました。津久井城の立体模型があるので模型を使って津久井城の事を説明してくれました。

 

津久井城パークセンター

 

 パークセンターを出て、まずは麓の根小屋を見学します。牢屋があったといわれる沢を通り、しんでん地区に入ります。江戸時代の絵図に沢に橋があり、しんでん地区を結んでいました。しんでん地区の入口には土塁と虎口があった事が確認されています。

 

しんでん地区

 

 根小屋を下って城坂曲輪群5号曲輪に向かいました。5号曲輪は根小屋の一番南側にある小さな曲輪ですが、最近発掘調査が行われました。

 

5号曲輪

 

 発掘調査によって5号曲輪から庭園跡、池跡が発見されました。池底からはびっしりと石が敷き詰められていました。建物跡は発見されませんでしたが、すぐそばを流れる尻久保川を借景とした庭園ではないかとの事でした。庭園のみの曲輪は後北条氏の城郭では他の例がなく珍しいです。この庭園も天正18年の豊臣秀吉の小田原攻め前に埋められて籠城に備えました。

 

5号曲輪での説明

 

 遊歩道は歩いていると途中に竪堀がありました。写真だと分かりにくいですが、現地で見れば竪堀だとはっきり分かります。根小屋の遊歩道は幅の広いスロープで歩きやすいです。地表面から離れて空中に設置されているので竪堀等の遺構を壊すとこはありません。

公園整備と遺構保存の両方をうまく考えて整備されています。

 

竪堀を見学中

 

津久井城竪堀

 

 次は御屋敷曲輪を見学します。津久井城の城主である内藤左近屋敷があった曲輪です。

東西60M、南北70Mの根小屋では最大級の曲輪です。虎口は2ヶ所あり、東側虎口は向かって右手には石積みがあり、左手には1M越える大きな石が4個並んでありました。この巨石は城主の権威を示すものであったかもしれません。

 御屋敷曲輪では金の精製が行われていた痕跡が確認されています。どの程度の金の量かは不明です。北条氏からみれば内藤氏は外様の家臣ですが、この金のおかげで家臣の中では序列が高かったかもしれません。

 

 

御屋敷曲輪

 

 麓の根小屋を見学したら、城山山頂の遺構を目指します。山頂に行くには距離は短いが急な男坂と距離は長いが緩やかな女坂がありますが、今回は伝大手道といわれている馬道から登ります。

 

山頂に向かう1

 

 伝大手道は津久井城が使用された戦国時代の登城路ですが、現在では使わない道です。道には案内が一切ないのでどこにあるのか分かりません。イベント等で使う事がありますが、今回の見学会では特別に伝大手道で城に登る事になりました。

 

山頂に向かう2

 

 いつもは使えない道で登れるのはとても有り難いですが、あまり整備されていないので少し登りにくい道でした。男坂を登るより大変でしたが、本来の登城路で城に行ける事を思えば貴重な体験ができたと思います。

 

更に険しくなるも山頂に向かう

 

 途中で竪堀を二本越えて、山頂を目指します。竪堀部分は当時は橋があったみたいですが、今はありません。当時より堀は埋もれているので何とか通れました。

 

後半に続く