12月21日(土)は日本城郭史学会の2019年度第3回城郭史セミナーがありました。テーマは「赤色立体地図に見る城郭」です。今回はアジア航測の千葉達朗氏を講師に招きました。千葉氏は赤色立体地図の発明者であり、日本火山学会の副会長、日本大学の非常勤講師を勤められています。
今回のテーマ
赤色立体地図はNHKのブラタモリでもよく使われて、千葉氏はブラタモリに出演された事もあります。ちなみに赤色立体地図は登録商標されていません。
講師の千葉達朗 氏(アジア航測)
当日のセミナーの様子
セミナーの前半は赤色立体地図が開発された経緯や地図についての説明でした。赤色立体地図は開発された当初は赤い地図が内蔵に見える事からポリープ地図、内蔵マップと言われたそうです。
青木ヶ原樹海
富士山噴火に備えて、富士山の溶岩流からなる青木ヶ原樹海を調査するために赤色立体地図は開発されました。樹海内は遭難する事があるので中に入っての調査はなかなか出来ません。樹海内でも木々の間から空は見えます。そういうわけで樹海上空から航空機によるレーザー測量が考えられました。航空レーザーだと緩やかな場所や急傾斜の場所は表示しにくい問題がありました。陰影図や斜度図を利用、応用して赤色立体地図が生み出されました。
新たに発見された火口
山梨県の旧上九一色村周辺では赤色立体地図から新しい火口が発見されました。
ダムと赤色立体地図
赤色立体地図は水中でも音波を使って探索する事ができます。今はダムに沈んだ場所でも調べてみると、ダムの底にはダムが出来る前の時代の川の地形が残っている事が分かります。
古墳と赤色立体地図
赤色立体地図は古墳の調査にも使えます。古墳内は立入禁止になっている事が多いですが、上空からレーザーで調査すると、生い茂った木の中にある古墳の形状がよく分かります。
三原山噴火のシミュレーション
伊豆大島の三原山も赤色立体地図から模型を作り、噴火のシュミレーションをしました。シャンプーを熔岩代わりにして熔岩が流れる場所を予測しました。これだと安価にシュミレーションできます。
月の赤色立体地図
セミナー前半の最後に月の赤色立体地図を紹介しました。月の地図はネット上で後悔されているので誰でも見る事が出来ます。月の表面があまりにもよく見えるので少しグロテスクに見えてしまいます。ここで休憩となりセミナー前半が終了しました。
セミナーの様子2
今回のセミナーで紹介する城
今回のセミナーでは奈良県高取城、滋賀県小谷城、岐阜県飛騨市の城郭を紹介します。
飛騨市傘松城
赤色立体地図で城跡を見れば平坦な場所、曲輪は白く表示されます。曲輪でも見晴らしがいい曲輪は白く輝きます。赤色立体地図から飛騨の城は稜線を分断する堀切はあまりなくて、自然と調和した城だという事が分かりました。
小谷城1
次は滋賀県長浜市の小谷城を紹介しました。NHKの番組で使った赤色立体地図の動画を使って小谷城を説明しました。
小谷城2
赤色立体地図から小谷城に東側が岩盤が剥き出しの急傾斜だと分かります。西側は比較的緩やかな坂です。これらの事から天正元年に羽柴秀吉が小谷城の京極丸を急襲して攻め落としたのは西側から攻めたと思われます。
高取城
最後は奈良県高取城を紹介しました。国土地理院のホームページから赤色立体地図は見る事が出来ますが、公開している地図情報では高取城の詳細は分かりません。橿原考古学研究所とアジア航測共同で開発した赤色立体地図だと高取城の詳細な情報が分かります。
最後に
赤色立体地図は単眼の人でも立体に見る事が出来ます。人間の網膜は赤が多いので赤の地図の方が分かりやすいとの事でした。
今後は赤色立体地図を使った城郭調査を考えた方がいい事、富士山の熔岩調査は既に赤色立体地図を利用しての調査になっているとの事でした。
近く将来に日本の城郭研究を大きく変えるであろう赤色立体地図の仕組み、凄さがよく分かったセミナーでした。