トランプ大統領への協力優先は日本の国益(その2) | 日本人の進路

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左翼全体主義(共産主義)国家化が進む日本。マスコミはどこを向いても左翼ばかり。これでは日本国民が洗脳されてしまうのはくやしいけどどうしようもない。ただあきらめてしまったら日本の明日はない。日本の中、露、朝への属国化が現実のものとなってくる。

トランプ大統領への協力優先は日本の国益(その2)

 

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中川八洋掲示板
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トランプ大統領への協力優先は日本の国益──幣原喜重郎の対米協調主義の転覆が日本破滅となった苦い歴史の教訓

 


2017.02.07
トランプ大統領は日本の好機

 

 

 

筑波大学名誉教授   中 川 八 洋

 

 

 

 

 

(続き)

 

 

 

 

 

 

第二節 日英同盟の存続が日独伊三国同盟を阻止した“if歴史の教訓”

 

 

 

日米同盟軽視の幣原喜重郎の失策を嘆く、英国ピゴット陸軍少将の落涙『絶たれたきずな』

 幣原喜重郎の唯一の外交失策は、なぜ生まれたのだろうか。

 

 原因は、二つあるように思える。 第一は、世界秩序のメーカーが、「パックス・ブリタニカ」から「パックス・アメリカーナ」に移行したとのマクロ的な判断は正しいが、肝腎の米国が「アメリカ・ファースト」である以上、「パックス・アメリカーナ」は凍結状態で機能していない。これを洞察しなかったことは、幣原の欠陥である。実際にも、戦間期は「パックス・アングロ・アメリカーナ(英米両国による世界平和)」であって、「パックス・アメリカーナ」ではなかった。「パックス・アメリカーナ」は、1947年のトルーマン・ドクトリンから始まる。

 

 第二に、日英同盟の解消と同時に日米同盟が始まるのなら、生まれたばかりの赤ん坊「パックス・アメリカーナ」に日本外交の基軸を預ける策は賢策といえる。だが、日米同盟は1952年4月に発足したように、1922年の日米同盟の終焉後から丸三十年間も先の話。つまり、幣原喜重郎は「“英米との同盟無し”でも大丈夫」「英米との軍事同盟なしでも対英米協調の外交があれば十分」と判断した。

 

 この幣原の結論は、「軍事力と外交力は一体不可分で、一方を欠いては他方は機能不全となる」というクラウゼヴィッツ『戦争論』の常識を欠いている。また、軍事バランス(Balance of Power)が国際秩序の要であるとする国際政治の常識も欠いていた。先達の陸奥宗光小村寿太郎武家出身であるのに比して、幣原寿太郎は裕福な農家出身で武士の素養を全く欠いていた。このため、軍事バランスがさっぱりわからなかった。これは、“軍事バランスによる平和”“同盟による平和”を塵扱いしたウィルソン大統領と酷似している。軍事力に対する偏見と視野狭窄の弊害が、幣原とウィルソンには顕著に見えるようだ。  

 

 日本人以上に日本人だった“英国の親日軍人”フランシス・ピゴットは、その著『Broken Thread』(1950年、注9)で、1920年代、日英同盟の終焉に涙を流して嘆いたと回想している。確かに、1930年以降の日本の対外行動を見れば、日英同盟の葬送に流したピゴットの涙こそは、日本の国家生存の破綻を見通す千里眼だったと言えよう。

 

 幣原喜重郎が、評価できる対英米協調主義を貫きながら、“九仭の功を一簣にかく”かに、その要石である日英同盟を、なぜあれほど簡単にポイ捨てしたのか。この点だけは、幣原を尊敬している私ですら、幣原に対する糾弾の手を緩めることはできない。日英同盟を欠く対英米協調主義など、ウィスキーの入っていない水割りのようなものではないか。

 

 日英同盟があれば、ポスト幣原の日本が、“亡国の疫病神”日独伊三国同盟を締結することは決してありえなかった。それより前のことだが、日本が“親日”『リットン調査団報告書』に噛み付く、逆立ち狂気を起こすことも決してなかったはず。当然、日英同盟の代用品として機能していた国際連盟からの脱退もしていない。反ナチのチャーチルの影響が日本にも直輸入されるから、日本全体が“ゴロツキの人殺し狂人”ヒトラーに魅了されることも少なかっただろう。そして何よりも、幣原の対英米協調主義が、自分の下野と同時に反転して、日本中があれほどの「反英/反米」の狂気に狂乱することはなかっただろう。

 

 蛇足だが、私は、幣原喜重郎が生きていたらどうしても聞きたいことが一つある。「陸軍発祥のスローガン“鬼畜米英”が日本中を木霊した時、どう思ったか」、と。親英米同士なので尊敬しているが、幣原喜重郎と私にはある相違がある。私は「反米/反英」という“反日”猛毒思想を我が国から一掃すべく、「我が師」バークの教え通りに、共産主義者&民族系の“国賊ども”と熾烈なイデオロギー闘争をしている。一方、上品な紳士だった幣原は、それをしなかった。

 

 

 

 

 

 

 

同じ親英米の吉田茂幣原喜重郎の違いは、日本外交が優先すべき「反共」「反露」の有無

 幣原喜重郎には、彼を糾弾するつもりはないし、また幣原喜重郎の責任とは必ずしも言えない、もう一つの深刻な問題がある。それは、幣原喜重郎共産主義イデオロギーに対して“撲滅したい”の「反共」はともかく、警戒感が全くなく、無関心だった問題である。これこそ、吉田茂が幣原より一等上の人材と目される所以であろう。

 

 吉田茂は、親英米で対英米協調主義である事では、幣原喜重郎と同一である。だが、吉田茂は、「反共」「反露」であって、これが“反共ではない/反露ではない”幣原と決定的な相違。日本国の生存のためには、1917年のレーニンの共産革命以降二百年間は、三つの外交基軸に依拠しなければならない。順不同だが、「親英米」「反共」「反露」の三つである。

 

 陸奥宗光小村寿太郎については、1917年以前の外務大臣なので、「反共」は評価規準から免除されるが、1917年以降の外務大臣である幣原は、この「反共」の有無問題から逃れられない。1925年の日ソ基本条約を、共産主義者でロシア工作員後藤新平から要請されるままに締結した幣原・外務大臣の罪は、目をつぶってあげたいが、やはり万死に値すると言わねばなるまい。日ソ基本条約が1941年春の日ソ中立条約に一直線につながっているからだ。

 

 

 

 

 

 

 

ウィンストン・チャーチルの「ウィルソン十四ヶ条」「国際連盟」全面否定論は、国際政治学の白眉

 さて、話は飛ぶ。“戦間期に完璧な外交政策”を主張した天才が、地球上に一人だけいた。ウィンストン・チャーチルである。

 

        

表4;第二次世界大戦の勃発を理論的に見透した天才チャーチル

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 天才チャーチルが、英国民に対し「民族自決」は間違っており、ヒトラーのオーストリア併合(1938年3月)もチェコズデーテン地方の併呑(1938年9月)も「民族自決」だが、それはナチ・ドイツの侵略であると説明しても、英国民の八割以上は1918年ウィルソン十四ヶ条に洗脳されており、チャーチルの声に耳を貸さなかった。あるいはチャーチルが、フランスの陸軍は、ポーランド/チェコ/ルーマニア防衛分があるから過剰でないと言っても、ウィルソンの「軍縮こそ平和」に情報汚染された英国・マクドナルド首相は耳を貸さなかった。

 

 いったん刷り込まれた間違った考えを是正するのは至難である。とすれば、天才ではない、ただの東京帝大で目立つ秀才だった幣原が、1910年から既に狂って走り出していた日本の国論の暴走を1921年から十年間だけでも凍結しただけでも上出来と言うべきだろう。戦間期の英国と日本の、それぞれの国民が挙げて、「軍備バランス重視」「同盟重視」「反露」「反共」「親米」で一致して、この五政策を合同で米国に突きつけ、その「アメリカ・ファースト」の転換とウィルソン主義の一掃を迫ることなしに、第二次世界大戦は防止できなかったと考えられる。

 

 米国が「アメリカ・ファースト」とウィルソン主義を放棄・転換したのは、1941年12月の日本のパールハーバー奇襲攻撃の衝撃が契機となったのは、何ともパラドキシカルな皮肉である。

 この歴史を思い出せば、粗暴大統領トランプをして、「アメリカ・ファースト」を放棄的に転換させ、同盟重視に覚醒させることは、そんなに容易な事ではないことが判ろう。

 

 

 

 

 

 

「隗より始めよ」──精強な軍事力をもつ国は同盟国・友邦国を惹きつけ絆を強める

 トランプ米国大統領の下品と粗暴は目に余るが、それに目くじらを立てるのも大人げない。EUの首脳会議を見ても豪州首相を見ても、この感がする。我々自由社会の国々は、米国なしには生存できない。我々は米国に敬意をもって感謝する礼節を失ってはならない。  

 

 その上で、米国と同盟関係を持つNATO、日本、豪州は、次の二つを実践しようではないか。

1、「親米」「軍事バランス重視」「同盟重視」「反露」「反・支那(チャイナ)」「反共/反・左翼思想」「内政事項“移民”制限の相互尊重」の七項目を不動の共通基本方針とする。

2、当該同盟国は、防衛力を直ちに三割以上増強し、米国民にくすぶる“防衛タダ乗り”疑念を払拭する。  

 日本はこれに加えて、尖閣諸島の自力防衛を直ちに実行する。

3、陸自部隊の常駐と要塞化──対人地雷の敷設、40~50ノットの高速ミサイル艇10艘以上の宮古島常備、対艦ミサイル(ハープーン)百基以上の魚釣島の地下坑道への配備など。また、軽空母4隻/ハリアーⅡまたはF-35Bを60機以上/人員2万人の海兵隊創設。詳しくは拙著『尖閣防衛戦争論』を参照されたい(注10)。

  

 これに絡んで、日本国民に注意を喚起したい。マティス国防長官は、安倍晋三を表敬訪問した際、「核の傘の提供」を明言した(注11)。これに日本人が安堵したのは、日本が核武装していないのだから理解できる。が、「尖閣諸島防衛に日米安保条約が適用される」とのマティス言明にまで日本人が喜んだTVや新聞報道には、恥ずかしくて顔を思わず覆ってしまった。

 なぜなら、上記3が示すように、尖閣諸島は日本が自前で防衛できる。それを米国にしてもらうというのは、日本人が三歳の幼児であると世界に宣言するようなもの。日本の男児たるものが選択すべきことではない。日本人は恥も矜持も失った。恥無き民族に堕落した。

 

 また、防衛簡単な尖閣すらも自力防衛できない、何でもかんでも対米依存する幼児化した日本国を、東南アジアの諸国が信頼できるだろうか。北朝鮮人・土井たか子の非武装主義が安倍晋三だけでなく、一億日本人の常態になってしまった。永年の、朝日新聞共産党社会党産経新聞・民族系の教宣によって、つまり、日本人はロシア工作員/北朝鮮人が垂れ流す情報に洗脳されて、精神における“ロシアの奴隷”“北朝鮮人への人格改造”をしてしまったのである。

 

 これほどの日本民族の矜持すら喪失した堕落と非国民化において、今日の日本人とは、もはや主権国家の国民とはほど遠い生物学的ヒトに成り下がってしまった。

(2月4日記)

 

関連エントリ

トランプ大統領は日本の好機

 

1、ハンチントン分断されるアメリカ』、集英社(原著2004年)。ハンチントン文明の衝突』、集英社(原著1996年)。米国分断論では、この他、ブキャナン『病むアメリカ 滅びゆく西洋』、成甲書房(原著2002年)、なども薦められる。

2、中川八洋地政学の論理』、徳間書店、第2章。

3、中川八洋『正統の憲法 バークの哲学』、中公叢書、第1章。

4、外務大臣になった外交官ベスト・フォーについて、私の個人的な順位付けは次表。

表5;外務大臣となった日本の外交官ベスト・フォーに、順位を付けたら? 

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5、麻田貞雄『両大戦間の日米関係 海軍と政策決定過程』(東京大学出版会)の第2章/第4章。

6、バルフォア外交論で、邦語の本が一冊もない。興味のある方には、Jason Tomes著“Balfour and Foreign Policy”などが入門書として適当かも知れない。

7、岡崎久彦幣原喜重郎とその時代』、PHP文庫、236頁。

8、鹿島守之助『日本外交史』第13巻、鹿島研究所出版会、148頁、150~1頁。

9、邦訳は、長谷川才次『絶たれたきずな 日英外交六十年』、時事通信社、1951年。

10、中川八洋尖閣防衛戦争論』、PHP研究所、64~72頁。

11、『朝日新聞』2017年2月4日付け。

 

 

 

 

 

附記;トランプ就任演説が暴いた“日本が無い”安倍晋三の国会演説

 せっかく両演説の比較を1月22日に書き上げたが、紙幅を越えたし、時宜を失った。割愛する。

 

 

 

 

 

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