シリーズ一覧はこちら → 俺様帝国
前回の記事はこちら → 俺様帝国<3> ~条件~
 
 
【登場人物】
 
A社 .. O社の持ち株会社
 朝倉さん  A社社長。実質的な黒幕
 
O社 .. 元同じ会社の村松君が興した会社
 村松君   O社社長。僕より先に辞めて会社を興した。
 大浜さん  取締役専務・経理担当
 金田君   会社を辞めた後、村松君の会社に入社。
 菊間さん  事務一般
 小泉さん  デザイナー
 桜井さん  デザイナー
 
B社 .. 出資会社の一つ
 小泉さん  B社代表取締役専務。後にB社の社長になる。
 
 
※2010年~2012年の出来事です。
※登場人物の名前、会社名などは全て仮名です。実際の名前とは異なります。
 
 
O社で仕事を始めて、1か月が過ぎた。
 
A社はO社の持ち株会社で、資金管理のみ行い、
会社運営や業務ら関する事には、一切関与していない。
お客さんと折衝の時のみ、朝倉さんが出てくる。
 
という説明だったと思うが、どうやら違うようだ。
 
O社の代表取締役社長は、村松君ではあるけど、彼は“お飾り”で、
実質的に取り仕切っているのは朝倉さん。
村松君は、殆ど権限が持たされていない様子。
 

権限的には、普通の会社で言うと、主任か、精々係長レベル。

会社の経営に口を挟める係長..と言った感じ。
 
朝倉さんはワンマン社長。
ワシの言う事はすべて正しい。ワシについてくれば間違いないと、
口にこそ出さないものの、日々の様子が全てを物語っている。
 
 
何もかも朝倉さんに相談し、指示を仰ぎに行く村松君に、
「これで良いのか?」と聞いてみると..
 
 自分はまだ若く、社会や会社経営が分かっていないので、
 経験を積んでひとり立ち出来るようになるまでの間、
 朝倉さんが色々教えてくれる事になっている。
 
との事だった。
 
説明と実態が色々違うし、聞くと話が変わる..
O社は村松君の会社なのに、どうみても朝倉さんの会社状態。
 
胡散臭さがぬぐえない。
 
でも..
 
村松君もそれで納得している様なので、それはそれで良いのか..
 
 
モヤモヤしながら仕事をしていたある日、
朝倉さんが出勤して来るや否や
 
朝倉:
 急で悪いけど、出資者が会社を見に来るけん、
 ちょっと身の回りの片付けと、掃除をしてくれ。
 
と言い、僕と村松君が呼ばれた。
 
 
朝倉:
 うち、出資者が3人居るんですわ。
 3人ともワシの知り合いで、素性は確かな人達です。
 
その「素性」を聞くと、誰もが知っている大企業の、
一次下請け会社の経営者であったり、役員であったり..
 
しずれにせよ、みなさん大資産家だと言う。
 
朝倉:
 会社を興す時にですね、まずは村松君を、彼らに会わせたんですわ。
 彼らが、村松君の思いに賛同してくれて、出資が決まった訳です。
 
 ただ、村松君は経験が無いから、いきなり大きなお金を渡すと、
 失敗する可能性があるのを心配して、ワシが持ち株会社を設立して、
 資金を管理しよるんですわ。
 
僕:
 そうなんですね。
 
村松:
 俺も経営は素人なので、色々分からない事が多いんですよね。
 そこで朝倉さんに頼んで、会長になってもらって、
 いろいろと教えてもらっているんですよ。
 
朝倉:
 そう言う事なんです。
 
何の話かと思えば、僕が村松君に、個人的に聞いた疑問の説明か。
となると、村松君に対する認識を変えないといけない。
彼と話す時は、朝倉さんと話すつもりで話さないと、色々危険だ..
 
朝倉:
 で、人を採用する事に関しては、出資者の許可を得ないといけなくてですね。
 先日、出資者に うずらさんの話をしたら、ぜひ会いたい言い始めましてね、
 それで急遽、今日来る事になったんですわ。
 
採用って言わなかったっけ?
3か月後に正社員と約束しなかったっけ?
そもそもこの会社は、株主総会しないと、人ひとり採用できないの?
 
何か色々と話が違う。
 
朝倉:
 ワシ、これから迎えに行くけん、連れてきたら うずらさんもこっちで
 話聞いて下さいや。
 
僕:
 わかりました。
 
 
数時間後..
 
朝倉さんが、出資者2人を連れて戻ってきた。
ひとりは都合が悪くなって、来れなかったらしい。
 
ひとりは見た目は普通の人で、落ち着きがある人。
 
もうひとりは、遊びに来ました!みたいなラフな格好の人。
例えて言うなら、親の威光で取締役に座っている、ボンクラ息子みたいな感じ。
彼の本日のいで立ちは、派手なプリントシャツに短パン、サンダル履き。
真っ黒のサングラスに真っ赤なキャップ..
南の島にバカンスに来たの?とでも言わんがばかりの格好で、
とても、会社の視察や面談に来る格好じゃないように思える。
 
そんな彼らに、朝倉さんも頭が上がらないようで、常に平身低頭。
いつもの傍若無人ぶりは、見る影もない。
 
 
A社側で色々話を聞く。
 
ボンクラ息子(仮)の方は、自分の武勇伝を延々と語り、
立ったり座ったり、窓際に行って外を眺めたり、落ち着きがない。
挙句には
 
 カネは幾らでも出すから、早く利益を出してくれ。
 退屈な話はもう良いから、早くゴルフに行こう!
 
と言い出す始末で、正直結構うるさい。
 
もうひとりの、落ち着きのある人..
B社専務の小泉さん。
 
小泉さんは、村松君と朝倉さんから、今の会社の経営状態の話を聞き、
次までに帳簿を出すようにと、朝倉さんに指示したり、仕事をしに来た
という感じが、しっかり受け取れる。
 
小泉さんは、僕とも色々話してくれ、会話の最後には、
 
小泉:
 まだ立ち上げて間もない若い会社ですけど、
 彼らの助けになってやって下さい。
 よろしくお願いします。
 
と言われた。
 
会話をしていてもよく分かるけど、この人は信用しても良さそうな感じ。
 
 
出資者の二人の話を聞いていて、新たな疑問が出てきた。
 
ボンクラ息子(仮)の話しでは、会社設立時に3人の出資者が
1人500万ずつ出資したと言っていた。
 
会社の資本金は、1010万
 
この半端な10万円は、村松君が小泉さんに言われて出したもの。
 
 起業する本人が、全然お金を出さないのは良くない。
 自覚を持つ意味でも、出せる限りのお金は出すべきだ。
 
と言われて、なけなしの10万円を資本金に入れたらしい。
 
残り500万は..A社の開業資金?
朝倉さん本人は、O社に出資はしてない?
 
聞いていた話と、少しずつ食い違っているのが気になる。
それに、帳簿がすぐに出てこないのも気になる。
 
 
話しが終わり、ボンクラ息子(仮)は、朝倉さんと共にゴルフへ。
小泉さんは仕事があるからと、そのまま空港に向かった。
 

まぁ..

 

色々と気になる所はあるけど、前の会社と違って、

“仕事”は回せている様だから、売り上げが上がっている間は

少なくとも給料は大丈夫..かな?

 

 
続く
 
 
アメブロおまかせ広告