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前回の記事はこちら → 沈みゆく船<3> ~刺客?~
 
 
【登場人物】
 土井さん  社長
 三島さん  専務
 片山さん  部長・元某大手通信会社部長
 宮川君   営業マンからの転職
 畑野君   弱電技術者からの転職
 小林君   自宅の商店のお手伝いからの転職
 金田君   奥さんの実家稼業からの転職
 藤原君   引きこもりからの脱出
 
会社弁護士
 松野さん  会社の顧問弁護士
 
M社 .. N社案件の窓口になってくれている会社。
 宇和さん  M社部長
 
 
※2009年~2010年の出来事です。
※登場人物の名前、会社名などは全て仮名です。実際の名前とは異なります。
 
 
何度も弁護士と交渉を重ねるものの、社長は頑なに、
支払い計画書を出す事を拒否し続けた。
 
理由はふたつ。
 
 不履行になり裁判になる事を恐れている
 僕の言いなりになるのがイヤだと言う、個人的感情
 
子供じゃないんだから..
 
交渉は、どこまでも平行線。
 
僕:
 不履行にならないように、払ってもらえたら済む話かと思いますし、
 個人的感情を表に出されても困ります。
 
松野:
 それはそうなんですけどね。
 そもそも、書面で出す事自体が嫌だと言っています。
 録音しない事を条件に、口頭なら良いと言っていますが..
 
社長は、逃げる気満々のようにしか思えない。
 
僕:
 口頭だと、言った言わないになって、ズルズル延びる可能性がありますよね。
 
松野:
 そうですね。
 
僕:
 止むを得ませんね。
 訴状の準備は出来ているので、裁判ですかね..
 
松野:
 通常裁判ですか?
 
僕:
 少額訴訟です。
 
松野:
 ちょっと待ってください。
 
しばらくの沈黙の後、いきなりフレンドリーに話し始める。
 
松野:
 実はですね..
 私、もう随分と顧問料を払ってもらってないんですよ。
 それに、今回の費用も、払ってもらえないと思っています。
 
と言って、笑う松野さん。
 
松野:
 まぁ、私は他にも仕事があるので、元御社からお金が入らなくても
 困りはしないのですが、ただ、私や会社の名前に傷が入るのは困るんですよ。
 今後の仕事に影響が出ますから、それはどうしても避けたいんです。
 
僕:
 はぁ..
 
松野:
 どうでしょう。
 私を信用して頂けませんでしょうか。
 
 会社とは、私が口頭で支払い計画を相談します。
 その内容を、メールで うずらさんに送ります。
 
 最近はメールでも、裁判の証拠になり得ますし、
 もし不履行になった時に、私に対して、責任追及や損害賠償を
 起す事もできます。
 
 弁護士が契約不履行となると、事務所の名前にも傷が付きますし、
 私個人の名前にも傷が付く事になるので、それは非常に困るんです。
 
 そうならない為に、私が必ず支払わせますので、
 ここは私を信用して頂けませんか?
 
 
実際..
 
松野さんからしてみると、どちらに転んでも、痛くもかゆくも無いんだろうな。
 
給料未払いの裁判なんて、会社側は基本的に勝てないし、
松野さんが僕に「支払わせる」と約束した事に関して、
不履行が発生したとしても、大した事ではないはず。
 
ただ僕も、ずるずる引っ張るのもイヤだったし、
社長は、こうなると絶対に譲らないのも分かっていたし、
“あの社長”相手に交渉して、落とし所を探ってくれている事は、
本当に助かるし頭が下がる。
 
松野さんの顔を立てるつもりで、提案に乗る事にした。
 
なんとなく、向こうのペースで事が進んでいるようで、
正直面白くないけど、お金払ってくれたらそれでいい。
 
あんな訳の分からない人とは、さっさと手を切りたい。
 
僕:
 わかりました。
 では、そこまで譲る代りにお願いがあります。
 
松野:
 なんでしょう?
 
僕:
 計画を出してもらっても、その通りにならない月が、必ず出ると思っています。
 今の会社の状態だと、計画に変更が出るのは、止むを得ないと考えています。
 
松野:
 そこまでご理解頂けて、助かります。
 
僕:
 でも、「今月は払えません」は無いようにしてください。
 厳しい月でも、予定していた金額に、最大限近い金額で、
 お支払い頂けるとお約束して頂けますか?
 
松野:
 わかりました。
 変更が出る時は事前に連絡して、改めて支払い計画を相談してお出しします。
 
僕:
 おねがいします。
 さぁ..あの社長が「うん」と言いますかねぇ..
 
松野:
 こんなに譲って頂けたら、会社も了承すると思いますし、
 私が必ず説得します。
 
僕:
 よろしくお願いします。
 もしこれで会社側が拒否したり、不履行になった場合は、
 そのまま裁判に持ち込みます。
 
松野:
 わかりました。
 その場合は、止むを得ないと思います。
 その事も含めて、社長を説得します。
 
僕:
 よろしくお願いします。
 
 
しばらく雑談。
 
顧問料は、事務所移転になる少し前から払われてなく、
顧問契約も解除になっているので、本来は、請け負う義務はないらしい。
 
社長との関係も薄く、助ける義理もないけど、内容が給料未払いで、

払う気が無さそうだったので、お金にならない事を承知で、

会社の依頼を引き受けてくれたとの事。

 
なんだ..
松野さん、良い人じゃん。
 
僕:
 まだ残っている社員も居るんですよねぇ..
 
松野:
 そうですね。
 でも彼らは、今はどうしようもないですね。
 うずらさんのように、行動を起してもらえると、私も動けるんですけど..
 
僕:
 そうですよね。
 まぁ、彼らにも話す事は全て話したので、自分でなんとかするでしょう。
 
松野:
 そう願いたいですね。
 
松野さんとの会話を終えた。
 
 
数日後..
 
松野さんからメールが届いた。
 
 未払金を6回に分けて支払う事
 各月の支払予定金額
 計画に変更が生じる場合でも、最大限払える額を支払う事
 変更が発生する場合は、事前に連絡する
 
と言った事が書かれてありました。
 
その日、松野さんから電話があり、メールの内容の説明をして頂いた。
 
松野:
 恐らく返済は大丈夫だと思いますが、
 もし万一、入金が無かったり、予定金額と違っていれば、
 私に知らせてください。
 
僕:
 分かりました。
 よろしくお願いします。
 
 
さて、無事に支払ってもらえるかな。
きっと6回では済まないたけうけど..
 
 
続く
 
 
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