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前回の記事はこちら → 沈みゆく船<2> ~喧嘩だ喧嘩!~
 
 
【登場人物】
 土井さん  社長
 三島さん  専務
 片山さん  部長・元某大手通信会社部長
 宮川君   営業マンからの転職
 畑野君   弱電技術者からの転職
 小林君   自宅の商店のお手伝いからの転職
 金田君   奥さんの実家稼業からの転職
 藤原君   引きこもりからの脱出
 
会社弁護士
 松野さん  会社の顧問弁護士
 
M社 .. N社案件の窓口になってくれている会社。
 宇和さん  M社部長
 
 
※2009年~2010年の出来事です。
※登場人物の名前、会社名などは全て仮名です。実際の名前とは異なります。
 
 
社長に「出る所に出る」と言われた。
 
え?ぼく、訴えられちゃうの?
もしかして、100%負ける喧嘩を僕に売るの?
それとも、“お願いだから減額してください”とか、言われるのかな?
 
 
さて、こちらも、支払い督促なり、訴訟の準備を進めねば。
 
在職中、給料未払いが3か月続いたけど、この期間中、
年金や社会保険、雇用保険や税金類..
この辺りは、全て払ってくれている確認は取れている。
 
要は、手取り分を貰えてないだけ。
 

このおかげと、安月給が幸いして、

延滞損害金を諦めれば、少額訴訟の範囲にギリギリ収まる。

 
 
問題は、いつ、何を差し押さえるか..
これは、こちらで考える必要があるらしい。
 
差し押さえ口座を伝えても、差し押さえ当日にお金が無ければ、それでおしまい。
空振りすると、泣き寝入りになる可能性もある。
物品の差し押さえでも良いけど、会社にお金になる物は、何もない
 

この辺りの事は、在職中に色々と調べてある。

 
 

何を差し押さえるか..

 
 解雇された内海君がやっていた仕事
 
この仕事の支払いは、4期に渡って支払われる事になっていて、
最後の支払い分が残っているハズ。
 
本来は、内海君が「自分の仕事の売り上げ」で差し押さえられる物ではあるけど、
内海君は既に会社に居らず、彼への未払い賃金は発生していない..
 
この、内海君の仕事の“最後の支払い分”を差し押さえようと考えている。
 
 
その支払日と、入金口座は把握している。
 
相手は大きな会社なので、入金口座の変更は、簡単にはできないはず。
そして、前倒しでの入金も認めない会社。
振り込まれる金額は、僕の未払い金には、十分な金額。
 
差し押さえに関しては、振り込む前に差し押さえても良いし、
裁判前に仮差押えして、振り込みを止めてもらっても良いかと
考えたけど、お客さんに迷惑をかける訳にもいかず..
 
悩んだ結果、会社の口座を差し押さえようと考えている。
 
会社の口座のお金を差し押さえるのなら、スピードが勝負。
ズルズル引き延ばされると、別の事でお金が使われる可能性があるので、
入金日に、仮差押えしてもいいかな。
 
 
裁判所から支払い督促を掛けて、会社が素直に従うか、
一切無視して支払い期限を過ぎれば問題ないけど、
異議申し立てをされると、通常裁判に移る可能性もあって、
ちょっと面倒。
 
じゃあ、少額訴訟かな!
 
1日で結審するし、弁護士なしでもなんとかなりそうだし。
 
 
翌日、簡易裁判所に行き、説明を聞く。
ついでに、訴状の書式も貰って帰った。
 
さて準備!
色々と調べ物をしていると、僕の電話が鳴った。
 
知らない番号。
電話を取る。
 
松野:
 私、株式会社〇〇の顧問弁護士をしています、松野と申します。
 社長から未払い賃金の件で依頼を受け、私が担当する事になりました。
 
え?弁護士立てるの?直接対決しないの?
 
弁護士が出てくるとは、正直思ってなかった。
弁護士費用は払えないだろうと、高を括っていた。
 
落ち着け自分。
 
弁護士が出てきた所で、未払金が0になる訳ではない。
冷静に、支払い交渉するのみ。
 
 
実はこの弁護士..
 
ずっと以前、社長が自慢げに話していたので、気になって調べた事がある。
 
この業界では有名な、法律事務所の所長さん。
この人自身、この業界では結構な有名人。
 
顧問料、もの凄く高いんだろうけど、払えてるの?
今回も弁護士費用掛かるだろうけど、払えるの?
 
ま、払うのは僕じゃないから良いけど。
 
 
穏やかに話を切り出す松野さん。
 
松野:
 この度は、会社がご迷惑をお掛けして、申し訳ございません。
 100%会社の責任で、会社には支払い義務があります。
 
 社長は絶対払わないと言って、うずらさんに諦めさせるよう
 言われているのですが、そう言う訳には参りません。
 私が確実に払わせますので、その点はご安心ください。
 
僕:
 わかりました。
 よろしくお願いします。
 
松野:
 まず最初に、会社は裁判になる事を望んでいません。
 裁判になると、お互い大変で、うずらさんにも負担が掛かります。
 お互いの為にも、裁判を避けるのが良い選択だと思いますが、如何でしょうか。
 
僕:
 それは、これからのお話と、支払い次第です。
 
松野:
 わかりました。
 
松野:
 では、支払いに当たってですが、会社の財務状況を確認すると、
 一括でお支払いするのは困難です。
 入金予定もありますが、会社の必要経費や他の社員の利益も考えると、
 その入金の大半を、うずらさんにお支払いするのは、困難かと考えます。
 
僕:
 はい。
 
松野:
 そこで提案ですが、分割支払いに応じて頂けませんでしょうか。
 
僕:
 それは、社長か三島さんが言ってるのですか?
 
松野:
 いいえ。
 社長は私に「諦めさせろ」と言うくらいですので、
 今の段階で、会社は1円も払うつもりは無いと思われます。
 
笑う松野さん。
 
松野:
 分割払いは、今の所は私の一存です。
 うずらさんが応じて下されば、私から会社に
  「うずらさんが提案してくれた」
 と持ち掛けます。
 
 軟化した態度を見せれば、社長も妥協してくるかも知れません。
 なんとか、落とし所を探っていきましょう。
 
確かにその通りではあるけど、あの人がそう簡単に軟化するかな..
でも、その前に、
 
僕:
 入金が無ければ、分割払いもできないんじゃないですか?
 
松野:
 そうですね。
 うずらさんや、社員の皆さんはご存知ないかも知れませんね。
 実は、大した額ではないのですが、レンタルサーバー代で、
 月々の入金があります。
 
 とても社員の給料まで賄える額ではないのですが、
 ちょっとした金額ですので、そこから捻出する事が可能です。
 
レンタルサーバー..
 
僕が入社した当時、事務所にサーバーが並んでいて、
レンタルWebサーバーを運用していたのは知っていた。
 
お客さんは、業者、個人、政治家など多岐に渡り、
ちょっとした契約数になっていると聞いていた。
 
事務所移転の時以降、サーバーを見なくなったので、
やめた物とばかり思っていた。
 
僕:
 わかりました。
 分割払いに応じるのであれば、お願いがあります。
 社印付きで、支払い計画書を出してください。
 その計画書を見てから考えます。
 
松野:
 わかりました。会社と話してみます。
 最長期間も決めた方が良いと思いますが、どのくらいまで可能ですか?
 
僕:
 短ければ短い方が良いのですが、できれば3か月。
 長くて最大6か月まで..ですかね。
 
松野:
 そうですよね。
 月々100円や1000円ずつ、だらだら返されても困りますもんね。
 分かりました。これで会社と話をします。
 ご理解頂きありがとうございます。
 また後日、お電話差し上げますので、よろしくお願いします。
 
僕:
 よろしくお願いします。
 
 
少額訴訟で、一気に回収は難しくなったけど、
レンタルサーバーを運用していたのは、朗報だな..
 
あくまで、未払い賃金を取り返すのが目的。
社長を苦しめて、会社を追い込んでも何もならない。
 
でも社長は、僕に少しずつでもお金を払わないといけなく、
支払いが終わるまでの間、社長は僕の事を思い出し、
心中掻き毟られる思いをする事になる..
 
その社長の思いを考えると、在職中に僕が味わった屈辱は、
未払金の支払い完了で、水に流そう。
 
 
あとは交渉がうまく行って、きっちり支払われる事を祈るのみ。
 
 
続く
 
 
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