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【登場人物】
自社
 土井さん  社長
 三島さん  専務
 新宮さん  僕より随分先に入社していた、同世代女性
 内海君   同期入社の同僚
 
N社
 重信さん  グループマネージャー
 川内さん  マネージャー
 松前さん  主任
 小松さん  メンバー
 北条さん  別社からの派遣社員
 
 
※2006年~2009年の出来事です。
※登場人物の名前、会社名などは全て仮名です。実際の名前とは異なります。
 
 
中途採用で入社したばかりの、どこの馬の骨とも知れない僕に、
いきなり、炎上したプロジェクトの火を消して、終息させろとのお達し。
正気ですか?
 
僕:
 具体的には何をするのでしょうか。
 
社長:
 Linuxのドライバー開発よ。本読んでわかった?
 
僕:
 さっぱりです(笑)
 
社長:
 だろうね。
 でもな、先方に行ってからは、何があっても、
  ・わかりません
  ・未経験です
  ・できません、自信がありません
 これらは絶対言うなよ?
 
へ?
 
社長:
 「昔少しだけ触った事があるけど、ブランク長いので
 早く追いつけるように努力します」言うとけ。
 
僕:
 え?全く触った事無いですよ?
 
社長:
 ブランク長い言うとけば、1か月くらいは大目に見てくれるけん、
 その間に覚えたらええ。
 あとな、2年ほどウチに居った事にしとけよ。
 
そんな無茶苦茶な..
 
僕:
 わかりました。
 
社長:
 あとな、新宮さん言う女の子が先に入っとるけん、助けてやってくれ。
 
先発隊がいるのは助かるけど、助けてやってくれ?
助けてもらうのは、僕の方では??
 
 
社長の話はそれだけ。
不安しかない状態で、当日を迎えました。
 
 
帰りが遅くなる事が予測されるので、駐車場を手配してやると
言ってくれていたのですが、契約が間に合わなかったとの事で、
当面の間は電車通勤。
 
駅から職場までは近いけど、最寄駅から自宅までが遠い。
自転車を30分ほど漕いで駅まで行って、電車に乗り換え約15分。
電車を降りたら、徒歩約5分。
 
 
着いた所は、大きな近代的なビル。
1階にコンビニまで入っている。
さすが天下のN社!
 
 
ぱっと見た所、1階はコンビニとATMと、開放的なエレベーターホール。
ふと上を見ると、2階を歩いている人が見える。
エレベーターの前には、内線電話が1台のみ。
会社の受け付けは6階だとか..
 
すげー!
 
すっかり “おのぼりさん” 状態の僕。
 
出入りする社員さん?は皆私服で、首からIDカードをぶら下げている。
もの凄く仕事のできる、都会のオシャレエリート社員にしか見えない!
 
 
社長と合流。
エレベーターに乗り、担当部署のあるフロアに行く。
 

出入口はロックされているようで、みんな機械にIDカードをかざして開錠し、

入室している..

 
すげー!
 
今までは、お客さん先で4桁の暗証番号で開錠するドアはあったけど、
こんな最先端?な事務所は、テレビでしか見た事ない!
 
しばらく待っていると、中から人が迎えに来てくれ、
ガラス張りのカッコイイ会議室に通された。
 
ガラス張りの会議室には、会議机とオシャレな椅子。
パイプ椅子じゃないの!?
でっかいテレビまであるし!!
 
えー!
 
なに!?
 
ぼく、こんなカッコいい所で仕事するの?
都会のカッコいい技術者の仲間入り!?!?
 
いまにも踊り出しそうな胸を必死で抑え、
 
 え?こんなの、最近では普通ですよね?
 
みたいな顔をして待っていると、会議室に誰か入ってきました。
 
重信:
 グループマネージャーの重信です。
 
川内:
 マネージャーの川内です。
 
僕:
 うずらと申します。
 ちょうど名刺を切らしてまして、申し訳ございません。
 
 
事前に提出し、おそらく社長が改ざんしたであろう、
履歴書と職務経歴書を見ながら、面談が始まる。
 
うちの会社の面接とは比較にならない、専門的な面談。
会話の流れと雰囲気で、
 
 こいつ、開発経験はあるけど、このOS素人だな
 きっとこの会社にも、入ったばかりなんだろうな
 
と、見抜かれているような気がするけど..
ふと横目で見た、我が社長は、面談の様子にご満悦の様子。
 
実は、面談に行く時点で、既に会社間では話は出来ていて、
僕が少々どんな回答しても、問題なかった事を知ったのは、
随分経ってからの事ですが..
 
 
重信:
 じゃあ、早速..
 うずら君の席は準備できてる?
 
川内:
 はい。新宮さんの隣を空けました。
 
重信:
 ありがとう。じゃあ早速、みんなに紹介しようか。
 そしたら、土井さんはこのあたりで..
 
社長:
 じゃあ、ワシは帰るけん、あとは頼んだよ。
 
 
右も左も分からない状態で置いて帰られると思うと、
あんな社長でも、少々心細い。
 
昼下がりに売られていく仔牛の気持ちが、
ほんの少し分かった気がしました。
 
 
その後、社長は退席、チームメンバーが呼ばれ、改めて自己紹介。
 
部署内に幾つかのチームがあり、それを纏めているのが、
グループマネージャーの重信さん。
 
僕が仕事をするチームのマネージャーが、川内さん。
 
主任の松前さん、
正社員で開発メンバーの小松さん、
他社から派遣できている、北条さん、
 
そして、同じ会社の新宮さん。
 
新宮:
 新宮です。ご無沙汰してます。
 
ああ、この人が新宮さんか。
多分社長から「初めて会ったと言うな」と言われてたんだろうな。
 
自己紹介の段階では、嫌な感じは全くない。
みんな良さそうな人で安心!
 
 
案内されるまま自席に行き、書類の記入や建物の案内、
自環境のセットアップで、この日は終えました。
 
 
この日は明るい内に、帰宅する事が出来ました。
そう「この日」は...