川越style「team R」花の作品 制作の現場に密着  | 「小江戸川越STYLE」

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「時が人を結ぶまち川越」
川越のヒト・コト・モノ、川越物語りメディア、小江戸川越STYLE。
川越の現場で様々なまちづくり活動にも従事しています。
「小江戸川越STYLE」代表:石川真

午後6時半、扉の向こうは静寂に支配されていた。

てきぱきとした仕事の音とやり取りする小さな言葉だけが聴こえてくる。

その場に居たみなが、椅子に座る一人の女性に意識を注ぎ、真剣な眼差しを向けていた。

一人はその女性の髪に、一人は女性の顔に、

それぞれの腕や技でモデルである女性に向き合う。

緊張感溢れる現場は、和気あいあいとしながらもどこか戦場のようなピリピリ感があり、

容易には近づけないようなオーラを放っている。

一枚の写真のために、ここまでするものなのか。。。

これが、質を追い求める作品作りの現場なのかと圧倒されます。






橋口さんがヘアを作り上げたモデルに、相曽さんがミスカンサスを入れ込んでいく。

「見てて楽しい!めっちゃいい感じ」
仕上がりを見守っていたメイク担当の宮中さんから思わず声が上がる。

「これ既に事前の打ち合わせから変わっていますからね」

橋口さんが手を動かしながら話す。

普段はデッサン通りの形に仕上がっていくことが多いそうですが、

この日は場の感覚で計画から離れ、また別の所に展開しているのだそう。



 

 

「今回の背景は何色でいくの??」須賀さんが話しかけると、

橋口さんが暗めがいいと返事をする。

須賀さんが壁に黒のバックペーパーを取り出し、セッティングに取り掛かっていった。

 

一体どんな一枚が出来上がるのでしょう。。。

 

 

作品が全て。

 

完成させ世に発表した作品が全てを内包し物語る。

ただ、そこに至る経緯、工程というのはなかなか窺い知れないもので、

また、それは直接作品には関係ないという声もあるかもしれませんが、

それでも、

作品作りの完成までの工程は楽しい。

作り上げようとする熱や人間ドラマが一つの作品で、

そちらに目を向けることで、作品の理解が深まったり、川越をより感じられたりするのではないか。

だからこそ、作品作りの工程にまた密着したいと思いました。


須賀昭夫さんをはじめたとした「team R」の面々は、

淡々と、そして着実に一人の女性を「作品」としてのモデルへと変身させていく。

完成まではもうしばらく時間を待ちましょう。

 

撮影現場となっているここ大正浪漫夢通りにある須賀さんの事務所は、

 

普段は撮影スタジオとしての使い方はしていませんが、この作品作りの時は別。

事務所に集まったメンバーによって、「team R」という名の作品作りが進められていく。。。

川越在住の写真家須賀昭夫さんは、

本業である写真撮影の合間を縫って自身の作品作り、発表にも意欲的で、

これまで様々なシリーズを世に送り出しています。

「須賀昭夫写真事務所」

http://akiosuga.com/

そのシリーズ作品の一つ、

「川越美人百景– coedo elegancies –」の撮影現場に密着したことは2015年10月に記事にしました。

川越のそれこそ川越中を舞台にし、女性モデルを配してギャップを生み出す作品は、

川越じゃないような絵になり、そして川越の人の心にこそ刺さる作品でした。

記事にもありますが、あの時の舞台がJR川越線の駅だった。

蔵造りの町並みや市街地のお店などももちろんですが、

笠幡駅、的場駅、西川越駅、南古谷駅といった駅を選ぶところがさすが。

場所の選択の川越人らしさ、場所をどう作品に生かすかという腕、

ヘアメイクアップしたモデルとのバランス、全てを高次元で結び、

誰も見たことのない、撮ったことのない絵に仕上がって、新たな川越を提示しました。



(「川越美人百景– coedo elegancies –」川越をもっと素敵にする

http://ameblo.jp/korokoro0105/entry-12078827934.html

 

また、これまでの川越美人百景シリーズでも、毎回その写真で川越を騒然とさせてきました。

 


(川越美人百景– coedo elegancies –Vol.03西武安比奈線より)


(川越美人百景– coedo elegancies –Vol.08ソコノワ 川越市南通町より)

 

綺麗に撮る人はたくさんいる。

 

しかし、撮ることで新しい見方や価値を提示するというところまでできる人、

つまりアートを発信できる人というのはそうそういない。

その作品は、(本人の意図とは違うかもしれませんが)

結果的に川越の新たな見方を提示するような切り口で川越を見せ、

川越の人こそ、「こんな川越があったなんて」と視野を広げられるような感覚になる。

しかもどっぷりな川越人こそ、須賀さんの作品に思わず唸らされるのだった。

川越の人は川越愛に溢れ、川越のことはディープに分かっていても、

目に見える川越だけでなく、それを組み合わせ入れ替え、見せ方を変えることで

普段目にしているものの価値を改めて再発見する、

そういうことができるのがアートならではで、絶妙なバランスで川越に立っているのが須賀さん。

その見せ方をできるのは、半端な川越人ではできないこと。

須賀さん自身、川越の仲町にある「泰玉スガ人形店」の家に生まれ、

「川越」を全身に浸りながら育ってきたからこそ、川越の感覚が染み付いていて、

そこにアートを交わらせることで、この川越を提示できているんです。

だから、川越人を納得させることのできる作品であるし、こういう人でないと川越人は納得しない。

 

作品シリーズは川越美人百景が2ヶ月に一回、team Rも2ヶ月に一回のペースで、

 

他には、「川越のおっさん」シリーズも定期的に発表していて、新作をめまぐるしく発表し続けている。

新たに手がけたいシリーズ企画も胸に秘めているようで、

こんなに意欲的、貪欲な写真家は川越には他にいない。

(「川越のおっさん」シリーズより 

akiosuga_photography http://akiosuga.com/portfolio/men-kawagoe/

 

ちなみに、須賀さんの仕事の方の一端を紹介するとしたら、

 

2015年川越まつりのポスターは、須賀さんの写真が使われています。

 

川越美人百景は、川越の通町にある「HAIR&MAKE OPSIS」の山田さんとタッグを組んだ作品作りで、

 

街に出て撮ることで川越をより取り込んだ作品になっていて、

また、野外ということで太陽光線を計算した作りになっています。

team Rは完全に室内撮影で、街とは関係ないところにあり、

光のセッティングも自分で考え作ることで、より自分たちの作品というものを追い求めることができる。

事務所のスペースの関係で「光を作り込むほどのセッティングはできない」と須賀さんは言いつつも、

そこは自分でライトを作るなどして調整している。

・・・というように、それぞれの作品シリーズには違いがある。

いや、team Rが純粋な作品作りといっても、

やはり川越とは縁が切れないことは本人も分かっている。

team Rが生まれた経緯自体が、地元川越の縁があってこそで、

皆さん気になっているであろう、team RのRというのは、

何を隠そう連雀町のRなのです。

なぜ連雀町という町内から作品のシリーズ名をとっているのか??

それは、ここに集まった3人が連雀町という町内で繋がっているからで、

須賀さんは連雀町に住んでいて、この事務所を構えているのも連雀町、

昔から親友がたくさんいる地域でもある。

その一人橋口さんは、小さい頃から連雀町に住んでいて、

現在は川越の菅原町にある「haircreate plaju」の代表を務めている。

その一人相曽さんは、連雀町交差点近くの花屋「花鐵」さんの人であり、

3人は小さい頃から知っている関係だったり、10代の頃から知っている関係で、

作品タイトルであると同時に、切っても切れない連雀町の縁を表すのが、team Rだった。

 

ちなみに連雀町のことは2015年川越まつりで密着したので、

 

R=連雀町と聞いた時から親近感を覚えていました。

 

 



(2015年川越まつりより)

3人は昔から連雀町で繋がっている仲間で、勝手知ったる関係。

今それぞれの分野でアーティストとして活躍して、刺激を受け合っている関係でもある。

「この3人で作品を作りたかった」

それが、team Rの始まりだった。

一人で制作する楽しさもあるが、みんなで集まって作る楽しさはそれに勝る。

須賀さんが「地元の3人で一緒に作品を作ろう」と声をかけ、

3人の意識がピタリと揃ったタイミングですぐに作品作りの計画を立てていった。

第一作目のteam Rは2014年9月に発表。

二回目の撮影から、team Rにメイク担当として宮中さんが加わりました。

team Rの写真は、一つの作品でありながら、

ヘアの橋口さん、

花の相曽さん、

メイクの宮中さん、

写真の須賀さん、4人それぞれが作品を作り調和した合作であるとも言えた。

(「team R」より akiosuga_photography」http://akiosuga.com/portfolio/team-r/


(「team R」より akiosuga_photography」http://akiosuga.com/portfolio/team-r/


(「team R」より akiosuga_photography」http://akiosuga.com/portfolio/team-r/

 

集まっている人たちにとっては、これはあくまで仕事とは違う時間なのです。

 

仕事が終わった後や、仕事がない日に合わせてこうして作品作りの日を設けている。

しかも、短時間で終わるというものではなく、

日中のplajuでのヘアメイクだけでも時間はかかり、

夕方からモデルと共に事務所に来てからさらに作り込み、

花を合わせて、

いよいよ撮影に臨む。

それを毎回一度に2パターン撮っているんです。

だから、終わる頃には深夜に及ぶことも茶飯事。

これを、一度や二度ではなく、定期的なペースで続けてきて、今回で8回目にもなっていた。

ここまでの時間と手間をかけ、一つの作品を作り上げるという情熱はどこからくるのでしょう。

準備に掛かるみなの様子を見ていると、嫌々関わっているのでなく、

本当に楽しそうに作り上げているのが伝わってくる。

「ここはこうしたい」

「こうしたらいいんじゃないか」

お互いの感性をぶつけ合い、ぶつけ合うごとに洗練され、より質が高まっていく。

みんなで作ることを楽しんでいるようで、創造の楽しさを分かち合っているようだった。

 

事務所では、着々とモデルのセットが出来上がっていた。

 

「もう頭振らないでね」

橋口さんがモデルに語りかけ、相曽さんがミスカンサスを次々に髪に入れ込んでいく。

 

 


「前回の作品が直線的だったので、今回は曲線でいこうというイメージ」

と今回の狙いを話す。

ミスカンサスの一本一本の向き、角度、形、見え方、髪とのバランス、

全てに神経を行き届かせ、デザインしていく。

一本の向きが納得できないととことん探って、これだという形になるまで手を動かしていった。

「ここもう少し曲線にしたい」

ほんの少しの違いのように見えて、

でもそこにこだわらないと全体の見え方が変わってしまう。繊細な仕事が続く。

「自分はもう大丈夫です」

花を担当した相曽さんが、ミスカンサスで作品を作り上げた。

続いてメイクの宮中さんの出番、曲線的に合わせてイメージを変えていった。

そして傍らでは、須賀さんが試写しながら撮影のイメージを膨らませていて、

みなが想像力をフル回転させている様子に、わくわくさせられる感覚になる。

メイクの出来栄えを鏡で見たモデルさんが、

「かっこいい!顔がアートだ」と声を上げた。

自分が自分でないみたい。不思議な表情をしていた。

モデルさんと宮中さんが話しをしている最中も、

後ろで髪に向かう橋口さんと相曽さんが、

「こここうしたらもっと立体感でるんじゃない」さらなるアイディアで展開させていった。

さらにその後ろでは、

「さあ、どういう風に撮るかな。。。」

須賀さんが、レフ板やライトなど機材を組み合わせてセッティングしていっているところだった。

光のセッティングがまた独特。

撮影の度に光の作り方は違っていて、毎回その時限りの作りというくらい。

今回のイメージは、

「コントラストを強くしたいけどあんまり暗くはしたくない」。

もうそこにあるものを全て使用するような勢いで、

これを置いて、いや、やっぱりこっちに置いてみよう、

機材を動かしながら微妙な光の調整していく様は、なんだか光の実験のよう。

作っている本人が、「これは一回しか作れないよ」というものだった。

試し撮りでその出来を見て、また光を調整していく。




 

セッティングが完成し、出来上がったモデルさんがバックペーパーの前に移動してカメラに相対した。

 

立った位置から橋口さんと宮中さんがまたヘアメイクを調整し、

須賀さんが睫毛の影の写りを考えて光を調整していく。

「それじゃあ、照明消すよ」

須賀さんがそう言うと、事務所内の蛍光灯が消され、辺りは真っ暗になる。

撮影のライトだけが室内に残り、

ライトに照らされ浮かび上がるのが、渾身の作品でもあるモデルだった。

長い時間をかけて、ようやくこの瞬間まで辿り着いた。作品作りはついに第四コーナーを回った。

「立つポーズはこれでいいの?」橋口さんが確認する。

「ちょっと一回こっち向いてもらっていい?」モデルがカメラを見つめる。

「首をそっちに向けてみて」

試し撮りを重ねていく須賀さんが、その一枚に「お、いいね!」と満足な言葉を発した。

写真を一同が確認し、おおお!と歓声を上げる。


ゴールが近づくとそれぞれの表情が引き締まり、言葉が重くなっていく、

集中力がさらに高まっていくのが伝わる。

さらに詰めて、橋口さんが「あそこ直線に見えちゃうんだけど曲線に見せたいな」と提案し、

最後の最後の微調整を加えていった。

「本番いくよ」

「OK!」

「OK!」

「OK!」

それぞれのアーティストがGOサインを出した。

須賀さんがファインダーを覗く、

「表情消せる?そうそうそう。首をもう少しそっちに向けて目をこっちに・・・」

team R4人の思いを乗せて、須賀がシャッターを切った。。。



(「team R」より akiosuga_photography」http://akiosuga.com/portfolio/team-r/

 

「OKだと思うけど大丈夫??」

撮った写真を周りのみんなに見せ確認する。OKですと頷く一同。

「お疲れ様!それじゃあ、電気点けて」

スイッチを入れられると辺りはまた明るく照らし出される。ここまでで午後9時。

ここから第2パターン目の作品作りに入っていった。

現場の熱は冷めるどころかさらに熱くなっていくようで、

一作目を撮って感じが掴めると、ここからが本番モードのような没入感が漂う。

橋口さんが髪をセットし直し、相曽さんが次の花を準備する。

二作目に用意した花は、バンダだった。






相曽さんが、多数用意した鮮やかなバンダを素早く髪に飾っていく。

「さて、次はどんなバックにするかな」須賀さんが撮影プランを練っていた。

何色がいいか橋口さんに尋ねると、黒っぽい色がいいんじゃないか?という話しになっていった。
それじゃあ、これかな、いや、こっちの方がと、アイディアを出し合う。

文字が書かれた板を見つけると、

「これ使うと面白いかも」

場のインスピレーションで思いも寄らない方向に展開していく。

光のセッティングも先ほどとはまるで違い、機材の位置を試行錯誤しながら、

次の作品のイメージに合う光を探っていく。

バンダを髪に飾りつけ、メイクもOKが出された。

 

 

 

 

 

照明が落とされると、セッティングされた舞台にモデルが立ち、カメラを見つめる。

 

「正面見て」試し撮りを始める須賀さん。

 

 

よし、これでいこうと決まると、一同の目つきが鋭くなる。

「手は下にぶらんとさせていいよ」

須賀さんがモデルにポーズを注文している間も、

周りの人たちの視線はずっとモデル一点に留まっている。

「顔を左にちょい向けて、目だけこっちに」

しばし沈黙の後、シャッターを切る音が室内に響く。

 

 


その一枚に「挑戦的な表情でいいよね」と一同確認し、

「もう一回いくよ」シャッターを切るごとに写真は深みを増していく。

「力抜いて、ほっぺたの力抜く感じで。背骨には力入れて、それで肩の力を抜く」

ああ、今のいいね!と須賀さんが声を上げた。

だんだんと求めるレベルに近づいていく。

撮った写真を周りに見せると、うんうん、かっこいい!と周りの人たちも納得の表情。

「それじゃあ、もう一回すーっと力抜いて・・・左足に体重乗せよう」

さあ、いよいよ本番というところで、

いや、やっぱり文字が入っていない真っ黒の背景の方がいいんじゃないか?という話しになり、

急きょ撮影をストップし、背景を変える。

「よし、いいかな。いくよ。左足に体重かけて。

カメラを睨みつけるように。カメラを見ながらカメラの先の遠くを見る感じで」

シャッターを切り続ける。

「口を気持ち開いてみようか。そう。背骨に力入れて。そうそうそう」

みながモデルに意識を集中させ、見守っている。

それは、須賀さんを介して4人でシャッターを切っているような感じだった。

そして、

team Rの最後のシャッター音が響いた。。。




(「team R」より akiosuga_photography」http://akiosuga.com/portfolio/team-r/

 

「OK!お疲れ様でした!!」

再び室内が明るく照らされると、

「お疲れ様!」「お疲れ様でした!」と拍手し、

一同達成感に包まれた充実した表情をしていた。

みんなで作り上げた作品、今回もいいものが出来たと完成を祝い合いました。

そして興奮冷めやらぬ一同は、この後打ち上げに繰り出していき、

気が付いたら日付が変わっていたのでした。。。

今回も熱過ぎるくらい熱い作品作りの現場でした。

須賀さんたちの作品作りに密着するのは本当に楽しい。

その様子を記事にすること自体が、

熱に触発され作品作りのような感覚になってアドレナリンが出てきます。

創造の楽しさ。

あの現場の熱に触れると、現場のそのままの熱を書き記したいと思わされる。

そこにもまた、創造の楽しさがあると実感しています。

来年また、いくつもの熱気溢れる作品作りの現場に向かいたいと思います。

 

この花シリーズの作品は、いつか本にしたいとみんな野望を抱いている。

 

作品を通して、新しい価値をここから発信しています。

 

「team R」
flower design: yuta aiso – hanatetsu
hair design: koichi hashiguchi – hair create plaju
makeup: akiko miyanaka – freelance hair & makeup artist
direction, photo: akio suga – akiosuga_photography

 

 

「須賀昭夫写真事務所 akiosuga_photography」

 

http://akiosuga.com/

 

「haircreate plaju」
埼玉県川越市菅原町6-1
http://www.plaju.com/

 

 

「花鐵」
川越市連雀町7-1

 

 

「宮中彰子」

 

在京キー局でタレントのメイキャップを中心に活躍中