この日にあるフルーツを訊ねると、
どれもカクテルにすると美味しそうなものばかりで迷います。
その中から興味を持ったのが、キウイ。
一体どんな一杯が出来上がるのでしょう。。。
田坂さんはグラスをそっと置き、流れるような所作でカクテル作りに取り掛かっていった。
中には皮を剥いた丸ごとのキウイが入れられる。
それを丁寧にすり下ろし潰すと果汁がジュワッとグラスの底に溜まっていきました。
ラム酒を注ぎ、グレープフルーツジュースで伸ばす。
さらにライムジュース、トニックウォーターを足していき、
最後に味をチェックし、
「どうぞ」
ボストンシェーカーで作ったキウイのカクテル、田坂さんが目の前に差し出す。
出来上がった一杯は、キウイの爽やかな酸味に甘みがプラスされて、
飲みやすい口あたりに仕上げられました。
一口一口丁寧に口に運び、新たなキウイの楽しみに浸っていました。
お酒とお酒を組み合わせて出来上がるカクテルは、
バーテンダーの腕の見せ所であり、想像力を駆使する作品でもある。
素材を感じながら、その想いをじっくりと噛み締めていました。
2015年1月にオープンしたBar Quesera(ケセラ)さん。
Queseraがあるのは川越駅からほど近く、
川越駅東口アトレとmodiに挟まれた道を東へ進み、
川越街道とぶつかる三番町交差点を越えてさらに進む。
交差点を過ぎ、一つ目の道を左折し、細い脇道に入っていくとすぐに右手に建物が見えます。
川越駅からだと歩いて7分ほど。
クレアモールの喧騒から離れ、静かな時間が流れている。
そこは、旧JACKPOTがあった場所で、あの雰囲気そのままが今に引き継がれています。
日が暮れるといよいよ煌き出すBarの世界。
日中何気なく通り過ぎていたあの建物に、
辺りが暗くなったのを合図に灯りが灯されると、
灯の色は人を惹き込むような強い力があり、
同時に未知の世界に入っていく時の奮い立つ勇気も求めているよう。
建物は20年以上経って、まさに枯れた美を魅せている。
扉は、本当なら木でできた単なる入口であるはずなのに、その重みはなんだろう。
たくさんの人の手で押された気軽さがある一方、
まるで、こちらとあちらの世界を分かつ境界標のような存在感で、
在るというよりそこに「居る」ような扉が待ち構えていた。
なによりこの扉がフィルターのようになっていて、
くぐり抜けて来た者はみなどこか共通するような感性の持ち主で、店内に一体感を生んでいるようだった。
その店内は、ある人は
「イギリスのストラッドフォード・アポン・エイボンのような雰囲気」と形容する独特な世界が広がっている。
古き良き英国の牧歌的な民家を思わせるアットホームな空間で、
木は枯れて磨かれ、まるでバイオリンのよう。
熟成された木が、心地よい音を空間に響かせているようでした。
今の川越は脇道に個人店が点在しているエリア「うらかわ」が人気ですが、
同じように落ち着き、質の高さというくくりでいえば、Barももちろん入ってくる。
カウンターでしっとりとお酒をいただく、Bar文化はもっと川越で広まっていいと思う。
Queseraさんはテーブルチャージはなく、
旬の果物を使ったカクテルやグラスシャンパンを楽しむことができるし、ボトルワインの用意もある。
一人でふらっとやって来る方も多いそうで、
この雰囲気がお客さん同士を仲良くさせることも多々ある。
■シングルモルト
グレンフィディック12年
グレンフィディック15年
ザ・グレンリベット12年
グレンモーレンジ10年
ザ・マッカラン12年
ボウモア12年
アードベッグ10年
カリラ12年
ラフロイグ10年
ラガブーリン16年
ハイランドパーク12年
タリスカー10年
■ブレンデッド
フェイマスグラウス
デュワーズ
バランタイン12年
ジョニーウォーカーブルーラベル
バランタイン30年
カナディアン&アイリッシュ
カナディアンクラブ
ジェムソン
カネマラ
■アメリカン
ヘンリーマッケンナ
I・Wハーパー ゴールドラベル
メーカーズマーク レッドトップ
ワイルドターキー8年
フォアローゼス ブラック
ブラントン
■ジャパニーズ
竹鶴ピュアモルト
イチローズモルト ホワイト
山崎12年
白州12年
■ブランデー
クルボアジェ ルージュ
レミーマルタン VSOP
ブラー グラン ソラージュ
スピリッツ
ビーフィーター
タンカレー
タンカレー No10
ベルヴェデール
アブソルート エリクス
グレイグース
バカルディ8年
ハバナ7年
ロンサカパ センテナリオ
クエルボ シルバー
クエルボ ゴールド
■カクテル
ギムレット
グレープ バイン
クイーンエリザベス
ジントニック
トムコリンズ
シンガポールスリング
バラライカ
スレッジ ハンマー
コスモポリタン
シーブリーズ
モスコミュール
ダイキリ
ネバダ
XYZ
キューバリバー
ボストンクーラー
マルガリータ
メキシコ ローズ
モッキンバード
エルディアブロ
マタドール
アレキサンダー
ジャック ローズ
サイドカー
グラス ホッパー
楊貴妃
スカーレット オハラ
ピニャ コラーダ
ロング・I・アイスティ
ラッフルズ スリング
■Champagne
ローランペリエ ブリュット
アンリオ スーヴェラン
ローランペリエ ブリュット ハーフ
二コラ フィアット ブリュット レゼルブ 500ml
■White Wine
セニョリオ デ オルガス
カザマッタ ビアンコ
ミシュー トゥレーヌ ソーヴィニョンブラン
クラウディー ベイ ソーヴィニョンブラン
レザルム ド ラグランジュ シャトー ラグランジュ
シャブリ プルミエクリュ ヴァイヨン ウィリアム フェーブル
■Red Wine
セニョリオ デ オルガス
カザマッタ ロッソ
アルマ
コヤム
レ マッキオーレ ボルゲリロッソ
モンソルド チェレット
レ オーメドック ド ラグランジュ
月替わりのマンスリーカクテルも人気で、
例えば10月は、「Autamn in KOEDO」。
『木々が紅く色づき始め、澄んだ空気に祭囃子の音が響き渡る。
そんな秋色に染まりゆく小江戸の町並みをカクテルに表現しました』
そして、Queseraの田坂さんは、お客さんの個人的なオーダーにも気さくに応えてくれ、
「今日の気分で」と頼まれれば、フルーティーでもすっきり目でもジャストなお酒を作ってくれる。
さらにQueseraさんといえば、代名詞的として人気になっているのが、
季節の旬の農産物を使ったカクテル。
今の寒い時期になれば、リンゴやいちご、
暖かくなってくればマンゴーやメロン、梨、巨峰などなど、
Queseraさんの魔法にかかれば、身近なフルーツや野菜が目の前で素敵な一杯に仕立てられます。
Queseraさんの個性が感じられる農産物シリーズを集中して頂こうと思い、
それが冒頭のキウイのカクテルでした。
続いて次の一杯もフルーツを頂こうと頼んだのが、柿。
柿のカクテル。。。想像できません。
柿は液体にすると味が出にくくなると田坂さんが話すように、難しい素材でもある。
出来上がり以上に、どのような工程で作られるのかという過程が見てみたい。
またグラスをセットすると、いざ目の前で制作が始まる。
グラスの中には柿が丸ごと入り、ウォッカを注ぐ。そこに炭酸水を入れて、
ブレンダーで柿をペースト状にしました。
ブレンダーを使うと炭酸が若干飛びますが、それを計算しての炭酸投入です。
これはドロッと果肉が残り、柿の食感が口の中に感じられる。
お酒なんだけど柿のジュースのようで、上品なお酒に仕立てられ、
見事としか言いようのない一杯でした。
旬の柿を新しい切り口で頂きながら、フードメニューを見ると、
絶品キャロットサラダ
ピクルス
ガーリックトースト
ポテトフライ
ソーセージ
ラタトゥイユ
今どきのナポリタン
Bar Snack
ミックスナッツ
スナイダース
ナチョス
ビーフジャーキー
ドライフルーツ
チョコレート
チーズ盛り合せ
フルーツを二杯頂いたところで、さらに農産物を深めていく。
フルーツの次は野菜をリクエストし、いくつかあった中から選択したのがカボチャ。
これも完成が想像できないもので楽しみな一杯。
「まずは第一弾です」田坂さんがそう言うと、
煮詰めてペーストにしたカボチャにホワイトカカオのお酒を注ぐ。
第一弾??
どういうことかと思っていたら、すぐに真相が判りました。
「ここからは第二弾です」
そのグラスの横にまた別の新たなグラスを置き、
そこには同じく煮詰めた黄色い実の部分のカボチャが入れられました。
ダークラムなどを入れ、ブレンダーでペーストにする。
二つのグラスには緑色と黄色のお酒が出来上がった。
その二色は・・・そうカボチャ。
最後に二つを一つのグラスに合わせて二色の層を作り、カボチャそのものを表現していました。
手間の掛かる工程を経て、カボチャのカクテルがここに完成。
最後にシナモンパウダーを振り掛けて、出来上がりました。
グラス内に黄色と緑色の二色の層。アートのようなカクテルとなりました。
上部はカボチャプリンのような甘みがあり、下部はチョコレートのような味わいで、
全体は呑むスイーツのような味。
二色が交じり合わないのが不思議でしたが、
それを保つために、氷の存在があるのだとこっそり教えてくれた。
野菜だと、他には焼き芋のカクテルも人気だったそうです。
もちろんこれらは、ノンアルコールでジュースとしても作ることができます。
フルーツに野菜に、次々に華麗に一杯を仕立てる田坂さん、
その様子は周りのお客さんに伝わり、いつの間にか一緒に盛り上がり、
ちょっとした難題を田坂さんに出してみようということになった。
これは無理だろうと出したお題が、ワサビ。
「ワサビでカクテルを」という難問をつきつけてみました。
急なお題にひるむ様子も見せず、
さっとワサビを目の前ですり下ろし始める。
見事に辛味を美味しい一杯に仕上げてくれました。
Queseraの田坂さんは、川越の仙波町出身。
バーテンダーとしてのキャリアをホテルからスタートしました。
浦和ロイヤルパインズホテルで働いたのち、
ザ・リッツ・カールトン東京オープニングスタッフとして携わり、
さらに専門性を高めようと銀座MASQチーフバーテンダーを務めていました。
「スタンダードから旬の果物を使ったカクテルなど、
お好みに合わせてお作り致しますので、是非お試し下さい」
現在は日本ホテルバーメンズ協会認定シニアバーテンダーも務めています。
田坂さんは、お店を離れれば川越まつりに深く関わる一面もあり、
Queseraには仙波町を含め、川越まつりに関わる人が集まって、祭り談義に花が咲くこともある。
(仙波町 仙波二郎安家の山車)
そしてBarとして珍しいことですが、 Queseraさんは2015年12月13日に蓮馨寺で開催された
川越Farmer’s Marketに出店しました。Barが川越のイベントに出店するなんて、異例中の異例。
川越Farmer’s Marketでは、
川越産農産物を使った料理を提供する飲食店の出店はもちろんありますが、
いや食だけでなく、お酒にも地域の農産物を積極的に採り入れたいと考えるお店はあり、
Queseraさんはまさにそういうお店。
季節の農産物を大事にするQueseraさんは川越Farmer’s Marketにぴったりな出店でもありました。
同じく出店する「川越いちご園すじの」さんとコラボし、
Quseraさんが筋野さんのいちごを使って
いちごカクテルのデモンストレーションを実施するという内容となっていた。。
(「川越いちご園すじの」川越の貴重で極上のイチゴとイチゴ狩り
http://ameblo.jp/korokoro0105/entry-11992214560.html
筋野さんの今シーズンのいちご狩りは、2016年1月からを予定しているそう)
デモンストレーションで作ったカクテルを来場者に試飲して頂こうというアイディアは、
主催側からは絶対出ないものだったと思います。
いろんな方がいろんなアイディアを寄せてくれて、楽しく広がっていくことに胸が踊る。
きっかけを作ってくれたのは、なるかわ農園の鳴河さん。
鳴河さんがQueseraに来た時に田坂さんと話しが盛り上がり、繋いでくれたのでした。
(里芋の収穫真っ只中の鳴河さん)
以前には、鳴河さんの牛蒡を使ったカクテルもQueseraで提供していました。
Queseraさんが川越Farmer’s Marketでデモンストレーションを実施したのが13時に筋野さんブースにて。
正装した田坂さんが蓮馨寺にやって来ると、そこはまさにBar空間が創出されました。
始まるとすぐに長蛇の列ができ、たくさんの目が集まる中、
田坂さんが見事にシェーカーを振る。
筋野さんのいちごを使ってラム酒を合わせたカクテルは、いちご感たっぷりで人気でした。
Queseraさんでは、今後お店で提供するいちごのカクテルは、
筋野さんのいちごを使おうと計画しているそう。
地域の農産物が、こうしてまた、広がっていくことになりました。
Barというと、人によっては近寄りがたい雰囲気を感じる人もいると思いますが、
あの扉を開けた先にいるのは、川越愛に溢れたバーテンダーで、
地域の農産物を大事にして、熱い想いを抱きながら渾身の一杯を作ろうと待っている。
お酒を上品に楽しく頂く、川越らしいのBar文化を広めていきます。
「Bar Quesera」
川越市南通町13-1
営業時間月~日19:00~4:00(L.O.3:30)
定休日不定休
090-8312-4531
https://www.facebook.com/bar.quesera
さあ、次はどんなリクエストが来るのか、
いつでも応える気満々で、待っています。。。♪