川越style「こもれびの森・里山支援隊」東洋大学川越キャンパス2015年2月7日公開森林施業 | 「小江戸川越STYLE」

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こもれびの道を進むと視界が開けて立ち並んだ建物が目に入った。
「今日はやることがいっぱいありますよ」
朝の9時半、校内の4号館前に集まった参加者に、

ヘルメットを渡しながら声をかけるインストラクターの方。
この日は学内教職員、学生、近隣の方など10人以上が参加した公開森林施業の日で、
まず午前中は木の枝打ち体験をしようということだった。
参加者の皆さんは、初体験の枝打ちに楽しみと緊張が入り交じったような表情だった。

東武東上線鶴ヶ島駅近く、川越の鯨井にある東洋大学川越キャンパス。

キャンパス内の森林を保全する「こもれびの森・里山支援隊」では、

昨年の6月から毎月のように校内の「こもれびの森」の公開森林施業を実施してきました。

この2月が今年度最後の施業となった。

2015年2月7日(土)「こもれびの森・里山支援隊 公開森林施業」
誰でも参加することができ、9時30分-15時30分(午前または午後のみの参加も可能)


 

 

東洋大学といえば、昨年は総合情報学部による「地域活性化プロジェクト2014」と題した
川越の「霞ヶ関」や中央通り「昭和の街」といった場所での、

 

 

学生による地域活性化の演習に取り組んでいた様子を記事にしました。
角栄商店街での子ども商店街開催、
昭和の街の呑マルシェに合わせて行った餅つきなど、地域の取り組みに積極的で、
また、校内の森林保全の動きも活発化してきました。


川越でいわゆる「森」と呼ばれる場所は今ではそれほど多く残っていませんが、
福原地区や大東地区などに今も森を見ることができる場所があります。
そこは、川越にこんなところがあったのか、と感動的な川越の意外な一面に触れることができる。
という川越最後の森は、「残っている」というより「残そうとしている」人たちがいるということであり、
そして東洋大学にも同じように残そうとしている先生や学生、近隣住民の方々がいます。
ここ川越キャンパスに残る森も、川越の中で広大で、かつ貴重な森です。


 

こもれびの森は、もともと川越キャンパスがこの地にできた1961年以前からある森で、

 

当初は地域の人が土地の境界の目印として植えていたような人工林が広がっていた。

川越キャンパス開設に伴い、地域の方160人ほどから土地を分けてもらって以来、

森はずっとそのままの姿で残り今に至ります。

「樹齢100年くらいの木がたくさんある」という森は、

これまで特に森林施業の手が入ることなく、藪状態になっていた。

そこから昨年、こもれびの森・里山支援隊が立ち上がりました。


生物多様性豊かな里山に再生しようと活動している「こもれびの森・里山支援隊」。

「地域ぐるみで取り組みたい」との意向から、大学の団体ではなく任意団体として活動しています。

川越キャンパスの敷地28.5haのうち、
約2割を占める6.2haの雑木林を大学と市民が協働で保全・活用するため2014年春に発足。

林野庁森林・山村多面的機能発揮対策交付金を受け、
森林所有者である東洋大学との協定を結んで、
主に鶴ヶ島駅からの通学路である「こもれびの道」周辺に広がる未管理のエリアを対象として
常緑広葉樹であるヒサカキやシラカシの下刈りやヒノキやコナラの枯損木の除伐を行おうとしました。

発足を記念した森の観察会が開催されたのが2014年6月14日。
観察会には23名が参加し、学内の「大越記念庭園」と「こもれびの森」を散策して、
雑木林の現状を確認しました。
また、観察会後に有志でコナラ等の幼樹の掘り上げと移植(仮植え)を行った。

(当初のこもれびの森の姿。上の写真とは別の場所、まさに藪でした)

2014年7月には、「キャンパスの森でクラフトづくり」を実施。

 

2014年9月は、
新西門付近の森の刈払い及び刈払いで発生した木・葉などの片付け、運搬

 

 

2014年10月は、
新西門付近の森の刈払い及び刈払いで発生した木・葉などの片付け、運搬。

 

 

2014年11月は、
こもれびの道南側の森の刈払い及び刈払いで発生した木・葉などの片付け、運搬

 

 

2014年12月は、
こもれびの道南側の森の刈払い及び刈払いで発生した木・葉などの片付け、運搬。

 

 

2015年1月は、森林空間の利用として、これまでの森林施業で伐採した木をチップ化する作業と
薪割りの作業を体験してもらいました。
薪割りは広葉樹のコナラで行い、割った薪や

 

ヒノキでできたチップも参加者に持ち帰ってもらった。

6月の観察会から始まり毎月のように行われてきた公開森林施業。

月を追うごとに森の姿が変わっていき、少しずつ里山に近づいていくようでした。

そして、2015年2月で今年度の施業は終了。また来年度からのスタートとなります。


こもれびの道から森に入っていく。土の感触がふかふかして気持ちいい。

ヒノキ、コナラ、山桜が立ち並んでいます。

今回の森林施業の指導にあたるのは、森林インストラクターの塚本秀貴さんと藤野珠枝さん。

まずは塚本さんから枝打ちの説明と実演があり、

枝打ちといっても、単に枝を切ればいいものではなく、細心の注意が必要だということを教えられる。

キャンパスができて以来、この森の木の枝打ちが行われるのは、これが初めてのことだそう。



(枝が伸び放題になっていて光を遮っています)


枝打ちする目的は、ひとつは、枯れ枝を落として病虫害の発生を防ぐこと。
もうひとつは、生い茂った余分な枝を切って林の中に光を入れ、
地面の草などの生育を促すこと。そうしないと、草も育たたず地面がむき出しになり、
雨で表土が流されてしまう。木そのものも成長しにくくなる。

そして、もうひとつ、質のよい木材を生み出す目的もある。

節のない木材をつくるために枝を落とすわけですが、これがコツのいる作業でもある。
幹を傷つけるほど枝の根元から切ると、そこから病原菌が入ることもあり、
そうなると木材が変色したり、腐ってしまうこともあって木材の価値がなくなる。
また、胴枯れ病にかかって樹木をだめにしてしまうこともある。
といっても、あまり幹から離して切ると、枝が残り、大きな節ができることになる。
枝隆(しりゅう=枝の付け根のふくらみ)と枝の境で切ると、
節は残るが病原菌の入る可能性が低くなる。

 

特に、まだ幹の小さい1回目の枝打ちはこの位置がよいという。
枝打ちの道具はナタ、ノコギリが使われます。
切り口を早く治癒し、病原菌の侵入をできるだけ防ぐため、
切り口をなめらかにすることがポイント。

 

材としての価値を追求するなら、厳密な目と職人技で

直径5cmくらいの時から定期的に枝打ちするわけですが、

こもれびの森では、材として切り出すのではなく、あくまで森林保全という観点に立っているため

林業家のような目とは違った方向で行っています。

それでも、枝打ちを失敗すると「木がダメになってしまう。木は人間よりずっと外界の変化に敏感なんですよ」

と塚本さんが話すように、

木を傷つけないため、

木の自然治癒力を妨げないために、きちんと見極めて枝打ちしていかなければならないと実感。

参加者の皆さんは真剣な眼差しで塚本さんの話しに耳を傾けていました。

 

1本の木の前に一同集まる。6メートルはあろうかという樹齢50年ほどのヒノキの木だった。
腰にベルトと安全帯を身に付け、木に一本梯子をかけて上がり、下から枝を切っていくことになった。

 

「枝打ちするのは初めて」と話す人が多く、恐る恐るという感じで一段ずつ上がっていく。

梯子は足をかけるだけで、両腕で木を抱きしめるようにして上がっていくと指導がありました。



下から順番に枝を切り、切っては別の人がまた上がって切り、と

代わる代わる枝打ち体験しながら切り上げていきます。

一本梯子は下から見ると不安定に見えますが、

安全帯があると固定されて、「思ったより安定してる」という声感想が多かった。

一本一本下から枝が落とされ、落とされるごとに、森の中に差し込む光が増して明るくなっていきます。

一本の枝を切るだけで森の環境が変わることに驚きます。

 

また別の道具として、梯子のさらに上に上がっていくための器具、

 

ワンステップラダーの取り扱いの説明がありました。

これは一つが一段として、何個か携帯して上がっていくもの。

今回は地面から上がっていく体験をしていきました。

木をどう上がっていくか上を見ながら設置する場所を決めていく。

もちろん、足が伸びる高さを考えて次の段を作っていきます。

片足をワンステップラダーにかけ、片足を木に巻きつけるなどして枝を落としていく。

ここでも、最初はおっかなびっくりの参加者でしたが、

「慣れるとやりやすい」との声が上がりました。

安全帯をしているので傍から見ている以上に安定しています。

何個か設置して、結構な高さまで上がる参加者もいました。


 

 



こうして、午前中の枝打ちが終わる頃、改めて森を見渡すと

明らかに明るさが変わっていて、森に入る光が多くなっているのが感じられた。

塚本さんも、「枝打ち、みんな初めてにしては上手だったよ」と声をかけていました。

一本梯子をかけた木も、枝が落とされてすっかり綺麗な状態になった。

梯子のさらに上まで枝が落とされています。

ここまでやれば、光が地面や木に十分に落ちて、木にとって住みやすい空間となり、

虫などが誕生すればそれを目当てに鳥がやって来て、といった命の循環が始まる。

ただ、一本の木を枝打ちするだけでも大変なことだったので、

里山に復活させるというのは地道な道のりが続く。

同時に落ち葉掻きも行い、袋に詰めていくと山のように集まっていました。

森にとっては一面に落ち葉が落ちているのは栄養が多過ぎ、

多少地面に残るくらいがちょうど良いとのこと。

「集めた落ち葉は近隣住民の方にも持っていってもらっているんです」

こもれびの森の落ち葉はふかふかして栄養豊富で人気だそうです。

お昼ご飯を食べた後は、午後の部、こもれびの道を挟んだ反対側の森へ移動しました。


 

 



こちらの森は植生が豊富というか、密林のような藪状態。

それでも、切るべき木は切ってあって倒されているので、その後片付けをメインに行いました。

また、ノコギリを使って木を実際に倒してみる体験があり、

受口、追口を作って倒してみると、

ギギギギをまるで悲鳴を上げるようにして木が倒れることに驚きました。

そして、細い木でも持ち上げてみると本当の重い!

こんなに重いものが地面からにょきにょき伸びていることに、改めて木の生命の大きさを感じます。

こちらでも2時間ほど作業し、終わってみるとこちらの森も見違えるように明るくなっていた。

今までまったく手がつけられていなかった鬱蒼とした森に光が入り、見通しも良くなり、

枝間から学校の合宿所の建物が見えることに、学校関係者の方が、

「おお~!合宿所が見える!」と歓声を上げていました。
手付かずの森が、地域ぐるみで一年をかけて施業してきた成果で、

森がだんだんと里山としての姿に変化してきている。

 

さらに、こもれびの森に隣接するグラウンドは

 

川越キャンパスができてすぐに作られたそうですが、

照明設備を撤去し、土を耕し、これから植林して森を作っていこうとしています。

 

校内の森であっても、川越に残された広大な森である。

 

地域ぐるみで誰でも参加できる公開森林施業としているので、

ぜひ機会があれば参加してみてください。

次回は4月に行われるそうです。

 

「東洋大学 川越 こもれびの里・里山支援隊」

 

http://www.toyo.ac.jp/site/ecocampus/62687.html




 

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