2015年1月12日、成人の日。川越運動公園総合体育館前の広場には、
新成人たちが13時からの式典に参加するために続々と集まってきていました。
同級生との久々の再会に、あちこちから感激の声を上がるのが聞こえてきます。
広場はこれから新成人たちの姿で埋め尽くされていくでしょう。
成人式らしい盛り上がりの様子を目にしながら、
運動公園入口横の静かな自転車置き場には、
こちらも式典までまだ時間がある11時には人が集まってきています。
集まっていたのは、13人。
揃いのゼッケンを身につけ、手には燃えるゴミと燃えないゴミ用の袋にトングを持ち、
早速ミーティングが始まるところでした。
川越で毎年成人式の恒例となっている、清掃活動が行われようとしていました。
こういう活動を続けている人たちがいることを知っていたでしょうか。
かわごえ環境ネットの会員団体「クリーン&ハートフル川越」が、
成人式会場の川越運動公園内でごみ拾いを行い、新成人の方々にクリーン活動の啓発を行っています。
「成人式会場クリーン活動」
1月12日(月)祝日
11:00川越運動公園入口右側の自転車置場に集合。
「歩きタバコ・ポイ捨てなくしましょう」のゼッケンを着けて、
式典会場の総合体育館前の広場、緑地、駐車場、周辺道路のポイ捨てごみを拾いながら、
今年の新成人にたばこの吸殻やごみのポイ捨てをしないように啓発活動を行います。
配布する携帯灰皿は250個、15:00に解散という内容で進められました。
誰でも参加することができる活動で、毎年参加している方も多く、今回初参加の方も数人いました。
募集は、かわごえ環境ネットのサイトや、Facebook、Twitterで行い、
参加者は去年は7人だったので、「今年の人数は多いですね」と話していました。
毎年参加されている方にとっては、川越の新成人の姿をここで見守っていることでもある。
新成人の姿に変化はあるのでしょうか。
「メイクは時代と共にだいぶ変わっていますね。装いは今も昔もそんなに変わらない。
男性はスーツ、女性は昔はスーツもいたけど、今はみんな着物ですね」
とのこと。
成人式会場クリーン活動に参加するのは、もちろん清掃、啓発活動があり、そして
新成人の様子から時代の変化を見るのも一つの切り口だと言います。
川越の新成人を毎年見届けているのは、ある意味めったに立ち会えない貴重なもの。
社会の鏡として、こんなに時代の変化が分かる場所もありません。
そして、
「今の若い人は環境意識が高いように感じます。
成人式の時に運動公園の地面にほとんどたばこの吸殻が落ちていない」と話しを続けます。
以前は成人式の日、広場の地面には吸殻があちこちにあったそうですが、
確かに今年見回してみても地面には落ちていないし、
そもそも吸っている新成人の姿が見当たりません。
喫煙所も昔は何ヶ所か設置されていたようですが、今年見ると隅に一ヶ所あるだけでした。
そうこうしている間にも、運動公園の駐車場に車がひっきりなしに入ってくる。
2015年の川越の新成人は3500人以上、そのうち2000人以上は今日来場するだろうと見込まれている。
この「成人式会場クリーン活動」は2001年から始め、
始めた頃の会場は川越市民会館大ホールだったため、そちらで活動はスタートしました。
当時は大ホールで午前と午後の2回に分けて成人式が行われ、
地面の砂利にたばこの吸殻があちこちに散乱していて、これは綺麗にしないと、と
成人式会場クリーン活動を始めるようになったといいます。
クリーン&ハートフル川越が所属するかわごえ環境ネットは、個人会員は100人ほど、法人、団体が30ずつほど参加している。
環境ネット主催の清掃活動は、
毎週のように市街地の清掃、月に一度新河岸川の清掃と活動をしています。
また、大きな活動としては昨年末、
12月23日(祝)に「歳末まち美化活動」を実施し、
30名のボランティアの方が集まり市内のゴミ拾いを行いました。
本川越駅をスタートし、川越市内の中心部を
いくつかのコースに分かれポイ捨てごみ拾いを行いました。
ゴールの中央公民館に1は1:30到着、
ごみの分別後に旧川越織物市場に移動して、お昼ご飯を食べて解散という内容。
その時は約2時間で、
「燃えるゴミ 小袋16、ビンカン 大袋2、ペットボトル 大袋1、不燃ゴミ 小袋1」
とたくさんのゴミを集めたそうです。
「街中はたばこの吸殻が多いんです」と話す環境ネットの方。
注目すべきは、川越まつりの時にも清掃活動していることは知ってもらいたい事実。
川越まつりの二日間、赤い半被着用して、
市街地のまつり会場の清掃活動している人たちの姿を見た事あると思いますが、
あれにもかわごえ環境ネットのメンバーが参加して行っている。
川越まつりという二日間で100万人の来場者があるお祭の会場では、
ゴミ問題も一方で大きなテーマであり、
こういう方たちの活動があって、気持ち良くお祭が運営されているともいえます。
「川越まつりの時のゴミは本当に凄いんですよ。拾うのはもちろん、
袋持って立っているだけでお客さんがゴミを入れてくる」
くらいの混雑ぶりになります。
川越まつりでは、携帯灰皿も500個配布しました。
成人式では、運動公園内の各地へ参加者がそれぞれ分かれて行き、ゴミを集めます。
目に付くところは既に綺麗にされゴミは少ないですが、注意しなくてはならないのは目に付かないところ。
風に運ばれてゴミが溜まったり、捨てられるのは大体隅っこの方です。
「植え込みとかに多いんですよ」と、テニスコートそばの植え込みに足を踏み入れると、
落ちているのは今日のゴミというより、以前からあったゴミのよう。
パッと見てゴミがないように見える場所でも、小さなゴミをいくつも見つけて拾っていく。経験を積んで、ゴミを見つけるため目が慣れているようでした。
そして、歩きながら清掃活動の意外な効用を教えてくれた。
「ゴミ拾いは歩くし前傾姿勢になるし、エクササイズなんですよ。
スポーツマインドで取り組みたいと思っているんです」。
他の場所に拾いに行っていたメンバーと合流すると、
ビニールの包装紙や瓶、捨てられたサッカーボールがあったと見せてくれました。
メンバーは、運動公園内全体に散らばって拾っています。
川越総合運動公園は本当に広い。公園と名の付く場所では川越で一番の広さ。
そこを、奥のグラウンドの隅の方まで拾いに行きました。
時代の変化は新成人の装いだけでなく、公園内の地面によく表われている。
「数年前と比べて、今年はゴミが少ない。吸殻がほとんど見えないですね」
「毎年減ってきてはいますが、今年は本当に少ないですね」と話し合っているメンバーでした。
歩いていると、拾ったゴミを届けに来てくれる新成人もいました。
広場の中央を見ると、巨大なボードが設置されているのが目に入った。
「新成人が夢を語るブース」が設けらていました。
ブースには川越の風景写真を印刷したボード(横15、縦12センチ)を360枚用意されていた。
新成人に将来の夢を記入してもらったボードを貼り合わせ、
式典終了後に巨大なモザイク壁画として登場するというもの。
企画したのは昨秋に発足した「かわごえ若者委員会」。
メンバーは大学生を中心とした20人で、いずれも川越が大好きな若者たちで、
「川越をもっと元気にしたい、良さをアピールしたい」と企画したそう。
一体どんな完成画になるかは
新成人たちにはまだ内緒にしていました。
2015年の埼玉県内の新成人は75,118人、うち川越市の新成人データは、
・今年の新成人 3,613人(女性1,728人、男性1,885人)
川越市の人口 349,317人
新成人の比率 1.03%
・20年前の新成人 6,229人
当時の川越市の人口 316,694人
新成人の比率 1.96%
(かなり減少しているのが分かります)
ちなみに埼玉県で行われる成人式は、式典のみを実施する自治体が10市町村、
式典と併せて記念行事等の催しを実施する自治体が53市町です。
春日部市は市内商店街と連携し、成人式に参加した新成人にクーポンを配布し、
商店街でサービスをするなど、地域を挙げて新成人を祝福した。
草加市は成人式の開式に当たり、小学生を中心としたよさこい演舞を実施し、
子供たちから新成人へお祝いのメッセージを伝えた。
三郷市は新成人の家族のために、成人式会場の別ホールでパブリックビューイングを実施した。
小川町は細川紙のユネスコ無形文化遺産登録を記念して、
新成人が主体となり、細川紙普及のための募金活動を行った。
宮代町は恩師による新成人へのメッセージをクイズ形式で発表する「教えて先生!大人検定」と、
新成人から恩師に質問を投げかける「教えて先生!ハタチのギモン」を実施。
といったように、自治体により趣向を凝らした催しを開催しています。
当事者ではない客観的に見る成人式は、妙に新鮮に映りました。
各地の荒れる成人式といういつものテーマがテレビで報道されていましたが、
川越市の会場は全く穏やかなもの。成人式にやって来るほとんどの会場の新成人は、穏やかに過ごしていたことと思います。
携帯灰皿の受け取る新成人と記念写真。
たばこは普段吸うのか訊ねると、
「大学内が全面禁煙になったので吸う人は少ない」そうです。
一通り回ってきたら、集合場所に戻ってきてゴミ袋を集めました。
大人数で拾うとこんなに落ちていたんだというくらい、たくさんのゴミが集まります。
そしてちょうどお昼の時間、一息ついて昼ご飯を頂きました。
広場を見ると新成人の姿も見えなくなりました。体育館に入っていったようで、時計を見るともう式典が始まる時間になっていた。
パンやお茶を食べながら、清掃活動の話しをじっくり伺うことができました。
特に成人の日の活動で印象に残っている出来事で話しは盛り上がりました。
「今から4年前、ここを清掃していた時に、たまたま落ちていたかんざしを拾ったんですよ。
新成人の女性の髪から落ちたもので、本人は気が付かなかったんでしょうね。
遺失物として本人の手元に戻すことができたが、話しによるとお祖母さんから譲り受けた大事なものだったらしいんです」
この広い公園内でそんな大事なものを落としてしまったら、
戻ってこないと諦めていたかもしれませんが、ここで清掃していたから見つけることができた。
以来、成人式の日には、運動公園内に遺失物取得所ができるようになりました。
また別の年、着物の着付けが崩れて困っていた新成人がいた時の話し、
「着慣れていないと、裾を踏んで崩れてしまうんですね。声をかけて直してあげたんです」
クリーン活動に参加していた女性が急遽直してあげたこともあったそう。
清掃活動の裏には、こういうドラマチックなこともあるそうです。
そして、今年も午前中の清掃で「またかんざしを見つけたよ」と見つけた方がいました。
昼休憩が終わると、清掃活動午後の部が始まり、
黙々と清掃作業を続けていきます。
そして話しをしているのも束の間、また髪飾りが落ちているのを発見。意外と落ちています。。。
15時まで続けて清掃は終了、総合運動公園内を綺麗にし、携帯灰皿を新成人に渡して啓発を行いました。
そうそう、あの360枚のボードを使った巨大モザイク壁画は、こういう絵になりました。。。!
成人式会場クリーン活動、こうして成人式の日に、
清掃活動している人たちがいること、その姿を見ることで
新成人の意識に少しでも残るものがあることを願っています。