本番前の最後の練習 南大塚餅つき踊り2015 | 「小江戸川越STYLE」

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1月の川越の伝統行事といえば、南大塚の餅つき踊り。

今年も天候に恵まれそうで、多くの人で賑わいそうです。

今年は1月11日(日)の開催。成人の日の前の日曜日に西福寺で行われているものです。

西福寺があるのは、西武新宿線南大塚駅から16号線へ出て、

マクドナルドがある交差点のところにあります。

12時半から始まり、歌に合わせて舞い踊りながら餅をついていく。

埼玉県の無形文化財。
4回にわたって計20キロの餅をつきます。

ついた餅は菅原神社に奉納され、また、見学される方に振る舞われます。


餅つき踊りが始まったのは江戸時代後期。

もともとは毎年11月15日、地域の家の子の帯解き(七五三)のお祝いのために、

その家の前で歌い踊りながら餅をついていた。

当時は餅をついたあと、臼に綱を巻いて菅原神社まで曳きずっていって奉納していました。

そのお餅は、セッタイモチとも、ヒキズリモチとも呼ばれます。


餅をつく臼も杵も事前に清めたもので、大人数で家までやって来て餅つき踊りで祝ってくれる、

それは当時の一大イベントでもあり、親は子ども成長を実感し、

また、子どもはお餅を楽しみにしていたことでしょう。

地域にとっての賑やかで神聖なお祭でありました。

一時期途絶えた時期もありましたが、地域の方を中心にして餅つき踊り保存会が発足し、

練習を積んで毎年披露しています。


復活させてからは地域の成人者のお祝いとして行うようになり、
現在の保存会会長も、
「自分たちの成人の日にも、ここで餅つき踊りを見せてもらってご馳走も出てたんだよ」
と話します。
昔は各地域で成人者をお祝いするのが当たり前でしたが、

今の川越は川越総合運動公園でまとめて成人式を行うようになり、
成人の日に地域の氏神様にお詣りすることもほとんどなくなりました。
同時に、南大塚でも成人者に餅つき踊りで祝うことも見られなくなっていった。


現在の餅つき踊りの形は、家の前で餅をつく場面や成人者に見せる光景は見られませんが、

まず西福寺で餅つき踊りを披露したのち、

隣にある菅原神社まで臼を曳きずって、曳きずりながらも餅をつき続け奉納します。

16号線沿いを臼を曳きずりながらも餅をつく光景は、ハラハラしながらも圧巻。

毎年、餅つき踊り保存会、自治会が一体となり、南大塚を挙げての地域の行事です。


そして、いよいよ本番まであと数日となり、気合の入る保存会の面々。
西福寺、19時。

本番会場となる西福寺の裏手が餅つき踊りのいつもの練習場所。
本番前最後の練習には、会のメンバーが10人ほど集まっていた。
寒さで手がかじかむ中、薪でお湯が沸かされ、せいろでもち米を蒸かしています。


毎月のように重ねてきた餅つき踊りの練習、

普段は臼の中に藁を敷き詰めて練習していますが、この日は最後の練習ということで、

実際にもち米を蒸かしての実践練習を行います。


保存会には地域の方が中心となって参加していて、

中学生に何十年と守り続けている方まで、幅広い年代で集まっています。

ちなみに、春と秋に南大塚を代表するイベントを開催している

栗原造園 」の栗原さんも保存会の一員として参加しています。

南大塚といえばさつま芋畑。さつま芋農園の荒幡さんや、

南大塚駅前にある和菓子店のふじ乃さんも保存会に加わっていて、伝統行事を支えています。

親子3代でこの行事に参加している家族もいて、

そこに新しい息吹として今年から初参加の方もいました。


保存会の活動は、1月の餅つき踊りだけでなく、他の地域の行事に呼ばれて披露することもあり、

あさひ幼稚園で行うのは毎年恒例となっていて、

2014年秋の大東市民センターの竣工式典でも披露しました。



せいろから湯気がぼうぼうと吹き上がってきました。さすがに薪の火力は強い。

湯気の温もりで手が温まります。

30分くらいで香ばしい香りが辺りに広がり始め、「よし、そろそろいいんじゃないか!」と

蒸し上がったもち米を臼の中に急いで移します。

寒い夜でしたが、火と湯気で一面ほんのり温かくなってきました。



餅つき踊りの臼は、長年使用している餅つき踊り専用のもの。

最大で6人一斉につくため、通常の餅つきで見られるものよりも数倍の大きさがあります。

それに杵の形が特徴的で、柄の長さが極端に短い。

これは軽快に踊りやすくするためで、長いと隣の人とぶつかってしまう。

普通の餅つきのものとは違って、全てが餅つき踊り仕様となっています。

6人が一斉に1つの臼の餅をつくなんて、簡単なことではないし、練習を積んでこそできること。

保存会の皆さんは長年続けてこられて、その息の合った餅つきは、まさにあうんの呼吸。

(ちなみに、『昔取った杵柄』ということわざは、

若い頃に身につけた餅をつく腕前は、年を取っても体が覚えているため衰えないことから)

そして餅をついたあと、消耗した体力を振り絞って臼を曳きずっていくので、

想像以上にハードな行事です。


小屋の中に置かれた臼にもち米を入れると、

「ヤーレ!ヤーレ!」と歌が始まり、静かな夜に活気が生まれる。

臼の周りを取り囲んだ人たちがもち米をならし、ゆっくり回りながら練り、杵でもち米を力強くつぶしていきます。

それがネリという工程。





ネリの後ツブシが終わると、3人、6人が杵を振り上げてつき、

それぞれタイミングを外して舞い踊りながらついていく。

さらに途切れさせずに人が入れ替わっていくので、その様子は華麗。

流れるような動きに、まさに伝統芸と惚れ惚れします。

臼から上がるもち米の湯気に、ぜぇぜぇと漏れる白い息、

餅をついているうちに、うっすら汗ばんでいるつき手たちです。


今回は特に地域の中学生4人が加わるので、その勇姿もみものです。
4人は始めは練習に見学に来ただけでしたが、
「やってみようかな」と2014年9月から練習に参加するようになりました。
もう一通りの踊りは覚え、その姿に保存会会長も
「中学生はみんな覚えが早いよ。何回か来て形は覚えたよ」
と目を細めていました。

餅つき踊りはダイナミックな舞いだけでなく、繊細な動きも注目です。

杵の逆側で臼をカン、カンと叩く静かな舞いもあって、その緩急が楽しい。








餅がつき終わるとテーブルに運び、きな粉とからみ餅を作って取り分けていきました。

これをメンバーで食べて、本番への決起としました。

中学生たちも、自分が参加して出来た餅を「美味しい!」と言って食べています。

1人2人ではなく、6人のつき手でつかれたお餅は、なかなか食べられるものではありません。

一皿頂きましたが、最高に美味しかったです。







今年も無事に開催されますように。。。

南大塚の大事な伝統行事、南大塚餅つき踊り。

1月11日(日)西福寺にて12時半から。

セッタイモチをどうぞ味わってください♪


改めて思うのは、地域で昔から続く行事の大切さ。

餅つき踊りのような行事を通して、

地域の繋がりを確認でき、いろんな年代での交流が生まれる。

今の南大塚は、駅周辺にマンションが立ち並び、新興住宅地が増え、道路も拡張し、と

どんどん風景が変わってきていますが、実はとても歴史のある地域でもあります。

16号線から北、川越南高校周辺含めた大東地区は、田んぼや畑が広がる川越の懐かしい風景の宝庫。


先日の福原地区元旦マラソンの時に、

今年は福原地区のことをもっと掘り下げていきたいと思い、

さらに南大塚を中心とした大東地区も魅力がたくさんあるので、

この地区ももっと来たい。川越市内のいろんな地区のことを発信していきたいと思います。


南大塚には、囃子連はありますが、川越まつりの山車はない。

だから不定期で市の山車に乗って演奏している形です。

山車はないけれど自分たちには餅つき踊りがある。

そういう自負は地域の方みなさん持っているし、

南大塚の象徴として残していかなければという使命感を持っている。


川越の中で伝統行事を守っている方は、

そういう気持ちを持っているのではないかと思います。
街の中心部には、山車を親子何代で守ってる話は聞きますが、

ここは川越の外れだけれど、地域の行事を親子3代で守ってる家族がいる。

どちらも変わりなく誇れるものだと思います。

当日の勇姿も楽しみにしています♪


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