2014年川越まつりに向けて「連雀町雀会」『あっという間の一年だった』 | 「小江戸川越STYLE」

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川越の現場で様々なまちづくり活動にも従事しています。
「小江戸川越STYLE」代表:石川真



夜はまだ肌寒い季節。

昼の喧騒から一転して、夜の大正浪漫夢通りは人通りが途絶え

淡い灯りに照らされて静かな時間に包まれます。


足を止め通りで耳を澄ますと、静寂の中に

かすかにお囃子の音色が漂っているのを見つける。

熊野神社からです。


毎週金曜日の夜に、

連雀町の囃子連「雀会」のお囃子の稽古が行われているのが熊野神社の神楽殿。



2014年の川越まつりまであと半年となりました。

まだ半年もある、と思いきや、

いよいよあと半年と迫った考えるのが川越っ子(*^o^*)

特に祭りに関わる方は、川越まつりを中心にして一年の計画を立てて動くので、

今の時期になると10月を意識し始める頃だと思います。

そう考えるとあと半年しかない、10月はあっという間にやって来そうです。。。


半年に迫った川越まつりを意識するのはやっぱり各町内の囃子連。

練習を重ねて、太鼓のバチを持つ手にも力が入っているところでしょうか。
市内どの地区のお囃子連も、毎週のように練習を重ねて

10月の本番を迎えます。

祭り直前になって練習をしているのではなく、

一年を通して毎週練習しているのが川越まつりのお囃子です♪


川越まつりを伝えようとしたら、お囃子のことは絶対です。


そしてお囃子のことを伝えようとしたら、一回二回では到底理解できない。

それなら定期的に通おうと。

お囃子を知ることが川越まつりを伝えることになり、

川越を深く感じられるのではないか、と。

ルーツを知ること、今も守り続けている人がいること、

川越のお囃子は、川越で生活する上で知っておきたいことです。。。


川越まつりに繋がる軌跡を追いかけようと、

一年を通して活動に密着続けている雀会。


川越市内、各町内のお囃子はそれぞれに音色の特徴があると思います。

同じ曲を演奏していても、地域によって雰囲気は違ってくる。

演奏の違いは、演奏している人の違いで、

雀会の音は懐かしさを感じさせながら熱さも飛び散り色気もある。

聞いていると、闇夜に浮かぶ提灯の絵が思い浮かんでくる。。。

まさに「囃子」という音です。


ここ連雀町の囃子連「雀会」は、

熊野神社境内にある神楽殿の中で

熱気溢れるお稽古の真っ最中でした!


神楽殿に入るのは二回目。

前回は、12月の酉の市に向けた練習を見させてもらいました。

相変わらず神楽殿に足を踏み入れる時は緊張します。。。



近づけば近づくほど、お囃子の音が大きくなっていく。

扉を開いた瞬間、

神楽殿から溢れた音色が飛び出して全身にぶつかってきました。



凛とした神聖な空間へ。

中では、もうこれが本番でもいいのでは・・・と素人目に思うほど、

完成度の高いお囃子の熱演が続いています。







お囃子は、遠近で楽しめるものだと思います。

遠は、全体のハーモニーに身を任せ自然と踊りたくなるような楽しさ、

近は、一つひとつの音色を聞き入る楽しさ。

太鼓の音一つにうっとりし、

笛の低音から高音を行ったり来たりする滑らかな流れ、鉦の調子。

遠でも近でも味わいがあるお囃子の音色です。


ハーモニーもディテールにも、どちらに耳を集中させてもまったく隙がない、

本当に、雀会の演奏レベルは凄い。。。!

聞いていて気持ち良さがエンドレスに続きます。

練習だからこその伸びやかさもあって、

間近で見るのは祭りの時以上にじっくり聞くことができます。



金曜日の夜は、これからの季節だと神楽殿の扉を開いてお稽古するそうなので、
夜のお囃子を聞き入ることができます。
第三日曜日の熊野神社のご縁日は昼間の演奏です。

音は人格。人それぞれ持っている音があって、

その個性を聞き分けるのも楽しいです。


音は言語。言葉を使わずとも
音で気持ちを伝えコミュニケーションをはかります。

同じ場所で生まれ育った者同士が多いので、
音はより人格になり言語になる。
音の繋がりに深さを感じるのが、お囃子の魅力。


川越以外にもいろんな場所に囃子はあると思いますが、

こんなにも「お囃子やりたい!」と参加する方が多い街って

川越の他になかなかないのではないでしょうか。。。


その中でも連雀町は、
毎年川越まつりに山車を出すので、他の囃子連から羨ましがられる存在。
川越まつりの山車は、市街地に29台あるといっても

祭りに出る年とそうでない年があるのが一般的で、
毎年山車を出しているのは、連雀町か新富町か市役所かと数えるほど。


どの町内も町の中心に向かって山車を曳いてきます。そして、町の中心にもともと山車がある連雀町はやっぱり凄い。
しかも本川越駅から一番街に続く通りは、川越まつりのメインストリートといえる道。
その道沿いに連雀町の山車はあります。
ここがホームグラウンド、として
そこにある姿は圧巻ですね(*^^*)



和気あいあいとしつつも、

いざ稽古が始まればピリッとした雰囲気になります。




(タイヤを使って太鼓の練習!)





その中で、見慣れた方が一人いました。

普段見る表情とはまた違う、必死に太鼓の練習をしている姿がありました。
お店の営業が終わったあと、お稽古に駆けつけていました。
先輩の様子を離れたところからじっと見つめ、

調子に合わせてタイヤを叩いている。




(太鼓の楽譜です)


この方は、そう、Agostoの店主みどりさんです。

みどりさんも雀会のメンバーで、
入ってそろそろ一年になります。


「細々と地道にやってますよ」


一年続けてきたお囃子を今そう振り返ります。


Agostoをオープンしたのが、2013年4月のことでした。

古本の買取販売とカフェ、そして文具を組み合わせ、

川越で初めて生まれた形態のお店です。






(「Agosto川越とブルックリンとイタリアの融合

お店は蓮馨寺の道路向かいにあります)
個人的に入り浸ってるカフェ(*^o^*)

本のセレクトがいい、カフェとしても雰囲気がいい、「紙」の文具もいい、

自分は居心地良いです。今度このお店にある紙の文具だけの記事を書きたいです。


オープンから一年といえば、「まだ」とも「もう」とも感じるけど、

Agosotは4、5年はこの場所でやっているようなしっくりした落ち着きがあります。

それだけ町並みに馴染んでいて、周りの方に親しまれているお店と人柄。

だけど、お店をやりながらお囃子に参加するのは大変だと思うし、

振り返ると、Agostoをオープンした直後に雀会に入った行動力が凄いです。。。



そもそも、みどりさんがお囃子をやろうと思ったきっかけはなんだったんでしょう。


日本舞踊をやっていたといっても、
お囃子は初めてのこと。
音楽の演奏には親しんでこなかったそうなんです。

2013年4月。オープン直後のことだったと言います。

当時の町会長さんお祝いの花も持ってふらっとお店に届けてくれた日のことだった。


「開店おめでとうございます」


花を届けてくれ雑談をしている中で近所の話を聞かせてくれた。


そして。。。


「この辺は川越まつりの時は凄いことになるからね」


やっぱり話しに出る川越まつり。

まつりの時はお店開いているの?そう聞かれ、

いや川越まつりの時は閉めていると思います、

自分もお祭り見るの好きで、日本舞踊をやっていたので

川越まつりの山車や舞、お囃子を見たい、そう答えたそう。


その言葉に会長の瞳がキラリと光った。

山車という言葉に反応し、


「山車が好きなんだ、お囃子が好きなんだ、

それならお囃子のお稽古に来てみたら?すぐそこでやってるよ」


当時のみどりさんは、

連雀町に山車があることもお囃子があることも知らなかった。

おいでおいで、とお稽古に誘われて、

軽い気持ちでお囃子をやってみようかなと思った。

初めのイメージは、お囃子が好きな人たちが集まった

趣味のサークルくらいに思っていた。。。

思っていたのが・・・あの連雀町の「雀会」だということはまだ知らなかった。。。


誘われて、それなら一度見に行ってみようと

2013年4月の金曜日の夜、お店が終わったあと

熊野神社の場所も分からなかったので連れて行ってもらい、

神楽殿で行われているお稽古に顔を出してみた。



初めて神楽殿に足を踏み入れた日のことは鮮明に覚えていると話します。

練習真っ只中だったところで、みんなに紹介してもらって、

入会希望で今度お稽古に参加させてもらいます、と挨拶した。


まだこの時は正会員ではなく、仮の入会でした。
正会員には練習を積んで、雀会の一員が集まる総会で認められなければなりません。

挨拶が済むと

稽古見ていてください、会長にそう言われ隅っこでみなさんの練習を眺めることにした。

「舞で参加できれば」と思って来たけれど、回りを見回しても

神楽殿には舞の人がいない。

あれ??ここには舞の人いないのかな?



会長に「君はどこをやりたいの?」そう聞かれると

舞をやりたいんですと即答し、その言葉に


「うちはみんな、まずお囃子から練習を始めるんだよ。

お囃子も舞もできるオールラウンドプレイヤーが前提なんだ」


会長の言葉に後ずさりした。舞の経験はずっとあるけれど、

お囃子はまったくの素人。

ダンサーとミュージシャンの違いのように、まったくの畑違いの二つです。

でもそういうことだったら囃子から取り組もうと、

太鼓にチャレンジを始めようと決意した。


最初に神楽殿に挨拶に行った時、帰る頃にはみんなに下の名前で呼ばれ、

お稽古の後に「お前酒呑めるのか?呑めないと雀会は無理だぞ!」

毎週金曜日のお稽古の後に呑みに行く日々。

お囃子とお酒は切っても切れません。。。(*^o^*)


「最初はバチの持ち方も分からなかったんですよ。

太鼓のどこを叩いていいのかも分からなかった」

稽古では締め太鼓の隣に先輩が並んで座って指導してくれます。
音の出し方、手首の使い方。すべてが初めてのこと。






周りにいるのは、親子三代でお囃子をやっている生粋の囃子人ばかりで、

囃子は全部できて舞も何種類もできるような方ばかり。

50年囃子に携わっている方もいる、雀会というのはそういうところです。

毎週のようにお稽古に参加し、

半年くらい経つ頃には「最近入った人だね」と

だんだんと雀会の中でも存在が認知されるようになっていった。

そうすると、いろんな人が教えてくれるようになって、それが嬉しかった。


ただ初めて挑戦するお囃子、
今思えば・・・と、
お稽古は順風満帆ではなかったと振り返ります。

年末頃にスランプに陥り、なかなか上手くいかないもどかしさを感じていた。


「一年は続けたいと思ったけど、あの時は本当に悩んだ」


悩んでいる様子に、雀会の若いメンバーは何かを察知したんでしょうね。

大学生といっても、みんな小さい頃からお囃子をやっている人たち、

音は人格で言語、
みどりさんの出す音にみんなすぐに気付いた。

何かが違う、と。

お稽古とは関係ない日に代わる代わるお店に来てくれて話を聞いてくれた。

『みどりさん、頑張りましょうよ!』そう励まされ背中を押してくれる。


それからの神楽殿での練習も、

「みんなが全身全霊で自分に合わせてくれるのを感じたんですよ」

失敗して表情を曇らせていると、

すかさず音を出して再び練習に導いてくれる。

囃子の音を言語として気持ちを乗せ、言葉を使わずとも常に背中を押してくれた。

それに救われてきたと振り返ります。


音で引っ張っていってくれるのは、

言葉以上に愛情を感じて。


諦めずに続ける姿に、若いメンバーも感じるところがあったんでしょうね。

口裏を合わせたわけでもないのに、お店に来て応援してくれたんだそう。

それが本当にありがたかった、と。。。


そして、雀会に仮入会して

そろそろ一年になる最近のお稽古でのこと。

先輩の横に座らせてもらって、太鼓を叩いた。


お稽古のあと、ボソッと先輩が口にした言葉が


『ちょっと上手になったね』


その言葉に涙がこぼれそうになった。。。



みどりさんは2013年4月に仮入会してから、

熊野神社のご縁日に参加したり、

川越百万灯夏まつり、川越まつり、

一年間活動に参加したことで雀会の流れを体で覚えることができた。



(2013年川越まつりから連雀町の山車)


2014年の4月の総会で、ついに雀会の正会員になる予定です。
今年はみどりさん合わせて、二人が正会員に認められる予定。
目の前のことにがむしゃらに取り組んできた一年。


「お店もお囃子もあっという間の一年。

ついこの間お店オープンしたと思ったら、お囃子始めたと思ったらもう一年。。。」
一年の流れを経験したので、二年目は少しは気持ちが楽になるかな」


舞をやりたいと思って入った雀会、

まだまだ舞の練習までの道のりはありますが、

囃子や舞に、連雀町の山車で活躍する姿が楽しみです。


「いろいろなことがあって、辞めたいと思ったこともあったけど、

でもやっぱり雀会に入ってよかった」


話しを聞いていて思ったのは、

雀会は伝統ある囃子連だけど、縁もゆかりもない人を受け入れる懐の深さもある。

出身じゃないからとよそ者扱いせず、

家族のように迎え入れてくれる雰囲気がある。


少し考え込んだあとみどりさんが言いました。


「雀会の人たちはね、囃子が好きな人が集まっているし、

『囃子が好きな人』が好きなの」



だから、

囃子に向かう熱が伝わればいつでも受け入れてくれる場所だといいます。


そこは家族のような関係、いや、家族以上の繋がりかもしれません。

2014年の川越まつりまであと半年。
まだなのか、もうなのか、
いろんな思いの中、今日も太鼓に気持ちを込めて叩いている姿が川越にあります。

まだなのか、もうなのか、
いやきっともうすぐそこです(*^^*)









雀会は5月4日、5日10時~15時に

道灌の山車を出してお囃子の演奏します
今度は練習ではなく、晴れ舞台を伝えられると思います♪
楽しみにしてます。。。!


そして、Agosto1周年おめでとうございます!

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