プロのミュージシャンは、みんなそれぞれ響く音が違うんだよ。
プロはね、
『自分の音』を持っているんだ」
☆*゚ ゜゚*☆*゚ ゜゚*
スタイリッシュでオシャレな雰囲気、
開放的な店内にはジャズがいつも流れている。
ちょっと背伸びしたい気分の時にぴったりの大人の雰囲気。
光が射し込むテラス席は、
単に気持ちいい場所、というだけでなく、
現代アート作品のような空間でした。



ゆったりまったりとは違う、
この、ピンと張り詰めた都会的な空気って、居る者を大人にさせる感じがありますね。
大人の落ち着き。

お店の雰囲気には、そのまま店主の個性感性が表れると思うので、
お店を見れば、店主の感性、熱量が分かったりしますが、
一歩入った瞬間・・・
「この雰囲気を出してる感じって、
相当感度が高い人だろうなあ」
と、店主の事を想像しました。
お店があるのは、街の中心部から離れた場所。
あの立地で、この空気感のお店なら、相当な覚悟と緊張感を持ってやっているのが分かります。
こういうお店が川越にある。
つい最近できたオシャレなお店・・・
ではなく。
このお店のオープンが・・・
1978年6月だと聞いたら
信じられますか??
そう、オープンから35年のお店です。
お店の雰囲気と、35年という時間が、
どうしてもギャップを感じて、いまだにしっくりきません。。。
35年も続いているお店なら、
普通、重厚な老舗感が出たり、くたびれた感が出たり、と
そういう方向なら分かります。
でも、
これだけスタイリッシュな雰囲気が今でも維持されている事が信じられない。。。
二代目がやってる?
いえ、オープンからずっと同じマスターが一人で作り続けています。
ハンバーグも、
オムライスも、
スパゲッティも、
豚肉のしょうが焼きも、
オープン以来同じ味、作り方で、
マスターが作り続けています。

他のお店なら、全体の一致があったりしますよね、
この雰囲気ならこういう料理が出るだろうな、とか。
それは期待通りと言えるし、意外性がないとも言える。
そういう意味でこのお店は、ギャップの連続でした。
スタイリッシュな店内に、料理は35年前と同じもの、
マスターが一人でずっと作り続けている、
料理には懐かしさはなく、今の香りがする、と。
この一致しない感じに、
ぐいぐい引き込まれていきましたよ。♪
最初は、単に
「川越の洋食遺産」なんて表現を思い描いていたんです。
でも、マスターに時間をもらって、
じっくり話しを聞かせてもらう機会を得て。
それを通して想ったのは、「遺産ではない!」と。
そんな言い方は、現役バリバリで緊張と熱を持ってやってる方に失礼だ、と思い直しました。
歴史ばかりに捉われてはいけない、と。
ただ・・・
35年もの時間続いている事は本当に凄い事。
川越の洋食屋さんで、こんなに続いているお店はほとんどないと思います。
マスターの今の熱を伝えつつ、
35年の歩みも振り返ってもらいたいなと思います。♪
それはそれは、
たくさんの話しを聞かせてくれました。
正直な話し、途中でウルウルきた瞬間もありました。。。

「町医者のように」
マスターがその言葉に込めた魂に触れる。
記事のBGMとして、
ソニー・ロリンズの
「Moritat」をお聴きください♪
小さい時からJAZZが好きだったマスターが、
中学生の時に衝撃を受けて、今でも好きな曲だそう。
それではどうぞ。。。
☆*゚ ゜゚*☆*゚ ゜゚*
川越の一番街、
札の辻の交差点を通り越して北へ北へ。
緩い下り坂と左へのカーブ。
そのカーブの所にあるのが・・・

「ミルキーウェイブ」です。
外観も洗練されていて、オシャレな感じです。
もともとは、すぐ右にある小さな建物で
「ミルキー」をオープンし、
今のこの建物「ミルキーウェイブ」になったのは1990年。
では、改めてお店に入ってみます。



(老舗という言葉が不釣合いな雰囲気ですね)
店内にはJAZZが流れていて。
「ミルキーウェイブと言えばJAZZ、
JAZZと言えばミルキーウェイブ」というくらい定着しています。
年4,5回は店内でライブやっていて、
しかもマスターは、アマチュアではなくプロの演奏にこだわっている。
個人のお店で、プロのJAZZミュージシャンを呼んだライブをここまでやる所は、
なかなかないと思います。
次回は11月にあるそう。!
このテラス席で、
今の思い、これまでの歩みを聞かせてもらっています。
「うちの料理の味はまったく変えてないですよ。
変えてないけど、いつももっと美味しくできないかというのは考えてる。
ハンバーグなら一つ一つ手ごね。自分で作る事が大事だと思う。
レシピが一緒でも、違う人が作ると違う味になる。
味が変わるのが嫌なんだ。
お客さんを思い浮かべながら大事に作る、町医者みたいなもんだよ」
マスターの言葉で一番感動したのがこの、「町医者みたいなもの」というものでした。
これ以上に、お客さんを想う言葉ってあるでしょうか。
「あの人は塩加減抑えて、あの人は量少なめだな」
飲食店のマスターから、ここまでの言葉は初めて聞きました。
お客さんを想うその感じって、本当に町医者ですよね。
小さい時から大人になるまでを見ているからこそ。
そしてメニューは、選ぶ楽しさ提供したいと、
たくさんの料理を用意し、迷ってしまうくらいです。

スパゲッティなら
・ナポリタン
・ミートソース
・ホーレン草とベーコン
・明太子とアサリ
・カルボナーラ
・シーフードなど。
ピラフなら
・カニとタマゴ
・ドライカレー
・ツナ
・オムライスなど。
・グラタン
・ドリア
・ピザ
・サンドイッチ
・トースト
・サラダ

・ハンバーグ
・チキンソテー
・豚肉のしょうが焼き
これらを全部一人で作ってるのって大変です。。。
しかも、他のスタッフが仕事する場合でも、味が変わらないように
「一つ一つ全部見てる」
と。
「昔からのお客さんも多いし、
オープンの時からのお客さんもいる。
少しの味の違いが分かってしまうし、
一つのミスでお店の印象変わってしまうからね。」
高校生だったお客さんが大人になって、家族で来てくれたりと、
まさに、お店とともに年を重ねているようなもの。
それから、こんな面白い話しも聞かせてくれた。
「ナポリタンならナポリタン、必ず食べるものが決まってるお客さんが多いんですよ。
オムライスもしょうが焼きもそう。
あそこに行って同じものを食べて安心するっていうかな。
人見知りじゃないけど、『場所見知り』ってあるのかもね」
マスターの言葉って、深いんです。
長年ここで、お客さんを見続けてきたからこその言葉。
言葉も深いし、あと笑顔がチャーミング。
いろんな話しが出てきましたが、思ったのは、
今までの事や今の想いを
言葉にして伝えたい気持ちが凄くあったんじゃないかなって。
それに応えるためにも、深く深く伝えていきたいと思いました。

「35年も続いた秘訣ってなんですか?」と聞いたら、
「ダラーっとしてると店に出ちゃうんだ。
つねに緊張感持ってやらないと。
長くやればやるほど、最初の気持ちを大事にって思いますよ。
一人一人のお客さんを大事に。
今のお店は厨房からお客さん見えないけど、
お客さんの事はいつも思い浮かべながら作ってます」
そして、マスターが作る、今も昔も変わらない新しさ、
これがミルキーウェイブの料理です。


これは前に行った時に食べたハンバーグ。詰まった味わい、最高です。
ここまでが
ミルキーウェイブのマスターの今の想いです。
では・・・
マスターがここまで来るまでの歩み、
少し遡ってみましょう。。。

☆*゚ ゜゚*☆*゚ ゜゚*
「小さい頃から何か商売やりたいなと思っていたんだよ。
もともと魚屋の息子だし、自分も商売やる事が当たり前だと思ってた。
中学の時に聴いたソニー・ロリンズに感動して、
レコード屋巡りもよくしてたなあ。
高校卒業して、知り合いに紹介してもらった洋食屋さんで働き始めたのが料理の始まり。
洋食屋で何ヶ所か修行してから、
28歳の時に、ここの前進『ミルキー』を横でオープンさせたんだよ」

(今のミルキーウェイブ)
このミルキーウェイブのすぐ隣に、
28で始めた前身の「ミルキー」が、今も残っています。

(すべての始まり、ミルキー)
今は使われていない建物ですが、
マスターと一緒に中に入ります。

カウンター席に、2席のテーブルが3つ。
「1978年6月、オープンの日に、初めて来てくれたお客さんの事は、今でも覚えてますよ。
『こんな所によく来てくれたなあ』って感動した。
最初にきた注文?
最初の注文はトーストだった。
ところがさ、トースター用意するの忘れて、自宅に取りに行ったなんて事があったよ。(笑)」
マスターがカウンターの中に移動。


「お客さんがすぐ目の前にいる。お客さんから見られる緊張感。
真剣勝負だったね。」

「ここでこんな感じで調理していたんだよ」
28歳でお店を始め、1990年までいたお店。
「今回、改めて振り返っちゃったなあ」
と言っていました。
この時から、プロのミュージシャン呼んで、
ここでライブをやっていたそうです。

☆*゚ ゜゚*☆*゚ ゜゚*
またミルキーウェイブの方に戻ってきました。
そして食べたのがオムライス。
オムライスを注文して待つ間、
「マスター、どんな事考えて作ってくれてるかな・・・」
そんな事に思いを馳せ・・・
きっと、じっくり考えてくれたんでしょうね。

フワフワで美味しいオムライスでした。♪
ミルキーウェイブ、
35年も一人で続けてくるのは大変な事だと思います。
こういう方じゃないと35年も続かないんだろうな、と思うくらい
熱い気持ちの方でした。
お客さんを想う。
今、お店では料理目指す若者もいるそう。
そういう若者にはちょっぴり厳しく教えてる。
そう、当時自分が鍛えられたように、自分を重ねて。
このマスターの元で鍛えられるって、
凄く幸せな事だと思います。
技術だけじゃなくて、気持ちを仕込まれますからね。
「町医者みたいなもの」
きっと、元気に巣立っていくでしょうね。
マスターのあの緊張感、熱量、気持ちの若さ、
ミルキーウェイブを表現する言葉を最後に記します。
「35年続く新しいお店」です。
マスター、貴重なお話しありがとうございました。!
「ミルキーウェイブ」
川越市志多町17-2
11:00~21:30
月休



