「川柳 新子座」 (1990年・時実新子著)より


声たてて笑う書斎の父一人 (柴田午朗)


ベルこの句の父は作者自身なのである。いつものように

一人の書斎で、思わず笑ってしまった。笑ったことで

家の中の静寂がいっそう深くなった気がする。一人を楽しむ

そこはかとなき孤影。(新子)


こういう鑑賞は、誰にでもできることではない。

笑ったことでその反面、静寂が深くなるという感覚が素晴らしい。

また、その笑い声に、一人を楽しむ孤影という。その鑑賞に

またまた、まいってしまった。



敗けてきた男の膝が好きな猫 (安田将幸)※現在は「翔光」に改名


ベル洗い髪猫がしきりに膝に乗る(恵子)という句があり迷ったが

妖の世界より情の世界がタッチの差で勝った一句。


「妖」と「情」を比べた新子の鑑賞の方法もまた勉強させられた。