第一話
https://ameblo.jp/koremiturie/entry-12597468930.html
第二話
https://ameblo.jp/koremiturie/entry-12597470847.html

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小説「光る絆」第三話

週末いつも通りにサッカークラブに行くと、赤いトップスに黒のシフォンスカート。
それにサングラスをしていて、ジミーチュウのピンヒールを颯爽と履きこなす女性が保護者席にいるのを見かけた。
まるでモデルのよう。明らかに周りのママたちからは浮いた雰囲気
保護者席に私がつくと、その女性が話しかけてきた。

「はじめまして。マナブの母です。マミって言います。
いつもは主人が送り迎えしてるので分からないことばっかりです。
よろしくお願いします」

マナブ君のお母さんってことは、ツヨシの奥さん......
ドキドキして呼吸が乱れてしまう。

けれども彼女はそんな私に気づかず、満面の笑顔で気さくに話しかけてくる。
綺麗なだけでなく、愛想もいい.......ツヨシの奥さん。

オシャレな会社に勤めていて、女だけど出世していて、
イクメンの旦那がいて、可愛い息子もいる。

私、理想の人生を楽しんでいますっていう
目の前の女性の雰囲気に圧倒されていく。
羨ましい。けれども平静を装って、彼女に挨拶をした。

「初めまして。サッカークラブの父母会代表をしているアサコです
マナブくん、サッカー上手ですね。コーチも期待してるみたいですよ」

「ありがとうございます。私、ジョギング一緒にしたりして、応援してるんですよー。
そうそう、この前フランス本社に出張行ってきたんです。こちらお土産。
ママたちには、コスメセット。子供達には、クッキー」

「ありがとうございます。子供達へのクッキーは、私がコーチに許可をいただいてから、
休憩時間に配りますね。ママたちへはもしよかったら、マミさんがお配りください」
「ありがとうございます。じゃあ、ご挨拶も兼ねて配らせていただきますね」

コスメセットを配り始めると、ママたちは一気にマミさんのファンになっていってるよう。
彼女が中心になって美容の話で盛り上がっている。

その様子を見ていると、女性としての華やかさでは
思い切り負けた気分でいっぱいになった。

だけど私は彼のことが好きだし、愛してる。彼への愛情は負けていない。
私には私の魅力がある。ツヨシが私の魅力を引き出してくれた。

だから、私は女性としても負けないはず。
最愛の男性の妻を目の前にして、
改めてこの恋愛への真剣な決意を静かに固めて行く。

次の日の朝、ツヨシからのLINEがきた。
「アサコ、ごめん。昨日俺、急な休日出勤になって。
アイツ、悪目立ちしてただろ?周りの雰囲気や空気読まないからさ
しかもピンヒールで行ったらしいね。ピンヒールで芝生痛めてない?」

「保護者席は芝生じゃないから大丈夫だよー。
マミさんは、私みたいにグラウンド走り回って子どもたちへのサポートはしないで
保護者席でママたちと話していたからピンヒールでも問題なかったよ。
ママたちにコスメをプレゼントしてくださったよ」

「またかー。アイツはそうやって、プレゼント作戦で自分の味方を増やすんだよなー。
アサコは相変わらず一人でお茶出ししたりしてたのか.......お疲れ様。ホント、頑張り屋さんだよな」

「ありがとう。好きでやってるだけよ。子どもたちが可愛いから」
「そういうアサコの控えめな性格、大好きだよ。愛してる。

今週のデート、楽しみにしてて。アサコが行きたいって言ってた、
神楽坂の和食屋さん、予約取れたよ」
「えー、あの有名店の予約、よく取れたね。ありがとう。楽しみ」

ツヨシとのデートは、週1回はランチデート。
平日、彼のオフィス近くで隠れ家っぽいレストランでランチ。

それ以外に、月1回はディナーをしたり、
夜景を見に行ったりするデートを重ねている。

お互いの家族にはバレないように細心の注意を払いつつも
順調に逢瀬を重ねている。結婚して、息子が生まれてから、

自分が女性であることを忘れなくちゃダメだと思い込んでいたけれど、
今は女性である自分を楽しんでいる。
最高に幸せ。この幸せが永遠に続けばいいと真剣に願う毎日。

待ちに待ったツヨシとのディナー・デート。
お店で予約名を告げると、奥の個室に案内される。
すでに彼は到着していた。

「アサコ、今日も可愛いね。
忙しい中来てくれてありがとう。今日は楽しもう」

そう言って、笑顔で私を出迎えてくれた。
私のリクエスト通りのお店を予約してくれただけでなく、
わざわざ個室を取ってくれたことに感激のあまり言葉が出てこないから、

黙って大きくうなづいた。食事は本当に美味しい。
一品、一品、感動する料理。幸せいっぱいな瞬間。

お酒も進んで、ほろ酔い気分で食事を楽しむ。
デザート中に彼が、小さな箱を私に差し出してくれた。

「アサコ、付き合って3ヶ月目記念だよ」

開けてみると、有名ブランドの新作ネックレス。
感激のあまり、顔が真っ赤になってしまった。
だから思わず手を頬に当てた。
そんな私を彼はニコニコ私を見つめてくれている。

「アサコ、赤くなってて可愛い。
ねえ今、ネックレスつけてあげたいな」

彼はそう言いながら、私の背後に回り、ネックレスを私につけてくれる。

「相変わらず、細くて綺麗な首もとだね。ネックレスが映えるよ」

思わず、泣いてしまう私。彼が笑いながら私の頭を撫でてくれる。
こんな幸せな日々がずーっと続くと思っていた。

2020年3月、コロナウイルスの大流行に伴い、都知事が自粛要請を促した。
多くの企業はテレワークに切り替えた。

電車はガラガラ。デパートや飲食店は自粛により営業停止。
東京の街並みはがらーんと静まり返った。

彼の会社もテレワークを推進することになり、彼は自宅勤務となった。
もちろん奥さんも自宅勤務。
当然、私たちは今まで通りに会うことなんて出来ない状況となった

「自宅勤務が終わったら、必ず一番に迎えにいくよ。
それまでは、LINEで繋がろう」
彼はそう言ってくれた。辛いけれど、彼を信じていくしかない。
LINEで絆を深めていく努力を丁寧に続けていくことを決めた。

ーーー続くーーーー