ここのところ、皮膚科と関係ない記事が続いていました。そろそろ皮膚科のネタを書かないといけないかな?
皮膚腫瘍の診断に必要な器具としてダーモスコピーというものがあります。単に拡大して見るだけでなく、角質層での光の反射を受けずに観察できるので、色素パターンなどが綿密に見えるのです。
これが当院で使っているダーモスコピーです。

右のものがDermlite 100で、その場ですぐに観察するためのものです。左がDerma 9500で、写真に撮って画像を保存できるものです。
ちょっと、この写真を見ていただきましょう。足底のやや大きめのホクロです。この大きさだと「悪性のホクロじゃないか!?」と心配になったりします。

これをダーモスコピーで観察してみます。

手掌や足底の皮膚を拡大すると、小さい筋が走っていて溝の部分と丘の部分があることがわかります。この写真では溝、つまり皮溝の部分に色素があるのが観察され、良性のパターンであることを診断できます。丘の部分、つまり皮丘の部分にベタッとした感じで色素があるとホクロの癌を疑わなければならないのですが、この写真では皮丘には点状の規則正しい斑が観察され、これは問題ないです。
このように、ダーモスコピーのおかげで、皮膚を切って取ったりせずにある程度は、良性か悪性の判断ができます。私が皮膚科医になった25年前にはなかった技術です。
私が天理よろづ相談所病院の皮膚科部長になったときは、医局費でDermlite 100を買い、部下たち全員に持ってもらいました。常にポケットに入れて使い慣れてもらうためです。いくら便利な機械でも、数多くの皮膚腫瘍を観察して自分の「観る目」を養わなければ正しく診断することはできません。
ダーモスコピーは皮膚腫瘍以外の皮膚疾患に対しても便利な使い方があるのですが、ちょっと話が長くなったのでこの辺にしておきます。

これえだ皮フ科医院
院長 是枝 哲
http://koreedahifuka.com