第9回「村上屋でづんだ餅」 | これうま!だてうま!

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坂本サトルがTBCラジオ「あガLINE」でご紹介した仙台のおいしいもの「伊達美味(だてうま)」のレポートBLOGです☆

仙台の名物と言えば牛タンと笹かまが
誰もが認める不動のツートップでしょう。

そして多くの人が3番目にあげるのが
「づんだ餅」ではないでしょうか?

ここで「あれ?『づんだ』じゃなくて『ずんだ』でしょ?」
と思ったあなた。
昨日までの僕もそう思っていました。

しかし、今はこう思うのです。
「ずんだ」と「づんだ」は別ものではないか?と!


そんな風に思わせてくれた「これまでと違ったづんだ餅」を
食べさせてくれたのが今回お邪魔した「村上屋」さん。



この村上屋。
餅専門店として今の店名で創業したのが1877年。
それ以前は、あの伊達家御用達の菓子司だったということで
この仙台の歷史を影で支えてきた、
老舗の中の老舗なのでありました。




 平日の穏やかな午後。
 初めてのその街の美しさにすっかりはしゃいでしまった私は
 ずいぶん遠くまで歩いて来てしまったようだった。


 「少し休もうか」
 独りごちたあと、急に甘いものが欲しくなって
 ふと目に止まった「づんだ餅」と書かれた暖簾の
 鮮やかな若草色に誘われ、その店に入る。


 引き戸を『トン』と閉めると、
 そこには丁寧に磨き込まれた木製のテーブルが4つならんでいた。
 広すぎず、狭すぎず、
 今の私の疲労感を癒すのにちょうどいい空間であった。


 向こうのテーブルには何やら年の離れたカップルが座っていて
 言葉少なく、しかし幸せそうにお茶をすすっている。

 (坂本サトル「望月教授の餅好き徒然草」より)


…ま、そんな本などないわけですが、
思わずそんな小説の序文を書き出してしまうような落ち着いた店内。
こんなお店が近所にあったらいいだろうなあ。
(ちなみに写真の2人は伊達美味スタッフ)


お店のご主人は4代目の村上康雄さん。
康雄さんは先代のお孫さんにあたります。




本来、4代目になるはずだった先代の息子さんが早世し、
跡継ぎを失ったかに思えた村上屋を継いだのは、
なんと、東京で生まれ育った先代のお孫さんだったのです。


「小さい頃、夏休みなんかに母の実家(このお店)に遊びに来るでしょ?
 そうすると毎日祖父に手伝わされるわけ。
 そのお店が跡継ぎがなくて閉店しそうだっていうからね。
 ずいぶん悩みましたけど、村上屋をなくしちゃいけないと思いましてね。
 24才の時に東京の会社辞めて、仙台に来ちゃったんですよ」


…と、村上さんは綺麗な標準語で話して下さいました。


おじいちゃんのお店を継いだお孫さんか。
なんだか泣けてきちゃうなあ。



このお店のづんだ餅が
「他のお店と違う」
「普通のづんだ餅は苦手だけれども、
 このお店のだけは美味しく食べられる」
などと言われるのは、その手間のかかる製法によります。




今まで食べて来たずんだに比べ、色が淡いのは
大豆の薄皮を丁寧に手で取り除いているからです。


薄皮が入ると色が濃くなります。そして傷みやすくもなる。
その傷みを防がなくてはならないから砂糖を多めにする。
結果「ずんだは甘すぎて苦手」という人がいるわけです。
あの皮の感触が苦手、という方も。(それが好きだという方もいますが)


一方、村上屋のづんだには皮が入っていないから
傷みを防ぐための甘味料がそれほど要らない。
よって豆本来の甘みを生かしたコクのあるづんだになるわけです。
皮が入っていないから食感も滑らかになる、と。
これが「村上屋のづんだ餅なら…」のタネ明かし。




それでは早速いただいて見ましょう。
お話しを聞いたあとだと有り難い気持ちになります。


「いただきます!」




元々ずんだ、…もとい、づんだ好きな私。
画像がブレるほどの早さで口に運びます。




…ほーっ。(思わず出るため息)




これは…。


おいしい…。


づんだはもちろんですが、餅が美味い!!
こりゃー他のも食べてみたくなった…
ということで続いてこれも注文!




おしるこ!
粒あん!


これもまたうまーい。
焼いたお餅の香ばしいこと!


結局、づんだ餅とおしるこ、合わせてお餅、計5枚いただきました…。
ダイエット中だと言っても誰が信じてくれようか。




「うちは餅屋なんでね。とにかく餅だけは『村上屋に行けば間違いない』
 と言われるものを作ろうと思ってやってます」


このお店も跡を継ぐ方がなく「私でこの店は終わりです」とご主人。
「『どこかに暖簾を渡せばいいじゃないか』とも言われましたがね
 そんなことしたら味が変わっちゃうでしょ?
 この味のままで終わらせるんですよ」


そう笑顔で話してくれます。
僕には返す言葉もありません。


「本当にうちの餅は美味しいんですよ。
 『餅は餅屋』っていうでしょ?
 あれ、ほんとなんですから」




「私の代で終わり」という言葉を
これまでの取材の中で何度か聞きました。


なくなるものがあれば生まれるものもある
と、思おうとしてもやはりやるせない。




取材中も途絶えることなくお客さんがやってきます。


そんな中、男子学生と思われる青年が1人、店に入ってきました。
おとなしいけど人生を楽しんでるのが伝わるようないい佇まい。


窓際の席に座ってづんだ餅をオーダーすると
うまそうにそれを食べ、また一人で帰って行きました。


ご主人がお祖父さまからこの店を継いだのは、
ちょうど彼ぐらいの年の頃だったんじゃないかな。
彼に事情を話したらこの店、継いでくれないかな。


…いかんいかん。
また小説書きそうになってる。


行く先々で跡継ぎ問題に直面する度、
自分の無力さに呆然とし、
弟に家業を継いでもらっている現状に感謝します。
まっと!(弟の名前です)ありがとう!


それではまた次回!




村上屋
仙台市青葉区北目町2-38
022-222-6687
営業時間:9時~18時30分(月~土)、9~18時(日)

定休日:不定休





坂本サトル
1967年青森県生まれ。東北大学在学中の5年間を仙台で過ごす。1992年JIGGER'S SON(ジガーズサン)のボーカル&ギターとしてメジャーデビュー。1999年ソロ活動開始。精力的なライブ活動の他、楽曲提供や仙台出身のガールズユニット「ドロシーリトルハッピー」のプロデュースも。2012年JIGGER'S SON復活。ソロと平行しての活動を続けている。現在、Date FM「坂本サトル~うたのちから」(毎週火20:30~)、FM青森「坂本サトル ミリオンレディオ」(毎週木20:00~)をレギュラー放送中。
2014年9月14日、渋谷O-EastにてJIGGER'S SONのライブが予定されている。

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