2004年にマキシシングルとして発売した「別れの時」という曲がある。
この曲の誕生は前の年の2003年。
当時、宮城県塩釜市の塩釜女子高校(現在は塩釜高校に統合)に通う現役の高校生が書いた詩を元に歌詞を再構成加筆し、曲をつけて、その子達と一緒に「卒業生を送る会」で歌ったのだ。
最初に彼女たちがみんなで書いたという詩をもらった時には正直驚いた。
「さあ前を向いて進もう」「新しい世界へ旅立つ君」
身も蓋もない。
僕が普段歌詞を書く時ならば避けて通りたい何のひねりもない言葉。
しかしそれがなぜこんなにも刺さってくるのか?
それはその言葉がリアルだから。
「現場からの声」だったからだ。
そこでハタと気がついた。
世の卒業式で歌われる卒業ソングは、「実はとっくの昔に学校を卒業している大人」が作っている曲がほとんどじゃないか!と。
客観的に卒業式という節目を見れるようになった大人の目から見た卒業。
そして、そうやってできた曲を卒業式で使おうと選曲したのも大人(先生)。
書いたのも大人。選んだのも大人。
だから歌わせてる感、歌わされてる感が否めない。一体誰のための卒業式だ?
ああそうか、卒業式は子ども達のためだけではなく父兄や先生のためのものでもあるからそれでもいいのか。
…確かにみんなのための卒業式である。しかし「生徒にとっての卒業式」という目線だけで見た場合、これほどリアルな卒業ソングはないのではないか?
こりゃあすごいことに気がついちゃったぞ!と目からウロコを落としつつ作っていったのだった。
果たして、その年の「卒業生を送る会」で歌われたその歌は、圧倒的な説得力で塩釜女子高校の体育館に響き、歌った在校生、歌を送られた卒業生、先生方、父兄、そして私をポロポロと泣かせた。
とにかくリアルさが半端ではない。「これがほんとの卒業ソングっていうものなんだな」と打ちのめされたような気持ちになったものだ。
翌年にリリースが決定。
レコーディングにはその詩を書いてくれた生徒会の子達も含めた80名が参加してくれた。
一応「坂本サトルのニューシングル」としてリリースされたが、僕が歌っているのは1コーラスだけ。
2コーラス目からは女の子達がメインボーカルとなり、そのまま僕は出て来ない、という異色の作品である。
その後、ありがたい事に、毎年のように卒業式や卒園式で「この曲を歌いました!」という声が届く。
今年は大阪府堺市にある安井小学校から。
安井小学校 webサイト担任の先生から丁寧なメールを頂いた。
22名の6年生が卒業式に向けて毎日練習しているとの事。
じーんとしちゃうね。
ソングライター冥利に尽きます。
「歌を歌っていて(作っていて)良かった」と思えた瞬間が、自分自身を支えてきた。
今回もまたそんな気分を感じさせてもらっています。
ありがとう安井小学校のみなさん!そして当時の塩釜女子高校生徒会のみんな!
想い出に残る卒業式になりますように。
~ 以下、余談 ~
ドロシーリトルハッピーのプロデュースを依頼された時に、「卒業生を送る会」の強烈な印象が残っていて、「この曲は絶対ドロシーに歌って欲しい!」とカバーしてもらった。
安部潤氏の秀逸なアレンジも手伝って、想像以上に素晴らしい作品となりました。
興味がある方はぜひ。
■デモサヨナラ2012