三矢の訓え篇『オキツネ横丁物語』 | HEVENSLOST/軍神の遺言

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そして愚痴などを呟き、叫び、
日々を生きる糧としたいです。

筒香真白は元警察組織長官、風光鈴音の『鈴音詠唱』により人型概念から人間となった。

 

「通帳にはあるんだよ、それと真田のおかげ、沖津と俺にって金だって」

「だがうろついてる、と」

「先刻遭遇したから通帳を二度見した」

「恒田、筒香真白をこの街に近づけると駄目だろう、4人を呼んで対策を練るか」

「そう言うと思ってもう呼んである」

 

オキツネ横丁、町内会長の恒田三郎太、副町内会長の沖津善芯、そして4人の幹部が勢揃いとなった。時刻は午後14時。

東野信次、西巻寛太、南条源太、北里辰春の4名が合流となる。

「聞いていると思うが例の者が付近にいる。一度警告をしておく、もし其々の管轄で情報が入り次第、即刻俺か沖津に報告をしてくれ。真田は街医者として居てはくれるが是以上俺達は頼れない。警察本部も昼間部隊に新人が入った、夜間部隊も強度を上げている。この街は俺達の街だ、例の者等に是以上介入されれば何処かで綻びが出る。頼む」

4人が恒田の言葉に黙って頷き立ち去る。

「警告は俺か」

「町内会長の俺がやる。沖津には真田の補佐を頼みたい」

「分かったよ」

「ああそうそう、観田寺から御礼状が沖津宛に来てた」

「そうか、ありがとう」

 

恒田が会合の場から出てすぐに向かったのは商店街の店舗。

「どうも、いつもお世話になってます恒田さん」

「例の者が付近にいる、また来るだろうからその時は」

「分かってますよ」

「いつもすみませんね」

こうして恒田は店舗全部に顔を出し、その後は自分の本来の仕事場、公民館にと戻る。

「俺達はどうでもいいんだが、街の者が困る」

そんな時すぐに恒田に連絡が入る。午後16時15分。

「北里、どうした」

『例の子供の目撃者がいる。北ブロック5番地』

「何やらかした」

『実名のままだな、街中で平然と便所』

「公衆トイレまで知らないとは」

『例の清掃会社の班が来て一悶着、陰陽寮の海神さんが社長だろ』

「あー…まずい、ぬかった」

『事態は収拾しているが今後その班員から噂が広がればどでかいのが来る』

「何とかしておく、先手を打たないと。悪かったな」

『俺達のことは気にするな』

陰陽寮、陰陽師の布陣が最強となった今、その頂点にといる海神が経営している清掃会社もまた、精鋭部隊と名高いご婦人の方々。特に班長という華芽という女性が取り仕切るという班が来るとなれば街は綺麗に清掃がとなるが、噂好きという女性陣なのでオキツネ横丁関係者には手強い相手でもある。

「以前、筒香真白は清掃会社で数日勤務。どでかいの、か」

 

北里辰春が筒香真白の腕を掴む。筒香真白が無言の理由は食事に夢中。

「おい、それどこで手に入れた」

筒香真白は返答がない。北里辰春は振り返る。

「彼女たちから奪ったか、平然と盗みも働く人間の子供などどこにもいない」

筒香真白が手を止める。

「だれがにんげんだ」

「…そうだな、もうお前のような者は人間とも呼ばれなくなった、俺達と同じだ」

「おまえもがいねんか」

北里辰春は返答しない。筒香真白を北ブロック境界より外に放り投げ、北ブロック巡回に戻るという時に恒田三郎太に連絡を入れていた。

 

拝啓、沖津善芯殿

 

観田寺副住職の禅でございます。住職はしばし多忙な為、私が代わりにと筆を執りました。住職、観田道人と私とで話し合いの場を持ち、彼女に『真知』という名を受け取って頂きました。真知殿は住職が見込んだ通りの方です。御神体様と会話が出来るようで、それに札、絵馬、御籤等の販売にかけては神がかりでございます。

沖津様には大変に感謝を申し上げたいと住職が申しております。いずれ沖津様も我が観田寺にお立ち寄りください。その際に、今の真知殿をご覧頂ければ幸いです。

なにぶん、我々は寺を離れることができません故、ご足労をお掛け致します。

この度は誠にありがとうございました。

敬具

 

沖津善芯がそれを読み、安堵としている。その礼状を懐へとしまいながら、真田世論が街医者としている個人医院にと入る。

「真田、もうそろそろ引き上げていい」

真田世論は帰り支度の途中。街医者としての勤務時間は午前10時から午後15時まで。

「ちょうど帰ろうとしていたところだ、それと」

「緊急となれば俺が補佐をする、真田は不動産業も兼任している、以前のように自由に行動もできないだろう、申し訳ない、不自由な思いをさせてばかりで」

「俺はこの街が好きだ、住人もだ。不自由な思いはしたことはないよ」

 

闇医者2名が以前、街医者として常駐。沖津善芯経営店舗にも常連として来てはいたのだが当初は全うな客、しかし003という今は真知となった彼女に怪我を負わせたという時点で沖津善芯は策を練っていた。ちょうどその頃その2人が未だに麻薬売買に関与、隣の店舗が警察本部夜間部隊に潰されたというのはその2人が足をつけたからである。

街医者はやはり必要不可欠だった。そこで医術に長けている真田世論が手を挙げた。

 

「最後の患者から聞いたんだが、またあの子供が出入りしているのか」

「恒田が先に遭遇した、先程会合を開いて東西南北4名と対策を講じたばかりだよ」

「沖津、何かいいことでもあったのか」

「真田は鋭いな、003さんの件で御礼状を頂いた」

「とうとう彼女も嵯峨さんのようにか」

「今度様子を見に来てくれとあったのだが、ああすまない、もう帰るんだったな」

「兼業とするにはなかなかだよ」

ここで2人は『世間話』をする。

「萬屋の配達係が元警察組織長官と親睦の深そうな火焔紅焔龍という方になった、以前小耳に挟んだのだが、元長官と示談交渉をしたという相手、仲介者があの陰陽師じょうの言神殿」

「報告をしておかないといけないな、買い出しは全部恒田担当だから」

「もう知っているだろうが筒香真白は既に人間だ。例の4人を集めたとなれば恒田のことだろう、もう手を打っただろうが」

「自分は19歳だと虚言も吐くんだがね」

「成人扱いでいいだろうな、19歳のお子様として丁重に扱おうか」

真田世論が鞄を持ち、沖津善芯と共に外に出る。

 

「…おい」

おんようのつかさ、跡地では新規建物の建設作業中。

建設業者という彼は萬屋店長、逢坂桐蔭、彼は仕事を邪魔されることに非常に非情な方である。

「おいクソアマ」

彼はきちんと言葉を聞いているのだが、あくまで再び建設にと没頭する。

「おいクソガキ」

再び彼は無言で建設作業を続け、途中で電話が鳴ったので出る。

「はい萬屋です」

その言葉に筒香真白が更にブチ切れる。

「きこえてたんじゃないか!」

「少々お待ちください」

電話中断した萬屋店長が筒香真白を蹴り飛ばす。

「失礼しました、途中経過ですね?工期は1週間としましたが1日延びるかも知れません、別件で予約配達があったので1日潰れてしまうかと、では」

電話を切って萬屋店長が見る。新たに植え直した街路樹に激突している子供が気絶中。

「せっかくの街路樹(商品)に傷をつけてしまった」

 

筒香真白が意識を取り戻した時には周囲は暗く午後19時。尿意を催した彼は平然と排泄行為を街路樹の下でし、その時空腹を再び感じるのだが、

「おい」

目の前に萬屋店長が立ちはだかる。

「俺が植え替えたばかりの街路樹(商品)が根本から腐る、1本いくらすると思ってる?綺麗に洗っておけ、保護剤、栄養剤、散布費用も請求する、総計6500円だ」

金の価値が分からない筒香真白は持っていた80円を仕方なく出す。

「筒香真白」

萬屋店長が実名を呼ぶ。

「警察の常連客なのかお前は」(営業的思考)

「は?」(警察という単語に弱い)

「被害額、業務妨害内容と共に通報しておく。夜間部隊稼働中という頃合いだ、すぐに優秀な巡回班が迎えに来る」

萬屋店長が通報をする。

「すみません、萬屋です。例の筒香真白から今まで絡まれていて困っています」

「やかんぶたい」

筒香真白が逃亡。

「たった今逃走したところです、ちょうどそちらへ向かってます」

 

筒香真白は歩き回り、隙を見てあらゆる店舗から商品を盗むということを学習した。

「にげればいいだけだ」

ただ、どこへ行こうにもどこにいようとも、すれ違う人々から避けられるか逆に嘲笑される、罵倒をされるという扱いばかりで筒香真白はそれがないというあのオキツネ横丁にと戻る。

 

「父上、僕も兄上と同じように学校に通いたいです」

「直は6歳になる、今度の春から学校だよ。どういう学校がいいんだ?」

「僕は兄上のような、でも父上のような、」

「銀は医学系と経済系だが、父さんのようにとなると難しいな」

「僕には無理ですか?」

「いいや、無理ということはないよ。でも学校という場所はまず人間関係のことから学ぶことになる、友達ができたり、級友となった子たちとうまくやっていくというのが最初は難しいな」

「頑張りたいです」

「そうか、直は本当に何にでも熱心でいい子だな、銀はちょっと熱心過ぎて真面目過ぎるから堅物だよ」

真田世論とその息子、真田素直という2人。

「父上が肩車してくれるなんて嬉しいです」

「いずれ直も身長が大きくなるよ」

「高いところから見ると世界が違います」

「父さんも昔はそうよく思ったものだよ」

 

オキツネ横丁に戻った筒香真白は嫌悪感のない場所として自由気ままにと歩いていた。そこに連絡を受けた恒田三郎太が来る。

「筒香真白」

その声には今までにない恒田三郎太の凄味があった。

「おまえはつね」

「金輪際この街に立ち入るな、即刻警察本部に突き出す」

「なんだとクソアマ」

「生きるなら他の場所で生きろ、今すぐ出ていけ」

「クソア」

「失せろ」

恒田三郎太の冷酷な目線で筒香真白は恐怖を感じた。筒香真白は一度立ち去るが途中で男女2人組とすれ違う。

「依頼料」

「あんな小物相手で600万か」

 

赤城大和が連絡を入れている。

「ああ俺だ。やはり筒香真白の後の2件の殺人の件はシロ。だがかなり窃盗罪を重ねてるんで武尊長官と相談して陰陽寮トップに采配を。おお、なるほど」

 

「久しぶりになるか」

「おまえがなんできた」

「他に誰もいないからだ」

「クソアマ」

「私も仕事だから来ただけだ、終わればすぐに帰る」

「しごとだと」

「行ってもらう場所がある」

「は?」

「北の街だ」

 

年月は流れていた。

「とうとうぼくはもどる、そしてせかいをつくる」

陰陽寮の目の前で解放された。最後にあいさつくらいはしてやろうと中に入る。そこで最初に遭遇したのは開智だった。

「…もしかして筒香、か?」

「おまえだれだ」

「無理もない。開智だ」

「は?」

「外見は人間になっても変わらないんだな、もう俺は16歳になったが」

「は?」

「呼び出しに応じてか?初めてお逢いするだろうが阿修羅様だ、あまり失礼のないようにな」

あしゅら?筒香真白はうろうろとする。

「やあ、初めまして。みんなからよく聞いていたよ、わたしが五月雨阿修羅だ」

「おまえ、なに」

「陰陽寮の裏の補佐、統括を任されている。引退しているものの陰陽寮にいる蝉時雨、言神の2名がわたしの弟子なのでね」

「おい、わだつみは」

「すぐ終わるから黙ってくれるかな」

「なんだ」

「出て行ってくれ」

「とうとうぼくがこわくなったか」

「即刻出て行ってくれ」

「すぐにかえろうときめていた」

 

陰陽寮を出て筒香真白は歩く。オキツネ横丁を目指して歩く。しかしオキツネ横丁は存在していない。目の前にあるのは、普通の商店街である。誰も狐面を被っていない。

 

ここでなら僕は生きていける。他の場所より簡単に。沖津善芯、恒田三郎太、真田世論。あの3人を今度こそ僕がこき使って本当の王となる。

 

「かなりの稼働率です、法律にここまで精通している方々は他に居ないですね」

「これで法律面では固められた、あとは椎原さんにお任せをしよう」

「少々遅れるそうですが問題ありません」

「信楽さん、俺、頑張ります」

「…はい、…頑張って、下さい…?副官房長官」

 

「すみません遅れました副官房長官」

「椎原さん、後はお任せします。俺はこれから信楽さんと裁判所の方へ行きます」

「了解しました」

「椎原さん、後でまたあれ、お願いします」

「…は、はい、脚立、用意しておきます」

 

「うわ~☆初めて来たよ」

「ほれほれ、あの子っしょ。早く声掛けてきんしゃい」

「う、うん」

 

「ひょ、氷河龍、さん、あの、」

「ん?ああ、以前お逢いしたことがありますね」

「は、初めて観光を、たまたま、知り合いが非番だったので」

「そう言えば、あなたはどういうお仕事を?」

「俺は、監視塔の番人でして、アビス魔界入り口で一番先に侵入者を発見するという仕事です」

「それは大変なお仕事ですね」

「氷河龍さん程ではないです、あ、俺、烏間烏丸という名前です」

「私もただ副官房長官専属の政務官護衛ですから、特にそれ程大変ではないですよ」

「…あ、ちょ、ちょっと待っててください」

「はい」

 

「…おいてめえ、何だその汚ねえ格好で氷河龍さんに何かするつもりか」

何だこいつ、いきなり。

「さっきから見えてたんだが放置しておくかと思ってたんだがよ」

「俺達今日非番なんだ、烏丸とかと観光で来てんだ、邪魔せんといて」

「俺達元々式神じゃねえしな」

「…あ」

「や、やば、しづが来ちまった!!」

 

「逢坂さんはまたお仕事でアビス魔界に来ますか」

「行くと先程言ったんだが」

「今度は何のお仕事ですか」

「定期便の配達」

「…ん?」

「桐蔭、しづ君にほれほれ」

「ああ…志津史、RISINGSUN、何処だ」

「…あ、ええとここです」

「それをぐぐっと」

「はい、ぐぐっと」

 

「よお出禁、出禁だもんな、しゃーねえな」

いきなりそいつが来た。だれだこいつ。

「ほいっと」

いきなり体に痛みが。

「うぐ、」

「ヤグルシでちょこっと殴っただけじゃん、頭を潰してねえんだから感謝しろ出禁。わりいな、概念相手でも俺の武器はガンガン痛むだろ、次またうちの店に来たらそのドタマ、ヨウカハイネンで貫いてやる、じわじわがいいだろ?」

何なんだ、こいつ。

「シヴァさん、俺がこいつ、」

「う、うわー、し、しづ君、タンマタンマ!それ駄目!RISINGSUNだろ!桐蔭!!」

「お前のせいだろう、俺の制止も振り切る程だ」

「駄目だって!ああもう!し、しづくーん、桐蔭がねー、…ほれほれ」

「ああ、そうだ志津史、これ味見してみるか」

「…ん?」

「チョコだ、いろいろな味があってこれはバナナ味」

「僕にくれるんですか?」

「シヴァが試食して、志津史にはこれがいいだろうと」

「いただきます、シヴァさんもありがとうございます」

「さあさあ行きましょー、俺も初めて休み貰って外の観光すんのもおもしろーい」

「お前は働き過ぎだ、いつ寝てる、いつ休んでる」

「店番すごい楽しいし、在庫とかチェックとか、発注は俺は不向きだから氷球先輩と天龍先輩にお願いしてるんだけど、何か通販の方が忙しくなってるみたいで紅君が配達に行く時よく吐血してたりする」

「まあ商売がうまく行ってるなら」

3人が歩いていくのを僕はお腹をおさえながら見る。途中であいつがこっちを向いた。

「命拾いしたな、出禁」

クソ、何だ、うれしそうな顔をしやがって。

 

がいねんにもどれた。わだつみもしんだ。にんげんだからあたりまえだ。ぼくはしなない。ぼくはちがう。うまれながらのえりーと。がいねんせかいにもどってせかいをつくる。ぼくはうえにてをあげた。

「でない、がいねんなのに、かんしょうは、れべるさいだい、」

ぼくはえらばれたがいねん、えりーと、おう、かみ、つつごうましろだ。