こーんな感じなんですよね、今の紅焔龍さん。配送担当だから動きやすいようにってジャージばっかだし(前はちゃんと警察組織にいたからそれなりだったけど)、
実家が金持ちなのでちょっとボンボン思考だから、トイレを絶対に便所、とか言わないみたいな、ね。
「うう…俺面接とかしたことないって」
「でも天神龍さんがお前にってんだから頼むよ、私がやっちまうと贔屓とかになるだろ、
店の方は任せとけって」
「逢った事ないんだぞ」
「おい、それでよく警察やってたな」
ということで、面接時間が午前11時だったんですが。
「あの、面接に伺ったんですが、焔球と申します」
紅焔龍、ぎょっとなる。イメージとして氷球、が頭にあるから。
(焔球と私は双子だ、あいつはただの墓地清掃係ってだけの火の玉野郎だからよ)
という氷球からの言葉を信じ?紅焔龍さん、対応。
「ああどうも、こちらで配送担当と昼間の店番兼務の、火焔紅焔龍、…です」
「あ、すみません、いつも誰にも見えないようにとしていた癖があったので」
そこでどどん。
「私服でいいと伺っていたので」
「あ、ああ、…し、身長いくつですか」
「身長ですか?この前の健康診断とやらで180センチと言われました」
副官房長官をしているリンネは183センチですが、紅焔龍さんも178センチ、という感じで体育会系です。
「もしかして面接の前に身長体重とかですか、そうか…清掃会社の時は何も言われなかったのですが、不適格でしょうか」
「ああいや、ええと、お話を伺います。こちらへ」
「失礼致します」
ちょっとした休憩室です。
「あの、荷物を置いてもよろしいですか」
「あ、ああどうぞどうぞ、椅子の上に」
「では失礼致します」
そこで紅焔龍、ん?となります。
「あ、どうぞ、座ってください」
「先にいいんですか」
「え、ええ」
「では失礼致します」
紅焔龍が立っていたままだったので先に座らなかったというだけなのですが。
「ええと履歴書なのですが」
「すみません、もし誤字脱字などがあれば指摘をしてください。それと別紙にとさせてもらったのですが、保持している資格です」
紅焔龍、ぎょぎょっとなる。
資格コレクターですからね、焔球さん。
「ちなみに、萬屋で勤務したいという志望理由、なのですが」
「姉から聞いていたのですが、かなりやり甲斐のある仕事であると、それに天神龍様か らもですが、人手不足だという事で、ならばと、実は墓地清掃係がもう1人おりましてその方がフルタイムで勤務したいという希望もあったので、ダブルワークも可能と伺っていましたので、それで応募とさせて頂いた次第です」
「では昼間をこちらで、他の時間はどこかでと」
「紅焔龍様が配送担当と伺っておりましたので、兼務となると厳しいかとこちらが勝手に判断をしてしまって申し訳ないのですが、なので昼間をこちらで、夜間はそのもう1人のフルタイム希望者の入れない時間帯を担当することが可能だと社長からも了承を得ていたので」
「助かります」
「そうですか、よかったです」
「で、うちのシフトリーダーをしている氷球、とは双子だとか」
「はい、自分の方が弟となります」
「あまり、似てないですね」
「そうですね、性格もあまり似ていないとよく言われます」
(紅焔龍さんもう頭がカオス。ドSな氷球とは全然、対応が違うから!!自分を様、とつけてくれるところにぐっときている)
「多分この販売士っていう資格でばっちりだと思います、後は昼間の店番やってる氷球からしごいてもらえば大丈夫ですね、俺なら採用としたいんですけど、実質、今の店長代理を天神龍がこなしているので、結果は明日の朝で大丈夫ですか」
「大丈夫です、実は今日と明日と2連休なので」
「じゃあ少しだけ、あ、本日はご足労頂き、感謝致します」
「いいえ、こちらこそお忙しい中貴重な時間を割いてくださり、ありがとうございました」
で、その後です。
「あ、氷ちゃん!!」
ぎょっとなりすぎてる紅焔龍さん。
「おお、焔球じゃねえか、面接終わったんか」
「うん!そんでついでに買い物して行こうかなって、さすが氷ちゃんの働いてるお店って感じだね、面接してくれた方がすっごくかっこよかった…龍族の方ってみんなあんなにかっこいいの!?」
「えー、紅だろ、どこがかっこいいんだよ」
「何かもう絶対意中の人がいるってビビッと来た!駄目だ、僕の好みのタイプ!」
「おい、勘違いされっぞ」
「ああ、多分ね、ファンが多いと思うんだ…もう清掃会社の方々とわいわい恋バナで盛り上がって楽しいんだよね、なので、僕は人見知りを克服したんだよ!」
「そんで何が買いたいんだよ」
「蝋燭100本とマッチ20箱」
「何に使うんだ?」
「実はさ、清掃会社の皆さんが百物語しないかって言うから、それで僕も墓地清掃やってる時に結構話してる方々の話でもと思って」
「こええよ」
「あああと皆さんにお土産が欲しい、チーフの方のお宅にお孫さんだってさ」
「ああなるへそ、ならこれとかこれとか」
「うんうん、さっすが氷ちゃん」
茫然自失、となっている紅焔龍さんでした。
①ドSの氷球を氷ちゃんと呼んでいる
②氷球はどう見ても身長が低い(実は145センチ)のに焔球が180センチ
③墓地清掃やってる時に結構話してる方々、って
④自分を『僕の好みのタイプ』と言われた時の雷撃
焔球さんが帰った後に、紅焔龍さん、おそるおそると聞いてみました。
「あ、あのさ、あの人、」
「ああ火の玉野郎だよ」
「いやいや、ど、どういう人」
「あー?焔球だろ?だから私の双子の弟だろ?で、墓地清掃係やってるだろ?ああそうそう、人見知りだからな、誰にも見えないようにって隠れてんだよ、隠れてるっていうか姿を透明にしてるってだけだな、後はその火の玉野郎ってとこだよ」
「いやいやいやいや、お、お前を氷ちゃんと呼んでただろ!?」
「昔からの癖だろ」
「し、身長!お前低いのにあの人俺よりでかい!」
「しゃーねえだろ、性別がちげえし」
「ぼ、墓地清掃の時に、結構話してる方々って」
「幽霊だろ、お化けだよ」
「お、俺を、なんか、好みのタイプとか、…聞こえた」
「あーそれは誤解だ、あいつ、他人の恋愛事情とかにめっちゃ燃えるんだと、ほれ、火の玉野郎だからな。恋バナが生き甲斐とか言ってたし、死ねよな」
「うっわ、双子の弟に対してそれはないぞ!」
「でもまあ焔球に好かれたんだからな、やばいぞ」
「えええええええ」
「絶対つっつかれるぞ、どなたかと恋愛なさった経験はー?どうすんだよ、やべえな、過去の経歴がばれたらばれたで最高にノリノリであいつ、突っ込んでくるぞ」
「やだやだやだやだやだ!」
「でも採用すっかどうかはお前じゃねえしな」
「い、いい人だった…」
「ならそれを天神龍にしてくれ、ああそれとこれ、急ぎで配送だと」
「う、うええええええ」
「頑張れよ、焔球相手に」
勿論、焔球さんは採用になりましたよ☆