ステイタス:ゲーム初心者元就君とオタクな無動君

 

「ふんふふーん」

無動君がご機嫌よさげという感じです。

「五馬、何かいいことがあったの」

「ああ、実はな、俺が今ドはまりしている漫画の最新刊が今日届くんだよ」

「漫画かあ」

「もう勉強どころではないよな、あー早く帰りたい、もう届いてる筈なんだ」

「え、どうして分かるの」

「俺、ネットで買っててさ、限定の特典がこれぞってやつ、そんでスマホでちょちょっといじっておくと、配達済ですよって連絡が来るんだよ、そんでもう到着してるってあったから早く帰りたいんだよな」

「便利だね、すまほ」

「時と場合によってだな、うあー読みたい読みたい」

「どういう漫画なの」

「青エク、ああ、青の祓魔師っていう漫画の最新刊の31巻」

(ちょうど私がこの間読んだやつなのでちょっと書いてます)

「31冊目まで来てるんだね」

「うん、序盤は泣けたなあ、いや中盤も、アニメの方もあったからいろいろな角度からうわーとなるんだ、そんでその最新刊31巻のメインな方ってのが俺の推しなのよ」

「へえ」

「あ、興味あるなら、暇だったら帰りにうちに来いよ、見せてやるわ」

 

という事で、無動君のおうちへ元就君が来ました。

 

「きゃほー!オセオラ!」

「ん?」

「表紙が俺の推し!うひゃー」

「…お、おじさんだね」

「すげえんだよこの人!超優しいし超料理出来るし、あーでも、表紙、か」

「どうしたの」

「ああいや、そう、だよな…」

 

「読まないの?」

「何か、勇気が出ない…顔を焼いてすぱこーんとジャムおじさんに取り換えて欲しいっていうか、もうバタコさんにちょっとしたパン工場見学をお願いしたいみたいな」

「え、誰」

「勇気りんりんってやつ…あー」

「どうして勇気が出ないの、あんなに読みたいって楽しそうだったのに」

「…今、此処で、読んでも、いいのか」

「ああうん、じゃあその、俺には何かお勧めの本とか」

「ああそうだな、うーん、ああ、すげえ笑える漫画がある、そっちも今度最新刊が出るんだけどさ、すげえ読みやすいから読んでみ」

 

元就君は、『月刊少女野崎くん』を借りて読んでいます。

無動君は、青エクの31巻を読んでいます。

 

「ぐす」

 

元就君がぎょっとなります。

そそそ、と隣の無動君を見ると、もう涙垂れ流しという状態です。

 

そして、無動君が31巻を読み終えました。

 

「どうだったの?面白かった?」

「俺、もう駄目だ…」

「え」

「オセオラが、優しすぎた…」

「ああ、さっき優しいって言ってたし」

「そうか…あの優しさってのは、そうか、ああいう過去があってこその優しさなのか…時として優しさって残酷だとか言うけど、もうオセオラの優しさって異次元だったんだな、実は普通にという所からの優しさか、ああ、だから俺はここまで好きになれたんだ…」

無動君がティッシュで鼻をかんで、ぐっしゃぐしゃという顔を何とかしています。

「あ、悪い、ちょっとそこの13巻貸して」

「ああうん」

 

元就君が唖然となっています。

「どははは、あー笑えるなあ、つか、どーこかおかしいんだよな、ああそうそう、今のところの最新刊でちょい変化があったんだよな、うししし」

さっきまで号泣という状態だった無動君が爆笑としています。

「もうちょいかな、あー最新刊で少しは野崎くんが変わってくれることを祈る…!つかいいよな若松君、バスケ部なのにトーン担当ってどんだけ?体育会系なのに繊細ってのがいいな、しかもまさかのまさか、結月が恋愛スキル皆無とか、うあー」

「あの五馬、どういう切り替えなのそれ」

「切り替え?」

「さっきまで泣いてたのに今はすごく笑ってるってのが」

「あーそうだな、現実逃避」

「え」

「俺ってどーんと落ち込む漫画が好きでもあって、こう爆笑するしかないっていう漫画も好きでもあるから、こっちのな、31巻で俺は一度メンタル的に死んだんだよ、でもそういう所からの復活とするには逆、笑える漫画をって感じだな。

実際ちゃんと楽しみにはしてたんだよ、こっちの31巻。実はこっちの25巻あたりがすげえよかったんだけど、あ、30巻もかな、でも続きは知りたいけど知っちゃうとあんな感じになっただろ、それを挽回するためにはこういう切り替えが必要なんだよ」

「そうなんだ」

「で、おお、5巻まで読んだか、どの子が好きとかってあったか」

「えーと、背景担当の堀ちゃん」

「おお、いいないいな、何処が好きになったんだよ」

「かっこいい」

「どこが?」

「この人だけネクタイを他の人と別のところにしてるし、それと、背が小さい」

「あ、じゃあ逆に野崎君は、主人公のすげえ背が高いって」

「何か親近感が持てた」

「でさ、笑えなかったか」

「笑うとかじゃなくて、ん?という感じ」

「ああそうだよな、俺達と同じ男子高校生、2年生でありながら少女漫画家だし、代名詞出て来ただろ、女心が分かるとかってやつ」

「あったよ」

「なのにどっかで、実は初恋をしたことがない、とか言ってなかったか」

「ああそれもあった」

「俺は野崎君の方で笑える箇所ってのが、若松君って子でさ、野崎君の後輩なんだけど、長年不眠症っていう子、瀬尾結月って声楽部のローレライと異名がある先輩に対して手袋、ってのは」

「あああれ」

「手袋を投げつけるってやつがさ、若松君は根が紳士だから、投げつけずに捧げてんだよな、決闘だってんのに果たし状みたいなのがまるでラブレターだし、

そういうちょっとおかしな世界観が笑える」

「ちなみに五馬はその若松君が推しなの?」

「あ、違うよ」

「え」

「宮前剣さん」

「あ、あれ、どっかで」

「野崎君の担当さんだよ、ああほれ、この人」

「…」

 

元就君が無動君のおかしさ、にだんだんと気付いてきました。

 

「こ、この人のどこら辺が好きなのかな」

「顔だよ顔」

「…顔」

「今はちょっとふくよか~な感じだろ、昔はすげえスタイルよくてかっこいい方だったんだけど、でもやっぱ、今現在のこの剣さんが好き」

「あー、五馬、他の漫画とかアニメとかでの推し、知りたい」

「あ、そう?じゃあそうだなあ」

 

ごそごそ、と無動君が取り出しました。

「これは俺がすっげえやばくなるアニメなんだけど、知ってるだろ」

「ファフナーだ」

「そそ、このファフナーでの推しは溝口さんだよ」

「あの、絶対に死なないねっていうすごいスナイパーおじさん」

「やばいよな、顔がかっこよすぎて」

「ほ、他にもいるの」

「ああやっぱ思い入れが深いから、真壁司令も外せないよな、顔がマジで好み」

「他にはまだいるの」

「あはは、実はこのバーンズ大佐、それと小楯さん、ああ、第二期となるともうやめてほしいって思える程かっこいいのが、この爆撃機の命令してる人と、あとこのウォルターさん…マジでかっこよくないか顔が」

(みんなおっさんなんですよ)

 

「他のアニメとか漫画とかでは?」

「そうだなあ、ああ…俺が今ヤバいだろこの人って思う人がいた、ちらっと思い出して心が持ってかれた」

ごそごそ、と無動君が取り出すは、ファイアーエムブレムです。

聖戦の系譜ではなく、初期のやつですね、暗黒竜とってやつです。

「か、カミュとかかな」

「あーあの人もイケメンだよな、そんで何かちょい悲劇的な、悲恋を代名詞としたような」

「違うんだね」

「ああうん、この第二面の手斧を使ってる城の敵」

(すっげえおっさんですよね)

「顔が好きなんだね」

「うん、顔がめっちゃ好み」

 

元就君がぐるぐるとしています。

 

「一番今この人ってのは、その、他ので」

「ああそうだなあ」

「FF6」

「FF6だったら今ならレイチェルを保護してたって方」

(おっさんですよ)

「顔が」

「うん、ぼんやりだけど絶対かっこいいと思う」

「じゃあ、ドラクエ3」

「えー、3だろ、もうあの人しかいないだろ、ゾーマ」

「ぞ、」

「バラモスでもいいよ、ああでもドラクエ2のシドー、ドラクエ1のあの街にいたゴーレム、」

「ど、ドラクエ5」

「もう外せないだろ、ゲマ」

どこか無動君の推しとしている相手が掴めないという元就君。

「ドラクエ6」

「えー6だろ、ハッサン」

「FF7」

「やめてやめて、あの槍のシド!!戦闘終えた後にふーって煙草を空にってやつがやばいまじで好きかっこいい」

「ドラクエ5って結婚が出来るよね、もし相手があの女性たちではなくてもOKという感じになっていたら」

「やっぱりパパスの元々の城にいた大臣だよ」

「主人公を五馬自身としてでも?」

「ああそうなると別になるな、一夫多妻制が可能であればゲマの部下2人がいい」

元就君が恐怖となってくる。

「それでその、さっきの最新刊の31巻でというのが、その表紙の方」

「うん、オセオラ。でも序盤は主人公双子の養父っていう藤本神父だな、まじでかっこいいぞ、渋いっていうかもうやばかった、かっこよすぎる」

「それでその、聖戦の系譜となると、」

「ランゴバルトとバイロンと子供世代のアルヴィス」

「あと、ええと、三国志だっけ」

「あー迷う迷う、でも今思えばやっぱ周瑜、ああでも張飛と関羽っていうコンビがなあ、劉備が渋すぎる、諸葛孔明登用ってところで何度も泣いたよ」

 

「つまり、五馬はおじさんが好きなんだ、そして敵も好き」

「ん?おじさんと敵?」

「だからやっぱり五馬は郷戸道明先生が好きで結婚を前提にという感じだね」

「…どっからの発想」

「郷戸先生を宿敵だと言っていたし、郷戸先生はおじさんだもの」

「あのさ」

 

無動君が現実にと戻ります。

 

「アニメとか漫画とかゲームとかはちょっと非現実的、としてくれるか、実際に皆さんは実体として目の前に存在しない方々だから。

で、俺が今こうして実際に生きて居る世界を現実、と分けてくれるか、まずそっから」

「うん」

「俺は非現実的世界では確かに顔とかその生き様とかで感動させてくれる方々が好きで愛している、

だが、

俺は現実としているこの世界ではその好き、好意というものを感じる相手という人間はいません、

どうよ」

「ええとその、あの人は」

「あ、不動?不動はなんつうか、そういう感じで見てないっていうか、そもそもいとこだしさ、性別は別だけど、好きとか嫌いとかっていう枠じゃないんだよ、そういうのをとっくに通り越してるって感じだし、

そんでさ、俺は親がアレルゲンな家族蕁麻疹持ちだぞ、どうすんの」

「じゃあ五馬は誰かが好きだとかないの」

「現実世界では、あー、何か、ああああってなる人ばっかだからな、多分俺って理想が高いんじゃないの、それとは真逆で低すぎるとか、

真剣に誰かが好きだとか思えた事はないな、

本当はこういうオタクの話が出来る誰かと仲良くなりたいとか、わいわいとしたいとか思っていたりしても、

どっかでストップがかかるんだよ、

学校へ行っても、別に楽しいこととかないし、

何の為に生きてんのかなとか思ったりするし、

今江がたまーにすげえこと言ってるとか思っても、実際は別に他人だしって頭があるし、仁科も俺じゃないからたまに対応が面倒だなとか、

人間って完璧じゃないだろ、

どっかに絶対欠点とか欠陥があるし、

でも別に俺がこうやって考えていることに誰かがああそうだなとか同調して欲しいとかっていう願望とかもないし、

だからこうやってオタクなんじゃないのかな、

かっこいいなとかこの人みたいに生きてみたいなとか、

ちょっと脚色が派手過ぎるって世界もあるけど、

ただ俺はずっと孤独で寂しかったから、そういうのでそれを紛らわせてるだけだったんじゃないのかなとかたまに思うけど、

でもそれが俺だって、そんな感じ」

元就君はぼけっとしています。

「あ、あのさ、今度、俺もその全国模試ってやつ、受けてもいいかな」

「ん?いいんじゃねえの?杵柄には退屈だと思うけど、あーでも一応さ、こういう大学とかがって書かないといけないんだよ、進路決まってないってなるとな」

「五馬と同じにしてみるよ、そうすれば受けられるんでしょ」

「まあそうだけど、金とかかかるぞ」

「ええといくら?」

「あー次となると、今からエントリーしてからだから、あああれだ、7000円だな」

「分かった、それ、俺も連れてって」

「ああ場所分からないもんな、じゃあエントリー、受けたいですよって申請は俺より郷戸先生がよく知ってるから聞いてみ」

「五馬は常連なんだから五馬が教えて」

「え、あー、じゃあまず、その申請の用紙を取り寄せる、ああ急ぎとなると直接問い合わせだな、それと同時に試験代金の振り込み、それが受付完了となればはがきで受験番号とか来るから、それを持って会場へ行って受ける。

ただ今の時期だと日没までかかるから、昼の弁当持参と、筆記用具な、あとその受験番号のはがきを忘れたらまずいので確実に持っていって、会場では指定された席にと座って、1教科が2時間って感じ、勿論、私語厳禁だし、途中でトイレなんて行けないから先に済ませておくだろ、余程の事があればトイレにと行けるけど監視の人と一緒だから気まずいらしいわ、しゃあないよな、不正行為を防ぐって意味合いがあるし、

全教科の試験が終わればもう受けた全員がゾンビのようだぞ、

それでもいいなら手伝うよ」

「うん、お願い」

「何か」

無動君が苦笑する。

「そうか、うちのクラスで受けてるのいつも俺だけだったから、…それで試験の結果てのは学校にと届けてもらうか、自宅にと送ってもらうかとか選択出来たりするから、で、早速だけど問い合わせっての、俺がやるか?」

「どういうことを聞かれたりするの」

「あー、所属している学校名と氏名、あと住所とか連絡先、それくらいだな。それでオッケーですとなれば代金を振り込みなんだ、それは銀行とか郵便局とか、あとは会場で直接支払うという人もいたか、

でその近々の日程ってのが来週の日曜日、

今からの申請で直近となるのはそこ」

「五馬はその前に受けるの?」

「ああ、今週の土日がどっちも潰れる、そんで来週の日曜日がそこ、その次は来月の頭だな、来月は楽、最初の週と最終週しかないし、

でも3年になると間隔がもっと狭まってくるからほぼ毎週とかな、

たまに俺も疲れるから今回はいいやとすっ飛ばす時があるけど、

しゃーないよ、目指してるのが医学部だし、正確なデータとかがないと判断材料にもならないだろ、

俺は7個受けてるんだけど、其々で判断材料が変わって来るから、7個全部に対しての対応が別だから厄介なんだよな、

まあそういう感じ」

「それを1年の春からずっと?」

「1年の時はもちっと間隔が広かったんだよ、春、夏、秋、冬くらいな、

でも2年になったら急激に増えたな、

それくらいみんな必死なんだなあと思うわ」

元就君はぐぐ、と強く手を握っていました。

 

「五馬」

「ん?」

「おじさんを好きだというそれ、俺が変えるよ」

「…は?どういう流れ?」